「ワガママな」新浪剛史氏を変えた慶応体育会時代サントリーホールディングス社長の新浪剛史氏

新浪氏は慶応大学の体育会・器械体操部で主務を務めた

この経験は非常によかった。バスケットをやっていたときの僕はレギュラー選手だから、ベンチにいる人の気持ちなんてわからなかった。「このチームは俺が支えているんだ」くらい思っていた。でも違うんですよ。大学の体育会で、選手を裏方で支えている人がいるから選手がうまくプレーができることを知りました。主務の仕事は、役割としても重要なんです。先輩たちからお金を集めて合宿をしたり、各部の体育会本部の会議に出たり……。彼らがいなければ、世の中は回らない。そのとき初めて、試合にめったに出られない人たちの気持ちがわかったし、マネジャーのような人たちがいろいろなことをやってくれていたんだなと痛感しました。

体育会本部は、OB・OGとのつながりもあるんです。ここで社会人との接点を早くに持てたことは、自分の人生においてすごくよかったと思います。僕は、器械体操部の主務を3年やったんです。普通は4年生が1年間だけやるんだけど、たまたま僕のときに先輩が落第していなくなっちゃったんです。慶応の体育会は厳しくて、落第すると体育会の幹事を降りなくてはいけない。先輩が落第したから、僕は3年間主務をやることになりました。

新浪氏は、体育会で主務を務めた経験が仕事にも生きたと振り返る

これもすごくよかった。他の部の4年生の主務が集まるなか、2年生で入って、先輩との付き合い方や年上の人との仕事の仕方を学びました。体育会では、2年生だからかわいがってもらいましたしね。2年からやっていたから、3年になれば4年生で新たに主務になった人たちだって、経験という意味では僕のほうが先輩です。今も付き合っている先輩は多いし、同期の主務は幼く見えてしまう。「お前よくきたなあ」みたいな気分です。

バスケットに関しては、もっと練習すれば、いい選手になれたのになと思うこともある。けれど、そうしたらバスケット中心の人生を歩み、どこかで道を誤っていたかもしれない。選手としての役割と、裏方の役割の両方を経験したことが、今につながっています。人生って難しいですね。

新浪剛史
慶応大学卒業後、三菱商事に入社。91年に米ハーバード大の経営学修士号(MBA)を取得。43歳で三菱商事からローソン社長に転じ、11期連続で営業増益を達成。14年、サントリーホールディングス社長に就任。58歳。

(松本千恵)

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら