人見 情報が足りてないんだと思います。ハイブリッドを世界で一番広めているメーカーがEVを苦手とするわけがない。

小沢 少なくともパーツ単位では優れているわけじゃないですか。高効率モーターや、電気を直流から交流に変える高効率インバーターを世界で最も安く供給する技術を持っているわけですから。

人見 すでにプラグインハイブリッドがあるわけです。そのエンジンの代わりに大量の電池を積めばEVになり得るわけで。

小沢 根本には根深いヨーロッパコンプレックスがあるような気もしますよね。漠然と「ヨーロッパがすごい」「ドイツがすごい」。それとEVに対する漠然としたピュアイメージも。

人見 それはEVを実際に買って乗っていない人のイメージですよね。

小沢 現実に2025年、EV比率はどれくらいになりますかね?

人見 僕には全く分かりません。ユーザーがEVを知らない状態で、国を挙げてプロモーションしたときには「そんなにいいものなのか」と思って買う人もいると思うんです。ただし本当に大切なのは「それが続くのか」です。2018年にはカリフォルニア州で「全販売台数のうち一定の販売比率以上はEVを売りなさい」という規制強化が始まる。その結果、大メーカーがそこそこの数のEVを売るようになるでしょう。でも、最初にあった販売奨励金のインセンティブも、そのうちになくなりますよね。価格は高い。充電場所で1時間待ったことが年に3回あった。下取り金額は信じられないほど安かった。そうした不便を積み重ねていったとき、次にまたEVを買う人がどれだけいるのか。

小沢 202X年に一瞬世界販売10~20%はいくかもしれない。でもそれから下がる可能性も大いにありますよね。

人見 会社は当分もうからないし、ユーザーは不便を強いられるかもしれないし、ウェル・トゥ・ホイール(Well to Wheel)、つまりエネルギー採掘から走行までのトータルで見た場合はCO2も大して減らないかもしれない。こんなに世の中、ルーズ・ルーズ・ルーズの関係になるような提案があること自体が、すごいなと思っていますよ。

人見氏(右)に話を聞く小沢コージ

人見光夫(ひとみ・みつお):1954年岡山県生まれ。東京大学工学部航空工学科卒。大学院修了後、マツダに入社。当初は不遇の時代を過ごすが、上司に「なにかいい技術はないか」と言われ、長年温めていた「スカイアクティブ(SKYACTIV)理論」「低圧縮ディーゼル」「高圧縮ガソリン」を提案。2012年からのマツダの革命の中心に。今回のスカイアクティブX、SPCCIは第二弾。実はすでに第三弾まで決まっている

小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。
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