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立川談笑、らくご「虎の穴」

新作落語の起点、「ワードハント」 コトバが光る瞬間 立川吉笑

2017/10/22

PIXTA

 毎週日曜更新、談笑一門でのまくら投げ。師匠から頂いた今週のお題は「光るもの全般」ということで、今週も次の師匠まで無事にまくらを届けたい。

 僕、立川吉笑は普段、新作落語を中心に手がけている。

 落語には古典落語と新作落語がある。古典落語はその名のとおり昔から大勢の落語家が語り継いできた伝統的な演目で、新作落語は新しく自分で作った演目である。

 優れた古典落語がたくさん残っているにもかかわらず、わざわざ新作落語を作ることには勇気がいる。わざわざ好き勝手に新作落語を作っておいて笑いをとることができなかった場合は、その責任が全て自分に返ってくるからだ。

 そんな中、手前味噌だが僕は、アイデアが光る「独特な切り口」の落語を持ち味としている。キャラクターや会話の技術などでお客様を楽しませるというよりは、これまで落語では語られてこなかったような物事を落語にすることで他の落語家と差別化を図っている。

 例えば『ぞおん』という落語。トップアスリートは大事な場面で集中力が極限に達したとき、ゾーン状態に入ることがあるという。ゾーンに入れば普段以上の能力を発揮することができるらしい。いわく、ボールが止まって見えたり、鳥になった感じで空からコートを見下ろすように仲間の位置が瞬時に把握できたり。

 『ぞおん』は大店の番頭さんがゾーンに入るという話。ゾーンに入って普段以上のパフォーマンスを発揮する番頭さんを、奉公人たちが必死でゾーンから「出す」物語。

 『くじ悲喜(くじびき)』という落語は、くじ引きのくじを擬人化した落語。くじを引く男や受付スタッフがいる外世界のレイヤーと、残り3枚のくじたちがいる箱の中世界のレイヤーとに分かれていて、箱の中では残り3枚のくじたちが自分らは一体なんの商品なのかを話し合う物語。

 これらの落語は現時点での僕の代表作で、ここぞという場面で演るようにしている。

立川吉笑さん(東京都武蔵野市)

 僕は今、落語家としてまだまだ若手の7年目である。とはいえ、この7年間で作ってきた上記のような落語が、今の僕に大きくのしかかってくる。最新作が最高傑作であることは作り手にとって理想的な状態であるけど、これまでの蓄積が増えるにつれてそこの壁がどんどん高くなってしまう。

 ということで今回は、アイデアが光る落語を作りたいと日々頭を悩ましている僕が、今まさに作ろうとしている落語について書こうと思う。

■その1『猿ワン』

 インタビューなどで記者の方から

 「ネタっていつ思いつくんですか?」

 と聞かれることがあるけど、それは僕が教えてもらいたいくらいだ。

 これまで何十本も新作落語を作ってきたけど、ひらめきの瞬間はいつだって突然だ。

 「ワードハント」と呼んでいる、ネタに広がりそうな言葉集めは日課のように取り組んでいて、日々のワードハントでストックした言葉からネタが生まれることは少なくないけど、一つの言葉がネタに昇華する瞬間に働く力がどういうものかは、いまだにわかっていない。

 ワードハントで見つけた「ゾーンに入る」という言葉から、突然「ゾーンから出す」というアイデアを思いつく。その瞬間はまさに頭の上で電球がキランと光るような感覚がする。

 『くじ悲喜』の場合は、「くじ引き」という言葉を目にして、「引き」を「悲喜」に置き換えられるな、と思ったことが着想の第一歩だ。「くじの世界の悲喜こもごもってどんなのだろう?」と想像するうちに一つのネタになった。これも、なぜそう思ったのかは説明できない。

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