2017/10/30
現在までに検出されたすべての重力波と、未確認だが重力波と思われる1例が記入された全天マップ。色とりどりの帯は各重力波によって生じた時空のゆがみを、数字は検出された年月日を表す。最新の「GW170817」は2017年8月17日に記録された。(ILLUSTRATION BY LIGO/VIRGO/NASA/LEO SINGER/AXEL MELLINGER)

2016年初頭、LIGOはついに重力波をとらえた。それ以降、LIGOは3度にわたってブラックホールの合体によって生じる重力波を確認し、研究チームを率いてきた科学者たちは2017年、ノーベル物理学賞を受賞した。(参考記事:「重力波検出に成功、30億年前のブラックホール衝突」)

しかし、8月17日早朝にもLIGOの検出器は、これまでとは違う何かを感じ取っていた。そこに記録されたデータには、この重力波がブラックホールではなく、死んだ星の合体によって生じたものであることを示す兆候が現れていた。

その2秒後、NASAのフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡が、LIGOの検出器が受け取ったシグナルが来たのとほぼ同じ領域からやってくるガンマ線の放出をとらえた。2秒弱継続したこのガンマ線の放出は、どうやらショート(短時間)・ガンマ線バーストであると思われた。ショート・ガンマ線バーストは、中性子星の衝突によって生じると考えられている。

これは偶然だろうか。LIGOとVIRGOの合同チームはそうは考えなかった。彼らは世界各地の天文台に向けて、今なら中性子星の衝突によって生じる破片をとらえ、重力波発生直後の様子を初めて観測できるかもしれないと呼びかけた。(参考記事:「【解説】謎の高速電波バーストの発生源を特定」)

世界中から協力を申し出る声が届いたが、まずはどこを観測すればいいのかを正確に知る必要があった。

発生源はどこだ!?

ここで見事な活躍を見せたのが、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の博士研究員チャーリー・キルパトリック氏だ。キルパトリック氏とその同僚らはすぐに行動を起こし、まずは重力波とガンマ線の発生源の近くにある数多くの銀河の中から、有力なものをピックアップした。

キルパトリック氏のチームが使用できるのはチリにあるささやかな望遠鏡で、彼らは空が暗くなったらすぐに、これらの銀河をひとつずつ観察し、星の衝突の兆候を探す計画を立てた。とはいえ、のんびりしてはいられない。目当ての空が見えるのはせいぜい1~2時間で、すぐに地平線の向こうへ沈んでしまうからだ。

新たな重力波が検出される4カ月前にハッブル宇宙望遠鏡がとらえた楕円形の銀河「NGC4993」(PHOTOGRAPH BY HUBBLE/STSCI)
チリのスウォープ望遠鏡の画像(右)には、2017年8月に現れた明るい点が見える(PHOTOGRAPH BY 1M2H TEAM/UC SANTA CRUZ & CARNEGIE OBSERVATORIES/RYAN FOLEY)

LIGOとVIRGOからの知らせが届いてからおよそ10時間後、キルパトリック氏が観測した5つ目の銀河に、以前には存在しなかった輝く点があるのが発見された。氏のチームは、この発見を世界の天文台に向けて発信した。42分以内には、新たに5つのグループが同じ銀河を望遠鏡にとらえていた。

数日の間にいくつもの天文台がチームに加わり、その後数週間にわたって、楕円形をした銀河「NGC4993」の外れにある重力波の発生源は、宇宙のなかで最も熱い注目を浴びるスポットとなった。

そこではかつて、2つの中性子星が長い間互いの周りをらせんを描きながら回っていた。何百万年という歳月の末、2つの星がついに衝突すると、そのあまりの激しさに時空がゆがみ、発生した重力波は光の速さで宇宙空間をさざ波のように広がって、やがて地球に到達した。

金や銀はなぜこんなに多いのか

すばやい対応のおかげで、科学者らはこの爆発を電波からガンマ線まで、あらゆる波長域で観測できた。

次のページ
もしもあと1カ月遅かったら
ナショジオメルマガ