2017/10/30

今回、中性子星の合体が観測されたことによって、長い間議論されてきた重元素の起源も解明されようとしている。重元素とは具体的には、金やプラチナなどの貴金属や、LIGOのレーザーの建造にも使われたネオジムなどを指す。

2つの中性子星はらせん軌道を描きながら接近し、やがて衝突すると、時空の構造にゆがみを生じさせる。(ILLUSTRATION BY NSF/LIGO/SONOMA STATE UNIVERSITY/A. SIMONNET)

これらの金属は、主に巨大な恒星が最後に爆発する際に、その内部で生成されるとかつては考えられていた。しかし近年の研究で、こうした超新星爆発では、現在宇宙に存在する重金属に匹敵するだけの量が放出されなかったことがわかってきた。

こうした重い元素を作るには、たくさんの中性子が必要だ。中性子とは原子核を構成する粒子のひとつで、その名前からも想像される通り、中性子星が破壊されたときに大量に放出される。

今回の爆発を赤外線で観測したところ、放出された破片には少なくとも地球1万個分の貴金属が含まれていることがわかった。これは現在宇宙に存在が確認されている量を満たすのに十分な値だ。

一方で、今回観測された出来事には、まだ謎に包まれている部分もある。たとえば2つの中性子星が衝突した後に残されたものが何なのかは、はっきりとはわかっていない。確かなのは、それが太陽の約2.6倍の重さの天体だということだけだ。

米アリゾナ大学のフェリヤル・オゼル氏によると、この質量と、できたての中性子星の特徴を踏まえると、これはほぼ間違いなくブラックホールだという。あるいは異常に大きな中性子星だという可能性もあるが、そうした存在は物理学的な常識からは考えにくい。

もしもあと1カ月遅かったら

また、爆発とその後の経過は、必ずしも予想通りには進まなかった。ガンマ線バーストは、以前に観測された同様の現象に比べるとかなり微弱なものだったと、米カリフォルニア工科大学のマンシ・カスリワル氏は言う。さらには爆発後、X線と電波が検出器に届くまでの時間も、予想されていたよりも長かった。

カナダ、マギル大学のダリル・ハガード氏はこれについて、爆発によって噴出した超高速ジェットの向きが地球に対してまっすぐではなく、わずかにズレていたせいではないかと推測している。

あるいは、もっと複雑なことが起こっている可能性もある。カスリワル氏は、まゆのように内部にエネルギーを貯め込んだ破片が爆発によって放出され、これが最初に生み出されたジェットの行く手をふさいだのではないかと推測している。研究者らは、まだしばらくの間は見えるはずの電波の観測を続けて、この問題の解決につなげたいと考えている。(参考記事:「ブラックホールに新説 恒星の『食べ残し』を投げ捨て」)

しかしさらなる観測には、時を待たなければならない。現在は発生源の銀河の位置が太陽に近すぎるため、一部の望遠鏡で観測が危険になるためだ。(参考記事:「史上初のブラックホール撮影 成否は数カ月後に判明」)

米カーネギー天文台のマリア・ドラウト氏は言う。「この爆発が起こったのは1億3000万年前ですが、もしこれがあと1カ月遅かったなら、まったく観測することができなかったでしょう。検出器はスイッチを切られ、銀河は太陽の向こうにあったはずですから」

(文 Nadia Drake、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年10月18日付]

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