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生保損保業界ウオッチ

「手話OK」も登場 自動車保険の事故初動対応

日経マネー

2017/11/14

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日経マネー

 まさかの自動車事故。その時、まず何をするか。警察や救急車を呼ぶ。そして次に、自動車保険を契約している損害保険会社への「電話連絡」だろう。

 どの損保会社も365日・24時間無休で事故受け付けをしているため、早朝や深夜、休日でも電話はつながる。レッカー車が必要なら、時間帯を問わず手配を受けられる。これらはおおむね、どの会社も提供する標準的なサービスだ。

 だが、「初動対応」については必ずしも365日・24時間というわけではない。初動対応とは、損保会社が事故連絡のタイミングで保険が使えるかの判断、解決アドバイス、病院や相手方への連絡などを行うことを指す。個々の契約内容を踏まえて24時間無休で初動対応する会社もあれば、早朝・深夜の対応を事故受け付けや一般的なアドバイスのみとする会社もある。

 よって、事故が起きた時にいち早くアドバイスやサポートが欲しい人には、初動対応がどのようにされるかが自動車保険を選ぶうえで重視すべきポイントとなる。

■手話通訳で損保会社に連絡

 しかしながら、事故連絡に始まるタイムリーなサービスを受けるためには、「電話をかける」ことが事実上の前提。聴覚や発話に障害があるなどして電話をかけるのが困難な人は、利用できないのが実情だ。ウェブサイトやファクス、メールなど電話以外の手段を用いて事故連絡ができる損保会社もある。だがリアルタイムの初動対応は難しく、そこにサービス格差が生まれてしまう。

 こうした現状に対し、スマートフォン向けの無料通信アプリ「LINE」のビデオ通話機能(いわゆるテレビ電話)を利用した対応を始める損保会社が出てきた。聴覚障害者と手話通訳オペレーターがスマホの画面越しに手話で会話し、これをオペレーターが音声に通訳、損保会社の担当者に伝える。この3者同時通話により、聴覚障害者もリアルタイムでの事故受け付けや初動対応を受けられる。手話の代わりに筆談でサービスを受けることも可能だ。

 これは「電話リレーサービス」と呼ばれるもので、世界20カ国以上で広く利用されている。日本でも厚生労働省や自治体、また全日本空輸(ANA)や楽天などの多くの企業で取り入れられている。

 今回、このサービスを導入(2017年9月から開始)したのは、損保大手の一角である損害保険ジャパン日本興亜だ。サービスの提供時間帯が限定的(上表参照)なのは現状の課題だが、将来的に365日・24時間化が実現すれば、自動車事故対応で聴覚・発話障害者と健常者とのサービス格差は解消される。

 このようなサービス導入の背景には、16年4月に施行された「障害者差別解消法」がある。障害を理由にした不当な差別的取り扱いを禁止し、障害の有無で機会の格差が生じないよう、役所や事業者が「合理的配慮の提供」をするように定めている。

 格差なく誰もが使えるサービスの提供は事業者にとって急務。保険業界においても、こうした取り組みの広がりに期待する。

清水香
 生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2017年12月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年12月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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