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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。夏までは若い読者が流入して勢いがあったビジネス書売り場だが、秋口からはどうも活気に乏しいという。お笑い芸人、西野亮廣氏の新刊『革命のファンファーレ』が気を吐いているが、めぼしい新刊が続かず、ロングセラー頼りの売れ方になっているようだ。それだけにロングセラーを育てる試みにも力が入る。同店が期待をかけているのが、何かと注目を集める経営者、孫正義氏の仕事術をスキル化して解説した1冊だ。

数字で上司を動かすスキルに焦点

その本は三木雄信『孫社長にたたきこまれたすごい「数値化」仕事術』(PHP研究所)。八重洲ブックセンターは、「八重洲ブックチョイス」という独自の賞を創設、3カ月に1度ビジネス書と文芸書のおすすめ本に授与して販促する施策を展開している。10月初め、その賞に秋のビジネス書として選んだのが本書だ。8月後半に店頭に並んでから、まずまずの売れ行きで推移していたが、ここでもう一段売り上げを伸ばそうというわけだ。「孫氏のビジネス手法がスキルとして語られていて、普通のビジネスマンにも取っ付きやすい」とビジネス書を担当する副店長の木内恒人さんはおすすめの理由を話す。

著者の三木氏は孫氏のもと、2000年代前半に社長室長を務めた人物。今は独立起業して英会話スクール事業を手がけている。孫氏の最側近としてたたきこまれたのが、本書のテーマになっている数値化仕事術だったという。「上から押し付けられる"受身の数値化"」ではなく「下が上を動かせるようになる"攻めの数値化"」というのが、この仕事術の大きなポイントだ。

何をどこまでやるかを明確化

三木氏がADSL事業のコールセンターの仕事を振られたとき、問い合わせ対応がパンク寸前にまで膨らみきっていた。このままでは対応人員を増やすしかないが、それではコストが増大するばかりだ。そのとき、膨大な問い合わせを種類別に分類することを試みた。7つほどに分類してみると、2種類の問い合わせで8割近くに達することを発見した。その2つの解決策をまず立案・実行することで、人員を増やさずにコールセンターを軌道に乗せたという。このように、どこから手を着けたらいいか分からない問題でも、数字に落とし込むことで、優先順位やどこまでやればよいかが見えてくると著者は言う。

数値化仕事術の利点や注意点を第1章で概観したあと、具体的なツールを紹介しながら使い方も解説していく実践的なつくり。実際三木氏がよく使う「データ分析・7つ道具」が第2章で紹介されており、ここが一番の読みどころだ。「プロセス分析」「散布図と単回帰分析」など、スキルの名前自体は本格的だが、よく読めばシンプルな手法で、簡単に応用できるようにエクセルにどう入力してグラフ化するかまで具体的に書かれている。数値化で陥りやすいワナにも言及しており、目配りもきいている。

新刊では西野氏『革命のファンファーレ』

それでは先週のベスト5を見ておこう。

(1)新卒採用力が会社の未来を決める!小山昇著(マネジメント社)
(2)革命のファンファーレ西野亮廣著(幻冬舎)
(3)孫社長にたたきこまれたすごい「数値化」仕事術三木雄信著(PHP研究所)
(4)できたこと手帳永谷研一著(クロスメディア・パブリッシング)
(5)スタンフォ-ド式 最高の睡眠 西野精治著(サンマーク出版)

(八重洲ブックセンター本店、2017年10月8~14日)

1位は著者・版元関係のまとめ買いが入った。10月初めに訪れた紀伊国屋書店大手町ビル店でも、同じ小山氏の別の本がまとめ買いで1位になっていた。2位の西野氏の本は前回のリブロ汐留シオサイト店では3位にランクイン。立地を問わず売れ行きは好調だ。三木氏の本は3位。「1階入り口正面の平台に並べるなどの販促策がきいている」と木内さん。4位は著者イベントで売り上げを伸ばした。まさにできたことを書き入れる手帳で、自己肯定感を高める自己啓発ツールだ。5位には、ロングセラーの睡眠本が息長く入っている。

(水柿武志)

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