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フリーテル買収劇 MVNO薄利の現実、再編の序章

佐野正弘のモバイル最前線

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NIKKEI STYLE

格安な料金で注目され、ユーザーが増えている「格安スマホ」。その提供事業者であるMVNO(仮想移動体通信事業者)も、総務省のデータによると2017年3月末時点で684と急増していた。その中で、17年9月に楽天が「FREETEL」ブランドのプラスワン・マーケティングの通信事業を買収すると発表。この買収劇をひもとくと、薄利にあえぐMVNOの実態が見えてきた。

経営危機のFREETEL、顧客獲得に躍起の楽天

「FREETEL」を運営してきたプラスワン・マーケティングは、16年11月にはベンチャーキャピタルなどから42億円、17年3月には総務省の官民ファンドなどから30億円という巨額な資金を調達して話題を呼んだ。有名女優やタレントを起用したテレビCMを大々的に展開し、自社製のスマートフォン(スマホ)も次々と発表した。さらに「フリーテルショップ」を各地に展開するなど、MVNOの中でも目立った存在の一社だった。

しかし、派手な宣伝とは裏腹にプラスワン・マーケティングの経営は危機的状況にあった。同社が想定していたほど急速には顧客を伸ばせず、業績が大きく悪化していた。

同社の17年3月期の売上高は100億5900万円なのに対し、営業損失は53億8800万円。純資産が14億2700万円であることから、債務超過寸前の状態だった。楽天に売却する通信事業だけを見ると、総資産が18億7700万円に対して負債が30億9000万円と、既に危機的状況にあった。

プラスワン・マーケティングにとって今回の買収は、採算が取れていなかった通信事業を買い取ってもらい、経営の負担を軽くする狙いがあったといえそうだ。今後は海外を中心に端末販売を拡大し、事業の立て直しを図ることになりそうだ。

一方、楽天がプラスワン・マーケティングの通信事業を買収するは自社のMVNO「楽天モバイル」の顧客を増やすためだ。約5億円の買収金額を支払い、約31億円の負債を引き取ってでも、プラスワン・マーケティングが獲得した顧客を取り込むのが近道と判断したといえそうだ。一部報道によると同社の契約回線数は40万といわれており、楽天にとっては1回線当たり1万円程度の調達コストとなる。悪い買い物ではなさそうだ。

大手キャリアの反撃で成長に陰り

想定ほど顧客獲得を伸ばせず経営危機に陥ったプラスワン・マーケティングと、事業買収してでも顧客を増やすことに力を注ぐ楽天。この買収劇こそが、MVNOの現状を表しているといえる。

プラスワン・マーケティングが多額の投資をしてもなお、顧客を思うように獲得できなかった背景にあるのは、大手キャリアの攻勢である。大手キャリアはこれまで、圧倒的な料金差で、MVNOに顧客を奪われ続ける状況が続いていた。だがそうした状況に危機感を抱いたキャリア側が、16年後半から一転してMVNOへの流出を防ぐべく、反転攻勢に出たのである。

ソフトバンクは低価格の「ワイモバイル」ブランド、KDDIは傘下のUQコミュニケーションズが展開する「UQ mobile」に力を入れ、積極的なテレビCM攻勢や販路の拡大、さらに日本で圧倒的人気を誇るiPhoneの新品を正規に取り扱うなどの施策を次々と展開。MVNOより料金は高めだが、販売やサポートの面では充実度が高いなど、大手キャリアとMVNOの中間というべき位置付けを獲得し、人気と契約を伸ばしている。

17年に入ってからは、大手キャリア自身が料金を引き下げ、MVNOへの流出を阻止しようとする動きも見られるようになった。そのことを象徴しているのが、KDDIの「auピタットプラン」「auフラットプラン」で、さまざまな割引やキャンペーンを適用することで、月額1980円から利用できることが大きな話題を呼んでいる。

さらにKDDIは、MVNOの大手の一社であるビッグローブを17年1月に買収。10月には新たにauのネットワークを用いたサービスを提供するなど、キャリアがMVNOを買収して味方につけるという動きも出てきている。そうしたキャリア側のなりふり構わぬ施策によってMVNOに流出する顧客が減り、MVNOが思うように顧客を獲得できなくなってきているのだ。

再編で勝ち抜ける強いMVNOが必要

しかし、MVNOにとって顧客の数を増やすことは極めて重要だ、MVNOは「薄利多売」のビジネスで、数を売らなければ利益が出ないからだ。

MVNOの売り上げがどれくらい低いのか、公表されている数字から確認してみよう。楽天が公表した資料によると、プラスワン・マーケティングの通信事業の売上高は43億2900万円となっている。回線数を40万とみなすと1回線当たりの年間売上高は約1万800円、ARPU(通信事業者1契約当たりの月間売上高)は約900円程度という計算になる。

一方、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)の、個人向けの「IIJmioモバイル」に絞った契約数を確認すると、16年度末時点での回線数は95万1000回線。年間の売上高は171億円となることから、1回線あたりの年間売上高は約1万8000円、ARPUは約1500円という計算になる。NTTドコモの17年度3月期のARPUが4240円(固定回線の「ドコモ光ARPU」を除く)であるのと比べると、IIJで3分の1程度、プラスワン・マーケティングは5分の1程度という、非常に安い価格帯での競争となっている。

しかも先にも触れた通りMVNOの数は700近くにまで上っており、その多くが安さを特徴に打ち出していることから、競争上MVNOは利益を低く設定して通信料を下げざるを得ない。そうしたことからMVNOは、多数の顧客獲得ができなければ大きな利益を上げることはできず、顧客を増やすことこそが成功のための絶対条件となっているわけだ。

だが顧客を増やすにはプロモーションや販売などにコストをかける必要がある。現状大半のMVNOは、赤字覚悟で顧客獲得を図っていると考えられる。一度に40万のユーザーが獲得できる今回の買収は楽天にとっては渡りに船だったのかもしれない。今後も資金不足で競争から脱落する企業や、楽天のようにそれを買収して事業拡大を図る企業が続々と出てくるだろう。

今回の買収劇は、MVNOの数が増えて市場規模が拡大する段階から、整理・淘汰が進み再編される段階に移ったことを明確に表している。そもそも700近いMVNOが小さい市場でひしめき合う状況が続けば、大手キャリアやそのサブブランドと対等に戦えるだけの力を持つMVNOは現れない。より強いMVNOを生み出すためにも、増え過ぎたMVNOの再編は必要不可欠なものだと筆者は考える。

大手キャリアをも巻き込んで「格安」の市場競争が激しくなる中、どのような形でMVNOが再編を進め、いかに強い力を持つMVNOを生み出すことができるか。今後の国内携帯電話業界動向を見据える上でも、MVNOの再編劇は非常に大きな焦点になるといえそうだ。

佐野正弘
 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

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