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バス、停留所の縁石にピタリ 五輪会場周辺で段差解消 ブリヂストン、タイヤと道路をセットで開発へ

2017/11/25 日経産業新聞

BRTは有力な公共交通として地方自治体に広がりつつある(茨城県日立市)

 2020年に控える東京五輪・パラリンピックが、東京の足元の景色を少し変えるかもしれない。車体をバス停にピタリと寄せて乗り降りをしやすくするバリアフリーバスの実用化に向けて、ブリヂストンが道路、タイヤの両面から開発に取り組んでいる。

 「五輪に向けてブリヂストンの技術を提案していきたい」。同社生産財ソリューション技術開発ユニットの田村大祐ユニットリーダーは言葉に力を込める。東京五輪開催を見据えて東京都が計画しているのが、バス高速輸送システム(BRT)の整備だ。

 築地市場の豊洲移転問題などで当初予定していた19年の運用開始は厳しくなっているものの、都は五輪を終えて選手村を再開発した後、最終的に4系統のルートを想定している。ブリヂストンはこのBRTを「足」から変えようとしている。高齢者や障害者にとって使いやすいバスを目指す。


 日本のバスでは乗客が停留所から何歩か歩いて乗り込むのが一般的だが、欧州や南米ではバスが停留所にピタリとつけて止める「正着」が普及している。乗り降りしやすくするためには、バスと停留所の距離をできるだけ狭める必要があるという発想だ。

 この「正着」で問題となるのが、道路の縁石とタイヤがぶつかってタイヤ側面が損傷してしまうことだ。ブリヂストンは2つの方向から解決に取り組んだ。まず、バスが正着しやすい縁石の開発だ。横浜国立大学や日本交通計画協会と連携して実験を重ねた。

 新開発の縁石は運転手が寄りやすいよう、歩道側に向かって傾斜をつけているほか、段差を設けて車体との衝突を防ぐ構造を持つ。

 横国大のキャンパス内とブリヂストンのテストコースで実際にバスを走らせた結果、平均で130ミリメートル程度あったバスと歩道の間隔は49ミリメートルにまで短くできた。また縁石の角を緩やかな曲面にしたことで、タイヤの摩耗のしにくさが14.6倍向上した。

 タイヤ本体の改良も試みる。通常、バス用タイヤは縁石とこすれることを考慮して、側面を補強している。例えば欧州向けバス用タイヤでは、ブリヂストンは通常のタイヤに比べて最大5ミリメートルほど分厚くしている。このためタイヤ重量は5%ほど重くなり、燃費悪化の要因となっている。

 その解決策として取り組みはじめたのが、摩耗に応じて側面を貼り替える技術だ。トラック向けタイヤでは、接地面を貼り替える「リトレッド」が普及している。側面部分を貼り替える発想はこれまでなかったが、ブリヂストンは側面にゴムシートを貼り付けて熱を加えることで、もう一度使える技術を開発。都のBRT開業までに商品化を目指している。

 海外のBRTでは、ブラジルのリオデジャネイロを走るBRTのタイヤにセンサーを組み込み、空気圧や温度などタイヤの状態を把握する実験を16年から実施している。全地球測位システム(GPS)と連動し、状態が悪化したときはすばやく修理する取り組みだ。

 BRTは地方自治体や新興国でも普及が期待できる。特に渋滞が慢性化している新興国の大都市では、鉄道整備の代わりに幹線道路の一部車線をバス専用にしてBRTを運行し、大量輸送手段とするケースも広がっている。

 ブリヂストンは東京五輪を契機に使いやすいシステムを構築し、世界に技術を広げていく戦略だ。

(杜師康佑)

[日経産業新聞2017年10月16日付]

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