40代女子、ゴルフでコスプレ感覚 派手なウエア競う
光る素材のベストとスカート。だまし絵の柄や大胆な色彩のボーダーシャツ。はては全身タータンチェック。最近、グリーンを彩るのが個性的で派手な女性用ゴルフウエアだ。プレー人口の減少とは対照的に、小物も含む市場は活況。ファッショナブルな女子プロの「見せるウエア」に刺激された40代以上がコスプレ感覚で着こなしを競う。
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フリル・ファー、アクセントに
2009年生まれのブランド「アルチビオ」のウエアは一見、ゴルフ用とは思えない斬新さ。光沢のある素材やエナメルだったり、フリルやファーをアクセントに使ったり。トップスとスカートで計6万円前後する。
関西から人気に火が付き、直近の売上高は前年比10%増、客単価は8万円と高額だ。「ゴルフ場でのコーディネートをSNSで発信する人が増え、よりかわいいウエアが求められるようになった」。ブランドを展開するビキジャパン(大阪市)の佐藤裕之クリエイティブディレクターはこう話す。
国内外のひと味違うウエアを集めたセレクトショップ、ザ・ゴルファーズクラブ二子玉川(東京・世田谷)の女性客の売上高は前年比10%増のペース。8年前に1割だった女性客の比率は3割に増えた。スカル(どくろ)モチーフの「MARK&LONA」、だまし絵のネクタイをあしらったシャツもある「V12」など個性派商品の動きがいい。
「レジャー白書2017」によれば16年のゴルフ参加人口は550万人で前年から210万人減少、ピーク時の3分の1まで落ち込んだ。女性プレーヤーも減少傾向にある。なのに、なぜウエア市場はにぎわっているのか。
その源流は2000年代の宮里藍や上田桃子ら若手女子プロの台頭にある。彼女たちの活躍によってウエアへの関心が高まった。8年ほど前にはアパレル各社がゴルフラインを一斉に立ち上げ市場は活況を迎える。新興ブランドも次々と誕生した。だが11年の東日本大震災によりファッション熱はいったん冷めてしまった。
復活したきっかけは、近年のファッショナブルな韓国選手の活躍などによる女子ツアーの盛り上がりだ。日本の若手プロもおしゃれを競う。これが新商品の呼び水となり、業界が再び勢いづいた。
なかでも敏感に反応したのが40代以上の女性たち。もともとファッション感度が高い世代。「街着では無理でも、ゴルフ場ならアン・シネみたいなセクシーな格好ができそう」。そんなコスプレ感覚で、個性的なウエアに飛びついたようだ。
人気ブランド、全身で10万円
06年創刊で「おしゃれゴルフ女子」を狙う雑誌「レジーナ」は、近年のミニスカートブームの火付け役。毎夏、読者向けコンペ「レジーナオープン」を開催している。今年は「これまで以上に、独自ファッションで参加する人が目立った」と松村佳織デスクは驚く。
鮮やかなミニスカート姿がずらり。サスペンダーや蝶ネクタイを合わせたり、巨大なリボンの髪飾りをしたり。「ゴルフ場では『遊び』を大胆に取り入れたいと、40代でも地味な人は少ない」(松村デスク)
2年前に「V12」を立ち上げたフォーマット(東京・渋谷)の牛田元社長も「ほとんどの女性はゴルフ場でしか成立しない、派手なファッションを探している。みな、『コスプレ』をしたいんです」と証言する。V12は若年層にも顧客を広げつつある。
ゴルフ業界全体を見ればマイナス要素ばかり話題になりがちだが、「依然これだけのプレー人口を持つスポーツは魅力的」とビキジャパンの佐藤氏は指摘する。衣料品不況にあえぐアパレルメーカーがここに目を向けるのも当然の成り行きだ。
TSIホールディングスはグループで展開する「パーリーゲイツ」「ニューバランスゴルフ」などを集めた店を東京・銀座の商業施設「GINZA SIX」に開いた。主力の「パーリーゲイツ」の国内売上高は17年2月期に100億円を突破し、今上期は16%増となった。
トレンドを意識したコレクションを年4回、大々的に売り出し、10月には店頭がタータンチェックに染まった。顧客の40代会社員は「全身そろえたら10万円はするけど、いいものを着ているという優越感もある」。「パーリーゲイツ」は韓国でも100億円を売り上げる人気ブランドに育っている。
(編集委員 松本和佳)
[日本経済新聞夕刊2017年10月14日付]
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