トヨタの社長ではなく、カーガイ(自動車野郎)、レーサーとして扱われることが、うれしくてたまらないという表情だ。このGRの記者会見には当初、章男社長は出席予定者リストに入っていなかった。世界のトヨタ社長はとにかく多忙だが、あえてサプライズ登場した。このスポーツブランドのGRにもモリゾウとしての特別な思いがあるからだ。

「モリゾウ」としてニュルブルクリンク24時間レースにも参戦

GRというのは、「ガズー レーシング」という意味。ガズーというのは、1998年、章男社長がまだ課長クラスの時に立ち上げた『中古車画像システム』から来ている。またインターネットが一般に普及していない時代で、この画像が販促にどう役に立つのかと社内から猛反発を食らった。トヨタを変革させたいという思いで新規事業を起こした。だが、トヨタという冠を付けさせてもらえず、画像をもじってガズーとしたわけだ。ただ、当時からマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏らとも親交があった章男社長は次はネットの時代との確信があった。

以来、章男氏はトヨタの変革や挑戦につながる事業にはガズーの冠を付ける。現在はトヨタの情報サイトとして、そして今回のスポーツカーシリーズのブランドとして使われている。

ガズーやモリゾウを「社長の道楽」と皮肉る声もあった。しかし、トヨタは創業家出身だからといってチヤホヤする会社ではない。むしろ創業家出身者にはプレッシャーの方が強い。日本一の巨大企業トヨタ。その安定感は抜群だが、「常に変革を求め、挑戦し続けないと大変なことになる」という思いが章男社長には強い。

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