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産まないと決めた「40代」のイイ女に何が起きているか

河崎環(コラムニスト)

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日経ウーマンオンライン

夫もかわいい子どももいて、キャリアも順調。はたから見れば、人もうらやむ恵まれた人生を送っているアラフォーのバリキャリ女性が、40歳になった安室奈美恵さんの引退報道を聞いて、こんなことを言うのです。

「私はアムラーではありませんでしたが、安室ちゃんの歌を聞きながら青春時代を過ごした30代後半です。眉毛もあの時期に抜きすぎて、今、増毛に必死です。安室ちゃんは走り続けて40歳で見事なゴールを決めて『引退』。人生100年といわれる今、私はこれからも、ゴールがどこか分からないままなんとなく走り続けるのだろうかと空を見上げてしまいました」

増毛はともかくとして、走り続ける先にゴールが見えないのは、確かに空を見上げたくもなるよね……。

今年9月20日に40歳の誕生日を迎えた安室奈美恵さんが、来年9月16日に引退することを発表。「なんで?」とその理由を探ろうとする向きもありましたが、不思議なことに安室さんと同世代の女性たちは皆、自分たちの青春を回顧し、アムロちゃんの決断に刺激されて、自分のあり方や生き方を問う反応を示していたように思います。「あの安室ちゃんが40で引退かぁ……私の引退タイミングって、どこにあるんだろう?」

安室さんの歌やファッションと一緒に10代・20代を送ったアラフォー女性たちが、軒並み、安室さんに自分を重ねていたのです。女性の生き方や、それに伴う趣味・嗜好が細分化したこの現代、もしかすると安室さんは最後の「みんなのヒーロー」であり、「基準」だったと言えるのではないでしょうか。だから安室さんの引退は、安室世代であることを意識している女性もそうでない女性もまるごと、ちょっとセンチメンタルな気分にしたのです。

女にとって40が特別な数字である理由

「なぜ女は嫉妬し合うのでしょうか」と、アラフィフの女性有識者に尋ねたことがあります。

「それは、どの女性も必ず40歳くらいまでに産む産まないを一度は自分で選択せざるを得ず、もう一方の道を捨てたり、道から降りたりするからです」との答えに、私はいたく感じ入りました。

「40」とは、出産の生物学的なタイムリミットを示す、象徴的な数字。どの女性も40歳頃までにどちらかを選ぶ(選ばねばならない)からこそ、他方を「捨てる」「降りる」意識がある。だから自分とは違うほうを選んだ人が何かを主張すると、「自分だってあっち側に行けたのに」と、ざらっとした気分になるのだと。

ざらっとするのは、自分の選択は間違っていないと、自分にまだ言い聞かせている部分があるから。その選択に迷いがなければ、あるいは消化できていれば、もう他人がどう生きているかにことさら左右されない、ストレスフリーな達観の境地が待っているのかもしれません。

大人の女性が「40代になって、楽になった」と言うのを、聞いたことはありませんか。それはおそらく「女として、もう悩まなくていいから楽になった」ということなのです。女性にとって、40は本当に文字通りの「不惑」の年たりうるのですよ! まさにその年に引退することを以前から決めていたと言われる安室さんの姿勢には、確かに惑わない、凛としたカッコよさを感じさせられて、アムラーじゃなかった私でもやっぱりため息が出てしまうのです。

産まないと決めた女、おっぱいにさよならした女

「40」という年齢を境に、誰しも一度は「捨てた」「降りた」を経験している40代の女たち。だからこそ、「もうあっち側には行かない」その身で、また新しい局面を選んで進むのだと思います。

最近、ご縁があって読んだ最強に面白い新刊エッセイ本が、たまたま2冊とも1972年生まれで今年45歳の女性著者によるものであることに気づいたとき、私は「やっぱり40代の女は強いわぁ」と天を仰ぎました。

コラムニスト吉田潮さんによる「産まないことは『逃げ』ですか?」(KKベストセラーズ)と、「女のプロ」との称号を持つ川崎貴子さんの「我がおっぱいに未練なし」(大和書房)。それぞれ、不妊治療をやめた女性と、乳がんで片方の乳房を切った女性の生き様が、共に思い切りのいい笑いたっぷりの軽妙な語り口でつづられます。

「自分が主語の人生をいかに楽しむか」

吉田潮さんは34歳のときに「付き合っている男との物理的な証」として「子どもが欲しいという病」に陥り、それまで「夜の暴れん坊将軍」として自由に恋愛を楽しんでいた人生を一転、パートナーとの妊活への道を爆進。その後パートナーとの紆余曲折を経て「震災婚」に至り、本格的な不妊治療を開始しました。

でも、その道のりは決して平坦なものではなく、「着床」が生活のすべてへとすり替わって「妄想妊娠」を繰り返し、流産を経験し、家族連れを見るのもつらくなり……と疲弊していく中で、「自分はそこまでして子どもが欲しいのだろうか?」との疑問が頭をもたげ、42歳のときに不妊治療をやめる決断へ至ります。「産まないこと」を選んだのです。

――「私は子どもがいなくても自分が主語の人生をいかに楽しむか、だと思うようにした。もちろん、子どもができなかった悔しさや己の不全感のようなものはゼロではなく、心の奥底に汚泥のようにこびりついていたりもする」(「産まないことは『逃げ』ですか?」本文より)

「色々あったけど女に生まれてよかった」

女社長として、起業・結婚・出産・離婚・再婚・倒産危機・流産・元夫の死、そして二人目の出産に次々と繰り出される事業展開と、なんだか聞いているほうはフルコースを3周くらい食べているような気になる、川崎貴子さんの濃厚で重厚な人生。44歳で乳がん宣告を受け、「がん細胞であっても、私に住まうという腹落ち」で受け止め、「我がおっぱいに未練なし」とその場で全摘を決める潔さとユーモアには、何よりも彼女の「生きる」との明確な意志がみなぎっています。

家族や友人、仕事仲間たちと、手術・闘病にポジティブに徹して乗り越え、「本物の右おっぱいはなくなったけれど、今生きていることに比べたらそれはなんて些細なことであろうか」と人々に感謝し、日常をいとおしく生きる「ニュー川崎貴子」の人生は、やはりそうでなかったもう一本の道を「選ばなかった」からこそ、そこでサバイブして輝いているのです。

――「縁あって家族になれた、私の大切な人たちが笑っている。ただそれだけで、胸が震えるほど幸せだということ」「色々あったけど女に生まれてよかった」(「我がおっぱいに未練なし」本文より)

40代セカンドステージのお立ち台

どっちに進むのか、と迷うのは、まだ迷えるから。迷えるだけの選択肢がまだ手元にあるから。

いずれタイムアップとなったり、否応なしに降りかかってくるものがあったりで、迷いや葛藤を乗り越えた先には「自分で選んだ人生」が新たに始まります。40代セカンドステージのお立ち台によいしょと乗った、もう迷わない惑わない40女たち。

働き盛りの40代女たちは、いまそれぞれにもっと強く、もっとしたたかにしなやかに、「自分を主語」にして「未練なく生きる」のです。

[参考]
「産まないことは『逃げ』ですか?」(吉田潮著、KKベストセラーズ)
「我がおっぱいに未練なし」(川崎貴子著、大和書房)
河崎環
 コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川県育ち。家族の転勤により桜蔭学園中高から大阪府立高へ転校。慶應義塾大学総合政策学部卒。欧州2カ国(スイス、英国ロンドン)での生活を経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、テレビ・ラジオなどで執筆・出演多数。多岐にわたる分野での記事・コラム執筆を続けている。子どもは20歳の長女、11歳の長男の2人。著書に「女子の生き様は顔に出る」(プレジデント社)。

[nikkei WOMAN Online 2017年10月11日付記事を再構成]

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