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ニシンにサバ、肉団子…日本人好み スウェーデン料理

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NIKKEI STYLE

「スウェーデンには、『空飛ぶヤコブ』という名前の料理があるんですよ」。あるイベントで、スウェーデン大使館広報部のヨハンソン弘美さんがそんな不思議な料理の名前を教えてくれた。

なんでも、航空会社勤務の男性ヤコブソンさんが、1970年代に雑誌にレシピを投稿。以来スウェーデンでとてもポピュラーになった料理らしい。共働き家庭で、自分が作れる簡単オーブン料理として考えたものらしく、女性の社会進出が進んだスウェーデンならではのエピソードだ。

この料理。材料は鶏肉、生クリーム、ピーナッツ、そしてなんとチリソースにバナナと、かなり大胆な組み合わせ。驚く私に「スウェーデン料理には、伝統料理を大切にする一方で、新しいものを生み出そうとする側面があるんですよ」と、話してくれたのは東京・六本木にあるスウェーデン料理を中心とする北欧料理のレストラン「リラ・ダーラナ」の遠藤芳男オーナーシェフだ。

近年、スウェーデンには革新的な料理を提供するミシュラン星付き店が次々登場し話題になっているが、「フランスなど海外で積極的に料理や技術を勉強し、新しいトレンドを生み出そうという流れがすごくあるんです」と遠藤シェフ。「空飛ぶヤコブ」が生まれたのは第2次世界大戦後。当時は、それまでの伝統的な料理ではない新しい時代の味を求めて、変わった食材の組み合わせが流行ったらしい。今のモダンなスウェーデン料理の精神は、そんな時代に芽生えたのかもしれない。

さて、「空飛ぶヤコブ」と同じように人の名前が付いたスウェーデンの人気料理には「ヤンソンさんの誘惑」がある。こちらは、「ジャガイモ料理の王様」とも言われる伝統料理だ。細切りにしたジャガイモ、生クリーム、タマネギ、アンチョビを合わせたオーブン料理で、クリスマスシーズンに特によく食べる。

上部はカリッと焼き、中はとろっとした食感を残すのがおいしく仕上げるポイントだそうで、「リラ・ダーラナ」では、太めの短柵に切ったジャガイモを使っているため、カリッとした食感が際立つ。

「名前の由来には諸説ありますが、最も有名なのは 20世紀の初めのころ、男性オペラ歌手がこれを作って女性を誘惑したというもの。もう一説は、食の快楽を断っていた19世紀の宗教家が、この料理の誘惑からは逃れられなかったというものです」と遠藤シェフ。「ヤンソンさんの誘惑」には、なぜか材料にはないチーズを使っているかのようなコクがあり、とろけるように軟らかくなったタマネギが味を引き立てる。食べ出すと後を引き、確かにいくらでもおなかに入ってしまう。

「スウェーデン料理というのは、どこか日本人に親しみのある料理なんです。日本人がよく食べるニシン、イワシ、サバといった青魚を使いますし、スウェーデンでポピュラーな、ジャガイモとかサケとかタラといった食材も北海道のそれと被る。冬が長い土地で、シーズンが限られたものをどれだけ長く楽しむかを考え、保存食も発達しています。日本でも、発酵食とか保存の文化がある。通じるところがあると思うんですよね」(遠藤シェフ)

そう言えば、ヨハンソンさんもスウェーデン人の義母が作ったジャガイモ料理が、「調味料はしょうゆなどではありませんが、食べてみたら、まるで肉じゃがだったんです」と目をまるくして教えてくれた。肉じゃがと同じようにジャガイモ、薄切り肉(スウェーデンでは牛肉)、タマネギを使った家庭料理だという。

一方、青魚を使ったスウェーデンの定番料理は、なんといっても塩漬けニシンのマリネだ。実は、以前食べたときは特に個性的な料理だとは思っていなかったのだが、「スウェーデンでは、100種ぐらいバリエーションがあるんですよ」と遠藤シェフに聞き、思わず目を見張った。

「リラ・ダーラナ」では3種のマリネの盛り合わせを出していて、その時々で調理法を変えている。訪れたときは、ディルを用いたスタンダードなあっさりマリネのほかに、マスタードやチリソースと合えたものを出していた。スタンダードなマリネはニシンの味が引き立つが、マスタード、チリソースにはそれぞれ別の楽しさがある。北欧各国でよく飲まれる穀類やジャガイモを原料とした蒸留酒、アクアビットが合いそうな前菜だ。

「常連のお客様は、まずビールとニシンのマリネを最初に持ってきてくださいとオーダーするんです。それから、冷凍庫で冷やしたアクアビットを席に運ぶように頼まれる。こうすると、キンキンに冷えたアクアビットで乾杯し、ぐいっとやりながらすぐ、ニシンをつまめるというわけです」と遠藤シェフは説明する。

「最初の一杯はピールではないの?」と不思議に思っていたら、「ビールはチェイサーです」と一言。さすが、通の作法は奥が深い。

さて、ニシンのマリネと同じぐらい大定番のスウェーデン料理はミートボールだ。「リラ・ダーラナ」でも看板メニューの一つで、ブラウンソースや酸味の強いリンゴンベリー(コケモモ)のジャムを添えて出す。

「現地のスーパーでは小さなところでも出来合いのものが何種類も売っていて、メインディッシュになるだけじゃなくて、パテみたいにパンにはさんで食べたりもするんです。スウェーデン料理にはひき肉をよく使うんですよね」。そう言いながら、遠藤シェフが教えてくれたのは、店で折に触れ出すもう一つのひき肉料理「ビフ・ア・ラ・リンドストロム(リンドストロム風牛肉の意味)」だった。

「ロシアにルーツがある料理らしいんですが、今はロシアにこの料理はなくスウェーデンの定番料理なんです。ビーツやケッパーを混ぜ込んだ赤いハンバーグなんですよ」(遠藤シェフ)。

出てきたハンバーグにナイフを入れると、肉の間からほんのり赤いビーツがのぞいた。「リラ・ダーラナ」では豚と牛の合挽きを使用、肉の食感がしっかりとしたハンバーグなのだが、酢漬けのビーツやケッパーを使っているので味わいはさっぱり。ボリューム感のある肉の塊が、軽くお腹に収まってしまう。

一見、オーソドックスに見える料理でも、スウェーデン流はどこか違いますねと話すと、「実は、『ヤンソンさんの誘惑』に使うアンチョビも、現地で用いるものは日本で手に入るオイル漬けとは異なるんです。オイル漬けではなく水煮で、シナモンや塩、砂糖、そして白檀(びゃくだん)が入っているんですよ」とシェフ。

白檀といえば、原産地はインドやインドネシア。ヨーロッパの北の果てでそんな素材がごく日常的に使われるなんてと、再び驚いた。

スウェーデンには、復活祭(イースター)の前に食べる「セムラ」と呼ばれるお菓子がある。丸いパンに生クリームがたっぷり入った素朴なお菓子なのだが、実は生地にはインド原産のスパイス、カルダモンが入っている。爽やかな香りを持つカルダモンは、セムラ以外にも、スウェーデンのパンにはよく使われると現地に住む人に聞いたことがあった。

「南方のスパイスなのにスウェーデンでよく使うスパイスと言えば、サフランもあります。クリスマスの前にルシア祭という聖人のお祭りがあるのですが、そこで欠かせないのがサフラン入りのパンなんですよ」(遠藤シェフ)

「トルコなどからの移民が多いスウェーデンには、『ケバブピッツァ』という料理があるんです」とシェフは続ける。

トルコ料理などとして知られたスパイシーなロースト肉であるケバブを使うものだが、「トルコにはない生粋のスウェーデン料理なんです。ピザソースを塗った生地の上に、ケバブ、レタスなどを載せて、ヨーグルトなどを使ったソースをかけるんですよ」。スーパーで出来合いが売られるほどポピュラーで「現地では一番人気ピザです」とシェフ。

調べると、8~11世紀ごろ、故国から遠く離れた土地を侵攻したスウェーデンのバイキングは、ロシア経由でコンスタンチノープル(現・トルコのイスタンブール)まで遠征、そこから異国のスパイスを手に入れたらしい。遠い北国で愛されるケバブピッツアには、そんな時代の旺盛な冒険精神の残り香があるように思えた。

(フリーライター メレンダ千春)

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