デニムだけじゃない 日本発、世界最高品質の生地
伝統と新技術が融合する強み
各国の一流ブランドが岡山のデニム生地をこぞって採用していることは有名だが、デニムに限らず「JAPAN生地」は間違いなく世界トップクラスのクオリティだ。その理由の1つは、驚くほど昔ながらの伝統的製法がいまだ継承されていること。アーカイブを綿密に研究し、それを再現する探求力、今までにない生地を生み出す企画力が共存している。今、改めて日本の生地の魅力を再確認してみよう。
100年以上守られるスローファブリック
MIYUKI KEORI【御幸毛織】/名古屋
1905年創業。生地から製品に至るまで、一気通貫のモノ作りを日本国内で行っているのが特徴。伝統と時代性を両立する優れたクオリティで国内外から評価されている。
手間ひまかけて丁寧に作る最高級の生地を生産
日本を代表する毛織物メーカーといえば、名古屋に拠点を構える御幸毛織。「ウールはゆっくり、ゆっくりつくれ」を哲学として掲げ続けるだけあり、その生地作りは昔ながらの手法を堅持し、かつ複雑なプロセスを何度も重ねる非常に手間ひまかけたものだ。そうして織り上がった生地はしっかりコシがあり、耐久性が高く、かつ滑らかでリッチな質感も湛える絶品の風合い。日本の気候も考慮されており、日本人に最適な一着に仕立て上がる。左のバンチはミユキ直営サロン「サローネ パルテンツァ」用に編集したもの。
スーツ20万円~〈オーダー価格〉/御幸毛織(御幸毛織 オーダー営業本部) その他〈スタイリスト私物〉
高い費用対効果による価値あるベーシック
GRAND MARQUIS VINTAGE【グランドマーキー ビンテージ】/大阪
1918年に羅紗問屋として創業した「メルボ紳士服工業」が展開する生地ブランド。尾州を中心とした老舗生地メーカーとの協業で作った生地をラインナップしている。
ビジネススーツに最適な色柄とクオリティ
グランドマーキー ビンテージの大きな魅力は、良質なベーシック生地の充実ぶり。無地、ストライプ、チェックともに王道をゆく柄行きを微妙なトーン違いで揃えており、ビジネススーツをオーダーしようと考える方に最適な編成なのだ。しっかりハリコシがありつつ現代基準に即した適度なウェイトで、耐久性にも優れたクオリティも頼もしい。かつ、コストパフォーマンスも高いという優秀ぶりだ。こんなバランス力もJAPANならでは。
スーツ5万9000円~〈オーダー価格〉、シャツ1万円、タイ8500円、チーフ1500円/以上麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム)
旧式力織機が再現するヴィンテージの品質
WAREHOUSE【ウエアハウス】/大阪
1995年創業。「ヴィンテージの忠実な復刻」をテーマとし、糸一本から仕上げの洗い方に至るまで研究を重ねている。ジーンズのほかTシャツやカジュアルシャツもラインナップ。
非効率の果てに生まれる古きよき味わい
ヴィンテージと見紛うほどのオーラある生地。その裏には驚くべき情熱がある。ウエアハウスのデニムは、ヴィンテージ生地を解体し、原料の綿から紡績まで研究する徹底ぶり。それを織り上げる力織機も、「G3」と呼ばれる約半世紀も前のものだ。旧式ゆえ一時間に5mほどしか織れず、しかも糸本来のムラがそのまま生地に出る不均一な表情になる。しかしこれこそ、ヴィンテージさながらの"味"を再現する要なのだ。非効率をいとわず、古きよき時代へのオマージュを込めて作られるジーンズ。ロマンたっぷりな一本だ。左は2003年にリニューアルしたフラッグシップモデル。第二次大戦後のデニムをモチーフとしたテーパードラインが特徴のオーセンティックな一本。
2万2000円(ウエアハウス 東京店)
「未来の素材」を創り続ける開拓者
KOMATSU SEIREN【小松精練】/石川
1943年創業。衣料用のファブリックをメインに、機能性とファッション性を兼備した新素材を多数開発。合成繊維の染色・加工分野で傑出した技術を持ち、様々なブランドが採用。
シルクのような光沢と高い機能性を両立
スポーツやアウトドアがトレンドのキーワードとして注目される昨今。クラシックファッション分野にも合成繊維は浸透している。そのリーディングカンパニーが小松精練だ。コート生地は伊リモンタ社のナイロン生地を小松精練が染色加工したもの。シルクのように上品な光沢と美しい発色、豊かなドレープで高級感たっぷりに仕上げられている。さらに、強撥水加工も施され、機能性にも大変優れた一着だ。小松精練の染色加工技術は日々進歩中。今後も画期的生地が続々生まれることだろう。ステッチを極力排してミニマルに仕立てることで、素材の表情を生かしモダンに仕上げたコート。
3万3000円/ユニバーサルランゲージ(ユニバーサルランゲージ 渋谷店)
※表示価格は税抜きです。
撮影/ケビン・チャン スタイリング/武内雅英(CODE) ヘアメイク/寺岡慎太郎(SIGNO) 取材・文/長崎義紹 文/池田保行(04)
[MEN'S EX 2017年11月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
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