「異なる事業を組み合わせることで互いの強みをいかし、最大のシナジーを生み出せる。弊社が手掛けたギンザシックスもオープン以来、好調に推移しているが、これも事業の異なる4社が協働したからこそ。当タワーができたことで、今まで街を訪れなかった人までも呼び込む、起爆剤にしたい」(山本社長)

大丸松坂屋百貨店の好本達也社長は、「オフィスはすでに満室になっており、ニーズがいかに高かったかが分かる。この御徒町エリアはJRと地下鉄の5つの路線が乗り入れるとともに、最寄りの都営バス停留所からは毎日1000本以上の路線バスが運行している」と、エリアのポテンシャルの高さを強調した。

パルコの牧山浩三社長は上野松坂屋との協業の理由について「パルコは1969年に池袋でスタートしたが、同じ場所に西武百貨店があったので『同じ(ような品ぞろえの)百貨店をつくってもしかたがない』と考えたのが原点。今回もむしろ絶好のチャンスと考えた」といい、「渋谷PARCOはサブカルチャーを育てることから始めたが、上野には元から本物の文化がある。その文化をさらに成熟させ、元気になるような何かをプラスしていきたい」(牧山社長)。そのため、大人にも支持されるショップを68店舗そろえ、テナント年間売り上げ60億円を目指すという。

左からパルコの牧山浩三社長、大丸松坂屋百貨店の好本達也社長、J.フロント リテイリングの山本良一社長、上野観光連盟会長の二木忠男氏

パルコの8割が上野初、2割が地元ゆかりの企業 

上野フロンティアタワー地下1階に新設される松坂屋上野店フロアの中央で大きな面積を占めるのが、観光案内所の機能を持ち、地域の情報発信や物販・イベントを行うといった「上野が、すき。ステーション」。上野エリアの情報や魅力を発信するとともに、周辺の有名店や老舗とのコラボレーション商品を販売。ワークショップなどを実施するコミュニティスペースも併設している。さらに上野をイメージする雑貨ショップを5ブランド展開するという。

1階から6階を占めるパルコがPARCO_yaと屋号を変えたのは、ショップ構成がほかのパルコと全く異なるためだという。PARCO_yaでは、68店舗のうち約4割がパルコとして初めて取り組む企業。上野御徒町エリア初登場の店舗が52店舗と約8割を占める。一方の残り2割はマーケットとの親和性も重視し、地元(台東・文京・千代田)ゆかりの11店舗が占めている。地元老舗企業と他ジャンルとのコラボによる業態開発も独自に行うという。

1400席というシネマコンプレックスのオープンに伴ってニーズが高まるのが飲食店だが、松坂屋上野店には百貨店につきもののレストラン街がない。そこでPARCO_ya6階には全9店舗のレストラン街「口福回廊(こうふくかいろう)」をオープン。上野の地元店舗としては、老舗有名店「上野藪そば」の新業態「うえの やぶそば」、焼肉の街・上野で長年営業する「上野 焼肉 陽山道」が初のビルイン出店。また上野は「北への玄関口」として栄えてきた歴史があるため、それを象徴する飲食店として「北海道 くろまる」「金沢まいもん寿司」「仙臺牛たん炭焼利久」と北の有名店もそろえたという。

特に注目したいのは「うえの やぶそば」。明治25(1892)年創業の老舗だが、「店の名前を“藪”から“やぶ”に変えているのは、伝統を受け継ぎつつ新しいことに挑戦する藪そばにしたかったから。初の試みとして、日本のそば粉を使ったガレットなども提供する」(パルコ上野店 小林昭夫店長)。また施設の顔となる1階には、ミシュランの星を獲得している割烹「くろぎ」のシェフ・黒木純氏が手がける新業態「廚 otona くろぎ」や、上野エリア初登場「ディーン&デルーカ カフェ」もオープン。そのセレクトからも「この街を変えたい」という意気込みが伝わってきた。

フロア中央には観光案内所の機能を持たせた「上野が、すき。ステーション」を新設
「PARCO_ya」という屋号の英文字表記「ya」は、「yet another=もうひとつの」の略で、今までの「PARCO」に対しもうひとつの新しい「PARCO」という意味。また、日本語の「や」は、花火やお祭りの際の威勢のいい掛け声、日本の老舗をイメージさせる「〇〇屋」などをイメージしたという

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2017年9月19日付の記事を再構成]

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