曇っていても「逆さ富士」(静岡県富士宮市)
富士は気まぐれ。いつも全景を見られるとは限らない。だが富士箱根伊豆国立公園内にあるこの湖は、曇り程度の天候なら湖面に映る「逆さ富士」を楽しめる。「いつも美しい姿を見せてくれて感動的」(内野昌美さん)。晴天であれば「山裾の紅葉と静かな湖面の美しさが素晴らしい」(久保田賢次さん)。湖畔にはキャンプ場や宿泊施設、立ち寄り湯もある。湖畔一周3.3キロの散策路も足元に優しく整備されている。
(1)JR富士宮駅からバスで約45分(2)0544・27・5240(富士宮市観光協会)
関東平野のかなた すっきり全景(茨城県つくば市)
遠望の霊峰を望める代表的な山だ。「標高877メートルの女体山頂からは遮るものはなく、関東平野のかなた157キロにすっきりとした全景を楽しめる」(田代さん)。東京都心のビル群や果てしなく広がる住宅街を背景にした富士見はこの山ならでは、と選者の多くが推す。「関東平野のスケールの大きさが不思議な感じになる」(四角友里さん)。
(1)男体山頂までケーブルカー、女体山頂までロープウエー(2)029・866・1616(筑波山観光案内所)
駿河湾越しの大パノラマ(静岡県伊豆市)
山頂途中にある「だるま山高原レストハウス」が撮影ポイントとして有名。「駿河湾と沼津市内の奥に富士山。海越しの風景として素晴らしい」(宇田川さん)。ここからの眺めは1939年、米国で開かれた万国博覧会に大パノラマ写真として出展された。標高約900メートルの登山は「バスが通っているので途中ギブアップしても大丈夫」(四角さん)。
(1)レストハウスまで伊豆箱根鉄道修善寺駅からバスで約30分(2)0558・99・9501(伊豆市観光協会)
夕焼けに浮かぶシルエット(東京都八王子市)
登山でも観光でも魅力満載だが富士見の場所としても評価が高い。「晩秋は太陽が沈む位置が富士山に近いので、夕焼けに浮かぶ富士のシルエットが期待できる」(鬼頭さん)。山頂から見ると、富士山は丹沢山系など重層な山々を従えて鎮座する。「高尾山から大阪・箕面までをつなぐ東海自然歩道で、富士山周辺と直接結ばれていることを知ればより親近感が増す」(上野さん)。
(1)中腹までケーブルカーかリフト(2)042・643・3115(八王子観光コンベンション協会)
カエデ20種類 紅葉の共演(静岡県裾野市)
標高約1500メートル、富士の中腹にある自然公園。最大の火口である宝永火口を望めるのが特徴。夏は富士山ハイキングの起点、秋は紅葉が美しい。「20種類ほどのカエデの紅葉を楽しめる」(渡邊さん)。目の前に広がる大迫力の富士山と多種多様な紅葉の競演は必見。公園駐車場からでも一望できるが、遊歩道で15分ほどの腰切塚展望台からの眺めはまさに絶景だ。
(1)JR岩波駅からタクシーで30分ほど(2)055・992・5005(裾野市観光協会)
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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。名称、所在地。(1)交通手段(2)問い合わせ先電話番号。写真は1、5、10位日本富士山協会、2、3、4位冨塚晴夫、6位保田井建、7位(筑波山)田代博、7位(達磨山)林田甫、9位樋口徹撮影。
調査の方法 専門家が山梨、静岡、神奈川、長野、東京、千葉、茨城から秋の富士見ポイントを30選出。「全景の美しさ」「周辺も楽しめる」「アクセス」の観点で11人の選者にベスト10を選んでもらい、集計した。選者は以下の通り(敬称略、五十音順)。
入倉博文(山梨県世界遺産富士山課長)▽上野裕吉(富士急行グループ事業部調査役)▽宇田川友道(昭文社「山と高原地図」編集担当)▽内野昌美(静岡県富士山世界遺産課長)▽撹上貴裕(JTBガイアレック サン&サン事業部課長)▽鬼頭宏和(写真家)▽久保田賢次(ヤマケイ登山総合研究所所長)▽田代博(日本地図センター相談役)▽冨塚晴夫(写真家)▽四角友里(アウトドアスタイル・クリエーター)▽渡邊定元(富士学会会長)
[NIKKEIプラス1 2017年10月14日付]