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スコッチの源流はワイン? ブドウなしで果実の芳醇を世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(8)

スコットランドは何度かイングランドと戦った=PIXTA

この同盟に基づき、スコットランドは何度かイングランドと戦うことになる。象徴的なのが1513年の「フロドゥンの戦い」である。スコットランド王ジェームズ4世は、イングランド王ヘンリー8世と平和条約を締結し、8世の姉、マーガレットと結婚までする。しかし、イタリアの支配権を巡る紛争でヘンリー8世がフランス王ルイ12世に宣戦布告し、フランスに侵入すると、同盟に基づきジェームズ4世はイングランドに侵攻する。

イングランドとスコットランドの間で戦われた歴史上最大のこの会戦で敗れたのは軍備に劣るスコットランド軍で、しかもジェームズ4世は会戦で落命した連合王国最後の王となってしまう。この後、ジェームズ4世の息子の5世も、戦場でこそなかったもののイングランド出兵が原因で命を落としている。

フランスとの深い関係がスコットランド人がワインに親しむきっかけになった=PIXTA

同盟に忠実であったこのようなスコットランド側の誠意は歴代のフランス王にも通じ、フランスは多くのスコットランド人の出稼ぎや留学生を受け入れた。スコットランド人の傭兵は有名であった。例えば百年戦争でも、ジャンヌ・ダルクが率いた兵士を始め、イングランド軍相手に大活躍した兵士の多くがスコットランド人の傭兵であった。

こうして、文化・社会的にスコットランドはフランスから多くの影響を受けた。その1例だがスコットランドではイングランドにはないフランス語由来のボキャブラリーがたくさん残っている。

こうして両国関係の緊密度が高まり、何とフランス王がスコットランド国民にフランス国民と同等の権利を認めたのである。その権利を最大限に行使したのが、フランスワインの調達においてであった。

スコットランドとフランスワインの深い関係の始まりで、スコットランド人の味覚はフランスワインによって磨かれる。この極めて特別な状況によってワインの味わいがスコッチウイスキーのおいしさの源流になったのではないかと考えている。

デュシェス・ドゥ・ブルゴーニュ 麦の酒がブドウの酒をどこまで表現できるか?

ワインを蒸溜した訳でもないスコッチがワインの持つおいしさをそこはかとなく身に付けるに至る。そのことにエールがどれほど貢献しているかを直感するのに打って付けの1本がある。「デュシェス・ドゥ・ブルゴーニュ」というベルギーのレッドエール、今回お奨めの逸品である。麦の酒がブドウの酒をどこまで表現できるか、その可能性を認識してほしい。

ベルギービールの専門店ならたいてい在庫がある。色、そして味、香りに皆さんがどのようなインパクトをお感じになるか楽しみである。ただし、レッドエールがスコッチウイスキーの原料になっていたという証拠は見付かっていない。

(サントリースピリッツ社専任シニアスペシャリスト=ウイスキー 三鍋昌春)


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