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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。『LIFE SHIFT』や『9プリンシプルズ』など、働き方や技術の未来を見据える本が相変わらず好調で、売れ筋に大きな変化は乏しい。そんな中、店長の三浦健さんが注目するのは、2017年のノーベル経済学賞に選ばれて話題の行動経済学者の本だった。

自分史でたどる行動経済学

その本はリチャード・セイラー『行動経済学の逆襲』(遠藤真美訳、早川書房)。セイラー氏はノーベル経済学賞の受賞が決まった行動経済学の大家だ。本書の刊行は、ほぼ1年前。この店ではずっと切らさず1冊は常備していたが、このタイミングで新たに追加注文をかけた。「経済学の本だが、おもしろく読める」と三浦さんは言う。

注まで加えると500ページを超える大著だが、三浦さんの言うとおり、思いのほか読みやすい。著者は第1章で「この本では、行動経済学がどのようにして生まれ、発展してきたのかを、私が見てきた範囲で回想していく」と書いている。その通りに研究の歩みが大学院生のころから時系列に描かれ、自伝的な読み物という趣だ。いわば自分史でたどる行動経済学。そこに読みやすさの源泉がある。「もちろん研究の議論はあるが、逸話もあれば、(たぶん)笑い話もあるし、たまにはジョークまで登場する」という書きぶりも魅力を加えている。

人間に注目する経済学のおもしろさ

さらに、行動経済学という学問自体が「通常の経済学よりおもしろくて楽しい」点も読みやすい理由だろう。タダでもらった米プロバスケットボールNBAの観戦チケットの話だったり、リゾートホテルで買うビールの話だったり、研究対象として取り上げられるのは多くが身近な経済行動だ。行動経済学の基本は「人間」に焦点を当てること。経済理論や経済モデルは完全に合理的行動をとる「ホモエコノミカス」、セイラー教授の言葉では「エコン」という架空の人間を想定して構築されているが、人間はそれほど合理的行動ばかりは取らない。そこに注目するのが行動経済学だ。そういう人間くささを扱うところに親しみもわく。ノーベル賞で話題になったことで、手を伸ばす読者が増えそうだ。

ノーベル賞関連本は早川書房の独走?

ビジネス書以外でも、同書店ではノーベル賞関連本が目につく。そのひとつがノーベル物理学賞関連本のジャンナ・レヴィン『重力波は歌う』(田沢恭子・松井信彦訳、早川書房)。物理学賞に決まった研究、重力波観測の50年に及ぶ経緯を書いたノンフィクションだ。さらに文学賞のカズオ・イシグロ氏の作品群も並ぶ。「これらすべての版元が早川書房。営業担当がすごい忙しさになっている」と三浦さんは話す。

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)改訂3版 仕事ができる人の心得小山昇著(CCCメディアハウス)
(2)孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術三木雄信著(PHP研究所)
(3)革命のファンファーレ西野亮廣著(幻冬舎)
(4)9プリンシプルズ伊藤穣一、ジェフ・ハウ著(早川書房)
(5)LIFE SHIFT リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)

(リブロ汐留シオサイト店、2017年10月2~8日)

1位は著者・版元関係のまとめ買いによるランクイン。2位は孫正義氏の関連本で8月の発売以来2カ月ほどランキング上位が続いている。3位は幻冬舎が経済ニュースアプリ「ニューズピックス」と組んで刊行しているビジネス書シリーズの最新刊。お笑い芸人で絵本作家としても活躍する西野亮廣氏がいまの時代のお金と広告、働き方について語っている。訪れたときは店頭在庫がなくなっていた。ビジネス書第1作の前著も10万部売れたというから、再入荷後も好調に売り上げを伸ばしそうだ。

(水柿武志)

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