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ギタリスト益田正洋が弾く スペインの絵心歌心

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NIKKEI STYLE

ギタリスト益田正洋さんのスペイン音楽への取り組みが佳境に入っている。11月にCDアルバム「モレーノ=トローバ作品集」を出すほか、「ギターと絵画の交わるところ」と題し、ギターと絵画を結び付けた公演もする。スペインのギター曲の魅力について聞いた。

「闘牛とフラメンコだけではない。スペインには多様な魅力がある」。益田さんはこう語り始めた。1990年クラシカルギターコンクールにて史上最年少12歳で第1位を受賞した天才ギタリスト。長崎大学経済学部を卒業後、米ジュリアード音楽院に留学した異色の経歴を持つ。2012年に世界的ギター製作者のJ.L.ロマニリョス氏に招かれ、スペイン演奏ツアーをした前後から、「スペイン音楽に集中して取り組んできた」と話す。

スペイン熱の集大成は「トローバ作品集」

益田さんのここ5~6年のスペイン熱は頂点に達しつつある。「スペイン アンダルシアの風景」「カタルーニャ」などスペインの作曲家の作品集CDを相次ぎ出してきたが、11月にはその集大成と位置付けるCD「モレーノ=トローバ作品集」(発売元フォンテック)を出す。

マドリード生まれの作曲家フェデリコ・モレーノ・トローバ(1891~1982年)はまだ日本では知名度が低い。スペイン伝統の国民歌劇『サルスエラ』の作曲家として有名だ。同郷のテノール歌手プラシド・ドミンゴ氏と親交が深く、トローバのオペラにはドミンゴがよく出演した。現代音楽と一線を画し、スペイン国民楽派の伝統を現代に継承する作風を守った。「トローバはギター曲もたくさん書いた。ギターを弾かない作曲家だったが、それだけに彼のギター曲は貴重だ。その素晴らしさを日本でもっと広めたい」と抱負を語る。

11月23日には国立西洋美術館主任研究員の川瀬佑介氏とのトークを交え、「ギターと絵画の交わるところ」というスペイン音楽のリサイタルを開く。東京都北区による「北とぴあ国際音楽祭2017」の参加公演で、スペイン大使館が後援する。これまでも同名のリサイタルを川瀬氏と開いてきた。「川瀬さんはスペイン美術の専門家。僕が感覚的に理解していたスペイン音楽が、彼の論理的見方に助けられて新たな意味を持ち始めた」。時代背景を考慮しつつ作曲家と画家を対置し、スペインの芸術を本質から明かそうという試みだ。

そもそもスペインはギタリストにとって特別の国だ。「ギターとスペインは切っても切り離せない関係にある」と益田さんは語る。川瀬氏との対話によって、固定観念にとらわれずにスペインを見ることができるようになったという。「スペインには地域ごとに様々な魅力がある。ギターを深く知るには、ギターの故郷の多様性への理解を深める必要がある」と指摘する。

ギター曲に古典派の作風を取り入れたソル

スペイン北東部のカタルーニャ州は10月1日、独立の是非を問う住民投票を実施し、有権者の43%が投票し、うち約9割が独立に賛成した。独立運動が起きるほどに各地域は独自の歴史と文化を持つ。「バルセロナを中心としたカタルーニャはパリにも似て非常に洗練された文化を持つ。一方で南部のアンダルシア地方は、いい意味で泥臭く、土着であり、いかにもスペインという風土だ。僕はアンダルシアに行って初めてスペインらしさを実感することができたが、そうした多様性を持つのがスペインだ」と話す。

今回の映像では益田さんがフェルナンド・ソル(1778~1839年)の「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲 作品9」を弾いている。モーツァルトの歌劇「魔笛」の主題を使って、当時はやっていた変奏曲の形式にのっとって書かれた作品だ。バルセロナ生まれのソルは「ギターのベートーベン」と呼ばれるほどの国民的大作曲家で、ギタリストとしても欧州で活躍した。

ソルはギター曲を多数書いたため、「ギタリストにとって必要不可欠の作曲家」と益田さんは強調する。スペインのギター音楽の源流に位置する作曲家だ。「スペインの田舎の楽器だったギターをクラシックの表舞台で活躍できる楽器に引き上げた」とその功績をたたえる。

ソルがハイドン、モーツァルト、ベートーベンといった同時代のウィーン古典派の作風に学んだのも、ギター1本で当世一流の芸術を生み出そうとしたからにほかならない。「ソルはロンドンでモーツァルトの『魔笛』を聴き、その主題に基づいて傑作を書き上げた」と益田さんは「モーツァルトの『魔笛』の主題による変奏曲」について説明する。

スペインの民衆が担ってきたギター音楽

「ギターは今も昔も基本は庶民の楽器だと思う」と益田さんは指摘する。そしてソルと生きた時代が重なるスペイン最大の画家フランシスコ・デ・ゴヤ(1746~1828年)の作品を事例に挙げる。「ゴヤには猿がギターを裏返しに持っている様子を描いた作品がある。ゴヤは宮廷画家だった。当時のスペインの宮廷の人々はギターではなくピアノを弾いた。ギターを弾く人はどちらかといえば庶民だった」と説明する。ゴヤが描いた猿のギター弾きの様子は、ギターに対する当時のスペイン人の見方がにじみ出ているというのだ。

イサーク・アルベニス(1860~1909年)やエンリケ・グラナドス(1867~1916年)の作品にはギター曲として知られているものも多いが、原曲はピアノ曲だ。リョベートら著名なギタリストや作曲家がこれまでアルベニスやグラナドスのピアノ曲をギター用に編曲してきた。

益田さんは2016年にCD「グラナドス没後100年によせて ギター版による12のスペイン舞曲(全曲)」(発売元フォンテック)を出した。これに収録した全曲を益田さん自身やギタリストの福田進一氏らが編曲している。しかし最初からギター曲だったかのように聴けるのがこのCDアルバムの面白さだ。アルベニスと並びスペイン国民楽派の旗手だったグラナドスが民衆のギター音楽にも関心を示し、精通していたことを表しているともいえる。同時に益田さんらによる編曲が自然なギター奏法に合っていることも示している。

「ギターは誰もが一度は触ったことのある楽器だろう。クラシックギターもフォークギターもエレキギターもある。ギターを弾く人口は僕らが思っている以上に多い。しかし知られていないギター音楽もまだ非常に多い」。益田さんは現代につながるギターの発祥地スペインを探究し、ギターのオリジナル曲をさらに掘り起こそうとしている。同時に「オーケストラやピアノの曲をギターで弾いたらどうなるかを常に考えている」とも言う。スペインの絵心と歌心という原点を見つめるところから新たなギターの可能性が広がる。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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