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長寿の味方「トンチン年金」 人生100年時代に相次ぐ 受給は終身だが多数の加入者は元本割れに

2017/10/29

 平均寿命を超えて長生きしてもお金に困ることがないよう商品設計された「トンチン年金保険」と呼ばれる商品が生命保険会社から相次ぎ売り出されている。死亡したり、解約したりした人への払戻金を少額に抑え、その分を長生きした人の年金に回す仕組みだ。公的年金の上乗せとして加入を検討する人が増えているという。

 「いまの現役世代は、一生涯のキャッシュフロー(資金収支)表をつくってみると80歳代までに蓄えが尽きる人がとても多い」。ファイナンシャルプランナー、竹下さくら氏はこう指摘する。社会保険料や教育費の負担が重くなり、老後のための資産形成が思うようにできていないためだ。

 しかも老後の人生はこれからさらに長くなる。日本人の平均寿命は2050年に男性は84歳、女性が90歳まで伸びる(図A)。「人生100年時代」が現実味を帯び、生きているうちに蓄えが尽きてしまう「長生きリスク」への不安が高まっているわけだ。

■男は損益分岐90歳

 そうしたリスクに備える商品として生保各社が売り始めたのが、トンチン年金保険だ。原型を考えたとされる17世紀のイタリアの銀行家ロレンツォ・トンティ氏の名にちなんだ商品だ。

 加入者が早くに亡くなった場合、受け取る年金や払戻金は、払った保険料を大きく下回る。その分だけ長生きした他の加入者への年金原資が厚くなる。終身年金タイプなら100歳、120歳と長生きしてもずっと年金を受け取れる(図B)。竹下氏は「老後のキャッシュフローを改善するための商品として十分に検討に値する」と評価する。

 昨春、業界初のトンチン年金として日本生命保険が売り出した「グランエイジ」を例に、50歳のときに契約するケースでみてみよう。男性は月5万790円、女性は月6万2526円の保険料を20年間払い込んだ場合、70歳から生涯、年60万円の年金を受け取ることができる。

 年金の受取総額が払った保険料を上回るのは、インフレなどを考慮しない単純計算で男性が90歳、女性が95歳まで長生きしたとき。いま50歳で、この年齢まで生きるのは男女ともおおむね4人に1人だ。50歳男性のうち100歳まで生きるのは1.6%。それまでに受け取る年金は保険料の1.5倍に相当する。

 結果的に、長生きした少数の加入者が恩恵を受ける一方、多数の加入者は元本割れとなる商品だ。契約できる年齢は各社とも50歳以上。自力で資産を増やす時間的な余裕のある若い世代は対象外としている。

 リタイアが近づいている世代が「損得勘定ではなく、長生きリスクを保障する『掛け捨て』の感覚で入る商品」(竹下氏)といえる。生保各社からは「貯蓄を子どもに残す必要がなく、生きているうちの保障を厚くしたいと考える単身者のニーズも大きいのではないか」(太陽生命保険)との声も聞かれる。

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