パーティーに「ひと塩」料理 簡単で豪華なレシピ紹介
魅惑のソルトワールド(8)
時間が経つのは本当に早いもので、今年もあと残り2カ月ちょっと。だんだんとイベントが多くなるシーズンでもありますね。近年盛り上がりを見せるハロウィンや、すっかり定着したボジョレーヌーヴォー解禁などの機会に「友人の家に集まってパーティーをするよ!」という方も多いのではないでしょうか?
今回は、そんな時に「おお~!すごい!」と一目置かれてしまうような、簡単だけど豪華で、もちろんおいしくて、しかもちょっと料理が上手に見えてしまう、そんな便利な塩遣いをお伝えしたいと思います。
そえるだけ、かけるだけ とにかく簡単
塩にこだわって料理をすると良いのが、素材をシンプルに味わうために、料理もシンプルになること。素材を切ったり、蒸したり、焼いたり、ゆでたりして、そこにいくつかの塩を添えて、お好みのオイルをかけるだけ。とても簡単でスピーディーなので、準備の手間も省けますし、パーティー中にホストが料理のために中座する時間も限りなく少なくなります。
さらに、彩りや形の異なる複数の塩を添えることで、見た目がものすごく華やかになり「このピンク色のも塩なの?」「この塩おいしい!」など、会話が盛り上がるきっかけにもなります。
たとえばとんかつ。これも、一口大に切り分けてピックに刺し、色のついた塩や形の変わった塩をトッピングするだけで、ちょっとしたパーティーメニューに変身します。
サラダも、大きなボウルに入れてドン!と置いておいて、その横に塩とオイル、お好みでビネガーなどを数種類添えておくだけで、グッとおしゃれに見えますし、それぞれが好みの味付けで食べることができます。
こんな風に、いつもと同じメニューでも、「ひと塩」の技が簡単にお洒落に変身させてくれます。
おもてなしに適した塩
塩好きな方なら、ご自宅に何種類か塩が常備されているかもしれません。
白い塩でももちろん一つひとつ味わいは違いますし、どの塩を使うかによって料理の味は変わってくるのですが、普段から塩で食べる習慣のない人には、その場ではいきなり大きな違いは分かりにくいもの。そのため、いろいろな趣味の人がたくさん集まるパーティーでは「わかりやすいもの」「華やかさがあるもの」「面白いもの」を重視して塩を選ぶと、会話が盛り上がるきっかけになりやすくなります。
そんな「おもてなし」に向いている塩と簡単レシピを、いくつかご紹介しましょう。
昨年から今年にかけてスマッシュヒットしたトリュフ入りの塩。イタリア産のトリュフを乾燥・粉砕したものを、フランスのゲランド地方産の海水塩にブレンドしたものです。芳醇な香りが鼻をくすぐり、食欲を掻き立ててくれます。
昨今は様々なトリュフ塩が輸入されていますが、乾燥トリュフはそんなに香りが強くないため、どれも基本的には香料を使用しています。メーカーによって香料の強さが全く異なりますので、試食ができる専門店などで好みのものを探すのもおすすめ。
【3行レシピ:ハッセルバックポテト 黒トリュフバターで】
(1)ジャガイモの横に割りばしを置き、切り分けないように注意しながら厚さ2mm程度に切りこみを入れる
(2)切りこみの間にバターを挟み、オーブンで220℃で約50分焼く
(3)最後に黒トリュフ塩をふりかける
【3行レシピ:大人の卵サラダ 白トリュフ塩で】
(1)ゆで卵を作り、殻をむいて半分に割り、黄身を繰り出す
(2)黄身とマスカルポーネチーズ、白トリュフ塩を混ぜる
(3)白身の中に(2)を戻す
セル・デ・ヴァン・メルローは、大航海時代に、船に積んでいた樽からワインがこぼれて、横に置いてあった塩にかかってしまったのを、もったいないから食べたらおいしかったという逸話を、現代風に再現。フランスの4大製塩地の1つであるレ島の塩田から生まれた完全天日の海水塩を、メルローワインに漬けこんだのち、ピンク・ブラック・ホワイトの3種類のペッパーや複数のハーブなどをブレンドしたシーズニングソルトです。
ほんのりとしょうゆのような風味もあり、和食にも合いやすいのが特徴。少し粒が大きめでジャリっとした食感もあるので、牛肉のたたきなど噛む回数が多い料理におすすめ。「和食なんだけど、赤ワインに合わせたいんだよな~」という時にも重宝します。メルローのほかに、シラーやソーヴィニヨンに漬けたタイプもあります。
【3行レシピ:ローストビーフ セセル・デ・ヴァン・メルローを添えて】
(1)常温に戻した牛肉ブロックにセル・デ・ヴァン・メルローを刷り込み、馴染むまで置いておく。
(2)耐熱皿に(1)を置いてふわりとラップをかけ、500wで約5分加熱し、そのまま10分放置する。
(3)フライパンで(2)に軽く焼き目をつけ、冷めてから切り分けたらできあがり。
ピラミディオンは、インドネシアのバリ島のテジャクラで生産される完全天日塩。最大の特徴は「これって型に入れて作ったの??」と必ず質問が出るほど美しく整ったピラミッド型の結晶です。海岸沿いにある伝統的な揚浜式塩田に海水を撒き、太陽と風の力で塩を結晶化させたあと、砂ごとかき集めます。そこに海水をかけ流して、濃い塩水を得た後、やしの木をくりぬいた船型の箱の中にいれて、太陽と風の力で濃縮していきます。
時々様子を見て湧き水を加えて調整しながら、塩の結晶を作り出していきます。この土地の風土が、自然とピラミッド型の結晶を生み出しているのです。海水は海の恵み、湧き水は山の恵みですので、バリの海と山の恵みを両方兼ね備えた塩とも言えるかもしれません。
【3行レシピ:ソルティバターブレッド】
(1)バケットやフランスパンなど、お好きなパンを食べやすい大きさにスライスする
(2)(1)に無塩バターをのせ少し温めてパンと馴染ませる
(3)ピラミッドソルトを好きな大きさに砕きながらトッピングする
食べた人を必ず驚かせるのがこちらの「マグマ塩」。チベット自治区の奥地にある鉱山から採掘される岩塩で、数億年前に土の中で結晶化したのち、活火山のマグマの高温で焼かれたために、塩の結晶中に硫黄が強く発生。そのために、磨く前のアメジストのような、非常に濃い紫色をしています。
結晶を口に入れると、ぶわっと広がる甘い香りと硫黄の甘味に、誰もが驚きの表情を浮かべ、あたりに硫黄の香りを漂わせながら「卵だ! 温泉卵だ!」と口をそろえてその味わいを表現します。癖になってしまって、ついつい持ち歩いてぺろぺろ舐めてしまう人も多い塩です。
【3行レシピ:海老のカクテル 甘い香りのソースで】
(1)海老は下処理をして酒蒸しにする。ゆで卵はみじん切りにする。
(2)マヨネーズに、(1)のゆで卵と、ミルで細かく砕いたマグマ塩を少量まぜる。
(3)(1)を(2)にディップして食べる。
【3行レシピ:ミモザサラダ】
(1)アスパラガスは袴を削ってゆで、食べやすい大きさに切り分ける。ゆで卵を作る。
(2)ゆで卵を刻んで、少量のマヨネーズとマグマ塩と合わせて混ぜる。
(3)(1)の上に(2)をトッピングしたらできあがり。
フィオッキ・ディ・サーレ アフミカートは、美の女神アフロディーテ誕生の地とも言われている地中海に浮かぶキプロス島で生産される完全天日塩です。上記に紹介した「ピラミディオン」より直径の大きなピラミッド状の結晶で、指で簡単に砕けるほどの薄さです。塩の結晶を燻製にしているため、食欲をそそる香ばしい風味があり、食材にかけて食べるだけで、口の中で即席の燻製ができあがります。シャクシャクとした食感がアクセントにもなります。
【3行レシピ:鶏肉のグリル 燻製風味で】
(1)鶏もも肉にフォークで穴をあけて、酒とフィオッキ・ディ・サーレ アフミカートを揉み込む
(2)(1)を30分置き、オリーブ油を塗ったグリル皿に置いて250℃で20分~30分焼く
(3)食べやすい大きさに切り分けて、フィオッキ・ディ・サーレ アフミカートを添えて提供する
【3行レシピ:トマトと豚肉の串焼き】
(1)プチトマトに豚肉を巻き付け、端を楊枝でとめる
(2)フライパンにオリーブ油を熱し、(1)を豚肉に火が通るまで焼く
(3)(2)にフィオッキ・ディ・サーレ アフミカートをのせて提供する
これからのパーティーシーズン、ぜひこだわりの「ひと塩」で、簡単に豪華においしく楽しんでくださいね。
(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)
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