声が大きいのが気になります
女優、ミムラさん
耳が遠い親と長年暮らしているので、私の声も大きくなってしまいました。高音でとても通るタイプの声です。人に迷惑をかけていないか、気になります。でも小さめの声で話そうとするとストレスがたまるのです。気にしない方法はないでしょうか。(東京都・60代・女性)
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自分の声って、近くて遠い存在ですよね。私もラジオで朗読したり、ドキュメンタリーのナレーションをやったりしていますが、声の仕事は難しい分やりがいがあり、大好きな分野です。
人の耳は消耗品らしく、加齢はもとより、大きな音を聞き続けると性能が悪くなります。では、声はどうやって出ているか。なぜ相談者さんは小さな声で話すとストレスがたまるのか? 歌手や役者を指導している先生から4年間学び続けている知識を基に、お答えします。
まずはクイズ。会話で「声を出す」のは、どこがスタートだと思いますか? 声帯を震わせるところ? 息を吸うところ?
答え。実は「相手の声を聴くところ」がスタートなのです。少し意外ではないでしょうか。
役者をやっているとよくわかるのですが、自分の声が相手の声をつくります。私たちは「声を聴き合いながら、声を伝え合っている」のです。ですから先生はレッスン中、「自分の声をよく聴いてね」とたびたびおっしゃいます。それが相手に影響するからです。
日常生活でも、例えば声を小さくせねばならない冠婚葬祭の場で、小さな子供は声を抑えることができません。しかし成長していくと、大人と同じヒソヒソ声で話せるようになります。大人たちの声を聴いてまねをし、その結果その場にあった声を習得するのです。
オススメしたいのは、「この人の話し方すてきだな」と思う相手との会話。なるべくそういう人たちと話す時間を多く持てば、声のボリュームや呼吸のスピードなど、話し方が似てくるはずです。普段の声の質や音量も変わっていくことが期待できると思います。
相談者さんの場合は、耳の遠い親御さんの話し方を長年聞いていたことで、調整がそちらに傾いているのだと想像できます。小さな声をストレスに感じるのは、大きな声の際に喉や上半身に力が入る癖が体についてしまったせいかも。不要な「力み」をとるには、ため息による脱力が簡単で効果がありますのでお試しを。
静かな環境で耳を澄ます時間を持つことも、何かの発見になってよいかもしれません。声は耳からリセット可能と考え、取り組んでみてください。
[NIKKEIプラス1 2017年10月14日付]
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