来年から始まる積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」の口座開設受け付けが今月始まった。年40万円までの投資額なら運用益が20年間非課税となる仕組みで、長期で資産形成を目指す現役世代に向く制度だ。対象商品は金融庁が承認した低コストの投資信託に絞り込まれているが、金融機関により取扱数やサービスに大きな差があるので慎重に比べたい。
「もう金融機関は選んだ?」「現行NISAとどっちを選ぶ?」「魅力的な新投信も出てきたね」。10月4日の東京・銀座。長期分散投資をしている「コツコツ投資家」が月に1度数十人集まる会合では、こんな会話が飛び交った。
これまで「貯蓄から投資」への動きが広がらなかった要因の一つは「いつ、何を買えばいいか」がわからず不安だった人が多いからだ。2014年から始まった現行NISAも口座数こそ1000万を超えたが、半分以上が非稼働だ。
銀行か証券会社か
こうした状況の変革がつみたてNISAの狙いだ。毎月などの定額購入が前提で、非課税期間は20年と長い(表A)。投信評価会社モーニングスターの朝倉智也社長は「買う時期が分散される積み立てなら始めるタイミングはあまり重要ではない」と指摘する。
さらに対象商品を、長期の資産形成に適すると金融庁が認めた低コスト投信に限るため「安心感がある」という。販売手数料は原則なし。保有期間中毎日かかる信託報酬も、例えば指数に連動するインデックス投信の海外型で年0.75%以下などと厳しく制限。毎月分配型は、利益を毎月払い出して資産を効率的に増やしづらいため対象外だ。
金融庁が基準を発表した今春、国内に約6000本ある投信のうち基準を満たすのは約50本だった。その後、運用会社の間で信託報酬を下げる動きが広がり、10月13日時点で承認された投信は114本。今後もさらに増えそうだ。
採算の悪さをこぼす金融機関も多い。しかし承認本数が27本と運用会社で最多の三菱UFJ国際投信の代田秀雄取締役は「高齢者中心の投信保有を若年層に広げる契機。目先は苦しくても中長期で採算はとれる」と話す。同じ考えの金融機関も増えつつある。
販売金融機関ごとに取り扱う投信の本数は二極化している(表B)。大手の銀行・証券では対象をインデックス型中心に3~4本に絞り込んだ例もある。「初心者向けの制度なので本数が少ない方が選びやすい」との判断だ。一方、SBIや楽天、マネックスなどネット証券の多くは「承認された投信を可能な限りすべて取り扱う」方針だ。
低コスト化さらに
注目される商品を眺めよう。114本のうちインデックス型は100本。運用成績は特定の指数に連動するのでコストが低いほど有利だ。次ページの表Cに示した「eMAXIS Slim」などは国内外の資産別に複数の投信をそろえるシリーズ商品。いずれも信託報酬が極めて安い。例えば外国株型では年0.2%前後だ。
そのうちの1つを扱うニッセイアセットマネジメントは6日、信託報酬をさらに11月以降、一部で下げると発表。他社も追随しそうだ。ここ数年の投信の低コスト化は、つみたてNISA始動を機にさらに加速している。