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2020フォーラム

日本人だけで考えるな 外国人集客に「5つのNG」 コンサルティング会社、やまとごころの村山慶輔代表に聞く

2017/10/26

外国人旅行者の獲得競争は激しい。海外の展示会では、日本と韓国がともに「桜」をテーマに掲げることも(2月、タイ・バンコク)

 2020年東京五輪・パラリンピックに向けて訪日外国人(インバウンド)が増えるなか、地方の自治体や企業による争奪戦が激しくなっている。だが日本人旅行者を相手にしていた従来のやり方では、外国人の需要はつかめない。東京海上日動火災保険と連携してインバウンドのコンサルティングを手がける、やまとごころ(東京・新宿)代表の村山慶輔氏(41)に「やってはいけない5つのこと」を聞いた。

やまとごころ代表の村山氏は東京海上日動火災保険と連携して、各地でインバウンドのコンサルティングを手掛けている(東京都千代田区)

 ――外国人旅行客を呼び込みたい地方にとって、東京五輪・パラリンピックは大きな追い風ではないですか。

 「確かに13年9月に東京五輪・パラリンピック(オリパラ)の開催が決まった瞬間から、日本のインバウンドは劇的に変わりました。ただオリパラが決まったからといって、いま日本に来る外国人はいません。チャンスとみて国、自治体、企業が一斉に走り出したから、訪日外国人が増えているのです。そこの見方を誤ってはいけません」

 ――インバウンドを取り込めるかどうかは、やり方次第ということですね。

 「実際、外国人旅行者の獲得競争は非常に激しくなっています。それを示す事例をひとつあげましょう。アジアでは、海外旅行の展示会が数多く開かれています。桜の花というと、日本人は『日本の専売特許』と思っているかもしれませんが、現実には韓国も桜の花をうたって外国人旅行者を呼び込もうとしています。(20年オリパラがあるからといって)日本も、うかうかしてはいられないのです」

 ――日本がインバウンドで成功するにはどうしたらいいのでしょう。

 「いろいろな地方の事例をみてきて、やってはいけない『5つの駄目』があることに気がつきました。1つは日本人だけで考えることです。日本人には、何が外国人の興味を引くのか分かりません。知名度アップが課題だった青森県は、元留学生の体験リポートを中国の動画サービスに投稿しました。すると飾らない本音トークが人気を集め、閲覧回数が800万回を超えました。外国人は外国人に呼んでもらうのが一番です」

 「2つ目は戦略がないことです。『自然や名所、山の幸、海の幸。何でもあります』と総花的な紹介をする自治体が多いですが、何がウリか分かりません。それに対し三重県は自然や名所をひとまず脇に置き、ゴルフ場で勝負しました。世界各地のイベントに参加して、『日本のゴルフ場と言えば三重県』とアピールしたのです。いまでは三重県は世界の旅行会社の間でもよく知られており、国際ゴルフツアーオペレーター協会が主催する観光イベント『日本ゴルフツーリズムコンベンション2018』の誘致にも成功しました」

 ――そうはいっても自治体は、特定の産業や観光地を特別扱いするわけにいきません。平等、公平では駄目ですか。

 「平等、公平にこだわりすぎると、満遍ない情報発信になってしまい、外国人の心に刺さりません。それに多くの自治体は安心感があるからか、大手の旅行会社と組みたがりますが、こうした権威主義が本当に効果があるのか疑問です。外国人を呼び込み、お金を落としてもらえるのは、むしろ地域に根付いた小さな旅行会社かもしれません」

 ――残り2つの駄目なことは何ですか。

 「とにかく名前を売ることです。外国人に自治体の名前を浸透させるには時間がかかります。兵庫県豊岡市の城崎温泉の英文ホームページは『京都から2.5時間の温泉タウン』を打ち出しています。京都の知名度を生かしたコバンザメ商法といえます。まずは強いブランドにのっかり、外国人に足を運んでもらい、そのうえで地名を売り込むのも方法です」

お金を落としてもらうための「プロダクト」が必要という(岐阜県飛騨地方の里山サイクリング)

 「プロダクトがないことも問題です。『外国人が来ても、地元にお金が落ちない』という話をよく聞きますが、商品がなければお金は落ちません。里山の風景や古民家はコンテンツであって、プロダクトではありません。たとえば岐阜県飛騨地方では、自然に親しむパッケージツアーがあるからこそ、年間数千人の外国人が訪れてお金を落としています。岐阜県羽島市には、刀鍛冶ができる体験ツアーがあります。刀匠の指導で刃入れや焼き入れの作業を体験し、『サムライナイフ』を鋳造できる。こうしたツアーがあれば、立地が悪くても外国人は足を運びます」

 「日本人だけで考える、戦略がない、とにかく名前を売る、プロダクトがない、平等・公平・権威が好き――。インバウンド需要を上手に取り込めていないと思う自治体や企業は、今あげた5つの駄目に当てはまらないかどうかを点検してほしいです」

 ――情報提供やプロダクトづくりがうまくいったとして、おもてなしには人材の確保も必要では。

 「最近は深刻な人手不足に陥っている宿泊施設が増えています。室内を清掃しないまま宿泊客を迎え入れてしまって、大クレームになったという話を聞いたことがあります。もう一つ大きな問題として、日本人の多くは外国人に苦手意識を持っています。東京の百貨店が外国人のお客さんのクレームを集計したところ、ナンバーワンは『店員に無視されている』だったそうです。地方だけでなく都会でも、店員は外国人から目をそらし、一歩引いてしまうのです」

村山慶輔
 1976年7月、兵庫県生まれ。99年米ウィスコンシン大マディソン校卒。在学中に20ヵ国以上を旅行したほか、卒業後はインドで半年間のインターンシップも経験した。2000年アクセンチュア入社。地域活性化プロジェクト、グローバルマーケティング戦略などに従事した後、06年退社。07年サイト「やまとごころ」を立ち上げ、12年に同名の会社を設立。インバウンドに特化したコンサルティング事業を手がけている。

(小林健一)

 日経からのお知らせ 日本経済新聞社は11月9日、2020年東京五輪・パラリンピックと日本経済の活性化を考える第2回日経2020フォーラム「2020年から見えるインバウンド新時代」を開催しました。小池百合子東京都知事、大会組織委員会の御手洗冨士夫名誉会長、東京海上日動火災保険の北沢利文社長らが登壇しました。当日の模様は、日経が運営する映像コンテンツサイト「日経チャンネル」(http://channel.nikkei.co.jp/businessn/171109tokyo2020/)でご覧いただけます。

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