検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

EVならクリーン? マツダのMr.エンジンと考えてみた

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

現在開催中の東京モーターショー2017でも、大きな話題になっている電気自動車(EV)。欧米のメーカーがEVへシフトする中、積極的にクリーンな内燃機関の開発を進めているのがマツダだ。トヨタとEVの共同開発を明言しつつも、マツダはなぜ内燃機関の進化に挑むのか。新時代環境エンジン「スカイアクティブX」のけん引者、Mr.エンジンこと人見光夫常務に小沢コージ氏が直撃した。

今のEV包囲網をどう思う?

小沢 まずは今回試乗させていただいた新エンジンのスカイアクティブXですが、すごいですね。トルクの出方がハンパじゃない。さらにすごいのは今後分かるであろう実燃費だと思いますが、具体的にはどこがどう優れているのでしょう?

人見 結局はガソリンを薄く燃やす部分と断熱性です。特に希薄燃焼というのが猛烈に大きい。

小沢 要するに理論空燃比の14.7を大きく超える、空燃比30以上の超薄いガソリン混合気を燃やす部分ですよね。バーチャルピストンというか、燃焼室の中でまずプラグ周辺が燃えてそれがピストン化し、周りを圧縮着火させる。

人見 それがいわゆる「ノッキング」と呼ばれる異常着火なんです。今回のスカイアクティブXのポイントはまさにそれ。「手なずけたノッキング」ということなんです。

小沢 内燃機関もまだまだ進化しているということですね。難しい技術の話はさておき、今回はズバリ、今のEV包囲網というか、世界的EV戦略についてお聞きしたいのです。先ほどのスカイアクティブXの発表会では「マツダは内燃機関で行けるところまで行く」とおっしゃっていました。今やみんなすぐにでもエンジンを捨て、EV化する勢いです。ぶっちゃけ、どう思われますか。

人見 マツダもEVはEVでやりますけど、いま内燃機関の改善をゆるめる理由はまるでないと思ってます。比べると欧州では、エモーショナル(感情的)な部分がありますよね。例のディーゼル排ガス問題の「後遺症」だと思われますが、道路で窒素酸化物(NOx)排出量を測ったりする団体があって、ロンドンの広範囲の道とかドイツのシュツットガルトなどで空気中のNOx濃度が環境基準を超えることが結構あるんですよ。

小沢 環境団体の中には、「そのせいで何千人も死んでいる」と主張するところもあるらしいですね。

人見 ドイツの一部都市には、基準を超えたら市長は絶対対応しなければいけないという法律もあるんです。「新しい規制に対応したエンジン車以外は町に入れない」などの策を取らない限り、市長が政治をしていないと判断されかねない。

小沢 そのあたりはかなり日本と差がありますよね。日本じゃ光化学スモッグが問題になったのは主に僕が小学生の時代ぐらい(笑)。

人見 そんなときに欧州で「規制に対応したクルマを走らせていれば、本来もっときれいなはずなんですが」なんていえるわけがありません。いま日本で自動車の排ガスによる環境問題が起きていますか? と聞かれれば、私は起きてないという認識です。つまり、ちゃんとやっていれば今の環境規制でも問題ないとも言えるわけです。

小沢 なるほど。今の最新規制をクリアしていれば、ガソリン&ディーゼルの環境問題は起きてないという判断なんですね。EVシフトをことさら急ぐ必要はないと。

現状を検証せずに進むEV化

人見 もう一つ大きいのは中国マーケットの存在です。ドイツブランドは中国市場がEV化を必ず進めると分かっているから、中国向けにものすごい数のEVを用意しています。でも、それらを欧州や世界向けのように言っているわけです。

小沢 そうなんですよね。日本じゃあまり知られていないけど、ドイツは今や中国がダントツの超お得意先で、VWグループ一つとっても年間300万台以上も売っている。つまり年間1000万台のVW車のうち3分の1が中国で売られるわけで、先日もVWが「2025年にEV300万台と言ったのは半分は中国向け」と認めたようです。

人見 先日、イタリアで聞いて驚きましたが、今あちらで走っているディーゼル車は、最新の排ガス規制である「ユーロ6」に対応しているものは少ないそうです。残りの車はそれよりも古い規制である「ユーロ5」や「ユーロ4」対応の車だそうです。街中を走っている車の多くがNOxや二酸化炭素(CO2)を最新の基準値よりも多く出していたら、空気がきれいになることはないと思います。

小沢 何を信じていいか分からないですね。

人見 要は本当に最新の規制にすべて適合させたら今のような問題は起きますか? ということです。その検証もしないでEV化を推し進めているように見えるのがヘンなんです。EVをすべてクリーンと見なすのも間違いで、とんでもない電力消費のクルマを作ってもゼロ、すごく電力消費が少ないクルマを作ってもゼロというのもおかしい。

小沢 確かに感情的ですよね。リクツがあるようであまり見えてこない。実際、EVの最大の問題といっても、その場ではCO2を出していないクルマでも、発電に火力発電所使っていたら、実際はCO2を出しているクルマということじゃないですか。

人見 中国には砂漠に太陽光パネルを付けてクリーン発電をしてそれをEVに回すという話もあるそうですが、それ以前に石炭発電を減らすほうが先じゃないですかと。日本もそうです。現在、日本で発電している電力のうち、約3割が石炭発電。結局のところEV化しても、それを減らさない限り、国としてのCO2排出効果は薄い。削減効果が高いほうから減らすべきだと私は思うんです。

小沢 クルマの話というより、その国全体で出すCO2やNOxの話になりますよね。

人見 せっかくキレイな発電をしたとして、それをクルマのほうに回そうというリクツが分からないんです。順番があるんですよ。まず石炭発電をなくしました、原油発電、天然ガス発電をなくしました。そうやって効率化したうえで、さらに電気が余っています、じゃEVを導入しましょうとなればいいんです。発電は発電でCO2をなくす、自動車は自動車でCO2を減らす。両方で頑張ったほうがいいでしょう。

小沢 それがマツダが内燃機関で頑張り、スカイアクティブXを世に出す理由ですね。

人見 すでに自動車には効率的な燃料分配システムであり、燃料供給スタンドもそろっている。EVのインフラを作るのにどれだけの資源とエネルギーを使うというのでしょうか。現状を効率化する利点をもっと見直すべきだと思うんです。派手ではないかもしれませんが。

小沢 確かにスカイアクティブXもクルマ自体は意外と地味ですよね。エンジン音は出すし、一見燃費が良くてパワーを効率的に出す昔ながらの自動車。

人見 それでいいんです。本当に効率的なら。

根深いヨーロッパコンプレックスの問題

小沢 それからトヨタやホンダがEVで遅れているように言われるのもなんだかおかしくはないですか。製品企画や部分的技術で劣っている部分はあるかもしれないですが。

人見 情報が足りてないんだと思います。ハイブリッドを世界で一番広めているメーカーがEVを苦手とするわけがない。

小沢 少なくともパーツ単位では優れているわけじゃないですか。高効率モーターや、電気を直流から交流に変える高効率インバーターを世界で最も安く供給する技術を持っているわけですから。

人見 すでにプラグインハイブリッドがあるわけです。そのエンジンの代わりに大量の電池を積めばEVになり得るわけで。

小沢 根本には根深いヨーロッパコンプレックスがあるような気もしますよね。漠然と「ヨーロッパがすごい」「ドイツがすごい」。それとEVに対する漠然としたピュアイメージも。

人見 それはEVを実際に買って乗っていない人のイメージですよね。

小沢 現実に2025年、EV比率はどれくらいになりますかね?

人見 僕には全く分かりません。ユーザーがEVを知らない状態で、国を挙げてプロモーションしたときには「そんなにいいものなのか」と思って買う人もいると思うんです。ただし本当に大切なのは「それが続くのか」です。2018年にはカリフォルニア州で「全販売台数のうち一定の販売比率以上はEVを売りなさい」という規制強化が始まる。その結果、大メーカーがそこそこの数のEVを売るようになるでしょう。でも、最初にあった販売奨励金のインセンティブも、そのうちになくなりますよね。価格は高い。充電場所で1時間待ったことが年に3回あった。下取り金額は信じられないほど安かった。そうした不便を積み重ねていったとき、次にまたEVを買う人がどれだけいるのか。

小沢 202X年に一瞬世界販売10~20%はいくかもしれない。でもそれから下がる可能性も大いにありますよね。

人見 会社は当分もうからないし、ユーザーは不便を強いられるかもしれないし、ウェル・トゥ・ホイール(Well to Wheel)、つまりエネルギー採掘から走行までのトータルで見た場合はCO2も大して減らないかもしれない。こんなに世の中、ルーズ・ルーズ・ルーズの関係になるような提案があること自体が、すごいなと思っていますよ。

人見光夫(ひとみ・みつお):1954年岡山県生まれ。東京大学工学部航空工学科卒。大学院修了後、マツダに入社。当初は不遇の時代を過ごすが、上司に「なにかいい技術はないか」と言われ、長年温めていた「スカイアクティブ(SKYACTIV)理論」「低圧縮ディーゼル」「高圧縮ガソリン」を提案。2012年からのマツダの革命の中心に。今回のスカイアクティブX、SPCCIは第二弾。実はすでに第三弾まで決まっている

小沢コージ
 自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_