ランニング靴、軽量に 安定性、耐久性も向上
よくわかる スポーツシューズ(1)
スポーツシューズを巡る技術や商品戦略が進化している。ランニングブームに続き、2020年の東京五輪に向けたスポーツ熱、スポーツ用品を身につける「アスレジャー」の流行といった追い風が吹く。消費者の求める水準も高くなる一方だ。最先端の軽量シューズにファッションスニーカー、マイナースポーツ専用シューズなど商品の裾野が広がっている。
最近のシューズ需要の火付け役となったのはランニングブームだ。2年に1回ランナー人口を調査している笹川スポーツ財団の推計よると、ランナー人口はこの10年で約1.5倍に増えた。
ここ数年はブーム自体は静まっているとの見方も多い。16年は893万人とピークの12年から約12%減っている。理由にはケガや飽きたことなどが挙げられる。
ランナー減少もシューズ市場は堅調
ランナー人口の減少が指摘される一方、シューズ市場はなお堅調との調査もある。矢野経済研究所によると、16年のランニングシューズの国内市場規模(予測)は約707億円と13年から約25%増加する。あるスポーツメーカー関係者は「中距離用と長距離用など1人で複数のシューズを購入するお客が増えている」とみる。
メーカーは今後さらに、東京五輪が再びランニングなどのスポーツ熱を高めると期待する。
ランニングシューズ市場をけん引するのが国内スポーツメーカー最大手のアシックスだ。2017年2月、これまでで最軽量となるミッドソールを使ったランニングシューズ「フライトフォームファスト」シリーズを立ち上げた。
「アシックス史上最高のシューズ」。同社プロダクトマーチャンダイジング統括部の横山順一部長は強調する。
軽量性と安定性、耐久性を向上
ミッドソールに使ったフライトフォームは、従来の素材よりも55%軽量にした。ミッドソール素材に繊維を添加して強度を引き上げ、従来よりも少ない素材で耐久性を維持させるとともに軽量化を実現したという。アシックススポーツ工学研究所で300以上の試作を繰り返し、約3年の研究期間を費やして完成させたという。
靴底にもみ殻を添加して濡(ぬ)れた地面でもグリップ力を発揮するタイプと、かかと回りなどを強化した「ダイナミックデュオマックス」構造を使用して足元を安定させたタイプの2種類を発売した。シリーズの特徴として、軽量性と安定性、耐久性を向上させ、ランナーのケガを防ぎやすい点も打ち出している。
「中級ランナーの力を引き出せる」(横山部長)。利用者がランニングタイムを伸ばすのを後押しすることでランニングの楽しさを高め、ランナー人口の維持拡大につなげていく考えだ。
宇都宮想が担当します。
[日経産業新聞 2017年3月27日付を再構成]
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