妻が若いころの服を捨ててくれません
脚本家、中園ミホさん
妻が20年近く着ていない洋服を、タンスにしまい込んでいます。デザインは古いし、妻自身の体形も、昔に比べて変わっているはずなのに。いったいどうすれば、妻に捨ててもらえるでしょうか。(埼玉県・50代・男性)
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よくわかるなあ、この悩み。私も古い服、たくさん持っています。この奥さんも捨てなきゃとは思っているはず。でもその服にまつわる思い出とか、買ったときの値段とか、また着るかもしれないとか、そういう何かにとらわれているのでしょう。
捨てられなくて悩んでいる人が多いから、片付けや断捨離についての本も、たくさん出ているのでしょうね。そういう本を、奥さんにプレゼントしてみてはいかがでしょうか。読むと、本当に片付けようという気分が高まりますよ。
実は私も、この種の本を読んで刺激を受け、服を捨てようとしたことがあるんです。親戚で片づけが上手なおばちゃんが遠方にいまして、私一人ではなかなかできないので、飛行機のチケットを送って、わざわざうちに来てもらい、1週間かけて一緒に整理したんです。
でも、モノを捨てるのは心が猛烈に痛むんです。まさに身を切るような思いでした。あまりに未練が募り、ゴミ置き場まで持っていったのに結局取りにいってしまった服も。今も洋服ダンスに残っています。
確かに捨てると、タンスがスカスカになる気持ちよさはあります。でも同時にものすごく心の痛みも覚えるから、片付けることが喜びや幸せの域に達するまでになるには、かなりの心の修行が必要かも。
奥さんにトライしてもらって、やはりダメだったら。その場合は、ご主人が「服を捨ててくれないかな」と感じる気持ちそのものを断捨離してほしい。その思いにとらわれている限りはイライラするだけ。気持ちを解放したらいいのです。
今、断捨離などがブームになりすぎて、それができないとダメなだらしない人間と見なすような風潮がありますよね。でも、それってちょっとシンドイ気もします。そういう厳しい人の家に行くと、緊張して疲れちゃうのです、私は。
モノがなくても生きていけるという哲学を持ち、無駄なことはしないという考え方を否定しているわけではありません。でも人生って、無駄なモノでできているのではないかなあ、と私は思うんです。
無駄がないと、その分ゆるみがないから窮屈なんですよ。脚本家の立場から見れば、素敵な物語は、無駄な部分にこそ生まれるとも言えますしね。
[NIKKEIプラス1 2017年10月21日付]
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