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USJでホンダ車納車 顧客は感動、ディーラーにも恩恵

デザイン思考で探る顧客ニーズ(上)

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NIKKEI STYLE

自動車ディーラー「ホンダカーズ大阪」のユニークな取り組みが注目されている。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の中に、新車を受け渡す専用の施設「USJ納車センター」を設けて成功した。この取り組みの元になったのが「デザイン思考」だ。イノベーションを起こした企業がデザイン思考をどのように使っているのか、3回に分けて事例をもとに解説する。

社員の働き方を分解して

古い車でUSJに遊びに行って思う存分楽しみ、アトラクション感覚で新車を受け取る。そして古い車をそのまま乗り捨てて、新車に乗って家に帰る…。行楽と新車の受け取り、家族にとっての一大イベントの2つを一度に享受できるという新しい体験を提供したのが、ホンダカーズ大阪のUSJ納車センターだ。

このセンターは1時間に最大10組の顧客に対して自動車の受け渡しが行える。時間になると、女性スタッフが待合室で待っていた顧客を一斉に自動車が用意されたブースにまで案内する。そして「せーの」の掛け声とともに各ブースのカーテンが同時に開いて自分の自動車と対面。知らない人たちと一緒に、皆で新車との対面を楽しむという体験を提供する。

顧客を案内する女性スタッフは、新車に触れるときは必ずハンカチ越しで触るなど細部にまで気を配ったもてなし教育を受けている。また、USJ専属のカメラマンが顧客を盛り上げながら記念撮影をするなど、USJならではのホスピタリティーにも満ちている。USJのノウハウを存分に活かしながら、顧客と新車との感動的な出合いを演出し、ホンダブランドに対するロイヤルティーを高めてもらうことが狙いだ。

この施設で新車を受け取る場合は、顧客はUSJのチケットを四人分購入する必要がある。にもかかわらず、いまや同社のディーラーで自動車を買う顧客の7割がこの施設での受け取りを選んでいる。

実はこの施設、単なる顧客満足度向上のための施設ではない。もともとの狙いは、営業の徹底的な効率化。営業担当者の時間を生み出し、より多くの自動車を売る仕組み作りだった。

ホンダが2014年度までに国内の新車販売台数を100万台にするという目標を掲げた時期があり、ディーラー各社はそれに合わせて販売台数の強化を図る必要に迫られていた。しかし「単純に人員を増やす、販売拠点を増やすというやり方は、少子化が進む日本の将来のこと考えるとリスクが高すぎる。そこで社員の時間をもっと有効に使うことで、販売増につなげる方法はないかを考えた」(ホンダカーズ大阪の堀内俊樹社長)。

そこでまず同社が行ったのが、従業員の仕事の仕方を徹底して観察することだった。各職種のスタッフがどのような仕事をどれだけ時間をかけて行っているのか。仕事を一つずつ分解して、その作業内容を分析していった。デザイン思考には様々なプロセスが含まれるが、このように調査や情報の可視化から新たな気づきを得ることが最大のポイントになる。

同社では、ここで一つ目の気づきがあった。実は一番無駄が多いのが、営業担当者の働き方だったことが分かったのだ。「一人の担当者が顧客の開拓から契約だけではなく新車登録や経理といった事務作業、保険の手続きや納車までをすべてこなしており、これは明らかに営業担当者に負担を強いる働き方であるとあらためて気付いた」(同社の泉睦雄取締役)のだ。

週末に2時間の時間を取られる納車

これまでの自動車販売店の営業手法は、営業担当者が契約を獲得したら、その後の新車の登録や保険手続き、そして納車までもその営業担当者が面倒を見るというものだった。つまり売れる営業マンほど顧客対応に時間を取られ「どんどん売る時間を削られる」(泉取締役)。営業本来の、顧客を開拓し顧客と契約を結ぶためにかけられる時間は意外にも少ない。一方で覚える作業は多岐にわたり、人がなかなか育たないという問題も抱えていた。

そこで泉取締役が考えたのが、顧客へのアプローチとアフターサービスのためのフォロー以外の仕事は、専門の部門が一括して作業を行うよう業務のフローを変えること。新車登録の業務をコンピューターを使ってワンストップでできる仕組みを整え、これを専門のスタッフに集約。保険の業務や経理の作業も各店舗が行っていたのを、1拠点にアウトソースする形にした。これにより各作業の集約化と効率化を図りつつ、営業担当者の負担を減らすことが可能になった。納車のための整備や洗車、中古車の受け入れを一か所で集中するため、大規模な投資で専用の拠点を作った。

なかでも重視したのが、冒頭の納車作業だ。最も営業に使いたい土日や休日に時間を取られ「1回1時間半から2時間はかかる」と負担になるこの仕事を、専用の納車センターを作ることで営業担当者から切り離し、営業が新規顧客の獲得やサービス受注に時間を向けられるようにしようと考えたのだ。

顧客の感動を可視化

一方でこのプロジェクトで、同社は効率化と同時に顧客満足度を向上させることも目指した。「効率化をしてたくさん売る体制を作っても、顧客に魅力なるサービスでなければ結果的には売れない売り場しかできない」(堀内社長)という判断からだ。感動をどうしたら提供できるか、その気づきを得ようと堀内社長は、営業の効率化に向けたそれぞれの取り組みが、顧客のメリットにつながるものなのかどうか一つひとつ検証していった。

その気づきを得るための検証方法はいたってシンプル。どれだけの効率化ができるか、そしてどれだけ顧客に感動を与えられるかという2つの軸を使った2次元のチャートを作り、それぞれの取り組みをプロットしていったのだ。例えば、何時に顧客が何の要件で来店するかをタブレットで一覧できる顧客管理システム。単独では適正な人員配置による効率化を図るだけの仕組みだ。そこで同社はこれに加えて来店管理システムを導入。センター入り口で車のナンバーをカメラで読み取り、誰が来店したのかを事前に店舗のスタッフが知り、スムーズに顧客を出迎える仕組みも整備することで、おもてなし力の強化につなげた。

各業務の一元管理システムは、納車にかかる時間短縮になったりとある程度の顧客メリットを提供できるが、どちらかというと効率化の側面が強い取り組みだ。一方で、ここで問題となったのも、やはり納車だった。仮に効率化のためだけに何の特徴もない納車センターを作り、販売店の都合だけで「納車は別の所で」と顧客に要求するのは、顧客からしたら感動どころか、むしろマイナスの取り組みであることを、このチャートから誰もが理解できた。

かといって、納車をこれまで通り営業担当者に任せるわけにはいかない。営業担当者の時間を作るという目的が達成できないばかりか、もう一つ潜在的な問題を抱えていたからだ。

同社は顧客に感動を与えられる営業と何かを考えるにあたり、顧客の一連の購買行動のなかで、顧客が一番感動をするポイントはどこになるのか、そしてそれを担当する営業担当者の気持ちの高揚感がどこでピークに達するかをヒアリングし、これもまた顧客の期待値を軸にしたグラフ化をしていた。

その中で気付いたのが、顧客は納車時に一番ワクワクするということ。一方で営業担当者のワクワク度のピークは一歩手前の契約時に来て、その後のテンションは一気に下がってしまうということ。顧客と営業とでこれだけの気持ちの差があっては、感動を提供できるはずもない。

顧客が一番感動を求めているタイミングで、最高の感動を提供することこそがこのプロジェクトに欠かせない。その感動は何かを議論するなかで出てきたのが「会社の記念事業として社員と家族のためにUSJを借り切って行ったパーティーの記憶」(泉取締役)だったという。ここで社員が感じた感動を顧客に提供することこそが最上のサービスになる。自動車のディーラーをUSJのパーク内に作るという、同社からしてもUSJからしてもこれまでにない取り組みは、こうした「気づき」の連続から生まれたのだ。

仕組みで売る方法をデザイン

わざわざ足を運んででも納車に行きたい。そう思わせる強烈な動機を生む仕掛けとして欠かせなかったUSJとの連携。この結果、2013年9月にこの施設を立ち上げ、翌2014年3月期は自動車の売り上げが2割以上も増加した。

そしてその後この取り組みは、同社の社内体質を大きく改善した。顧客に提案する時間が増えた営業体制のおかげで、保険や付帯のオプション、車検や修理などのサービス収入や中古車の販売が大幅に増えたのだ。新車販売以外の収益源が経費の何割をカバーしているかを指す「基盤収益カバー率」は7割台から8割超となり、これは全国のホンダ系ディーラーの中でもトップクラス。この指標が100%に近づけば近づくほど、仮に新車が一台も売れなかったとしても赤字に陥らないという、しっかりとした経営基盤が確立できているということになる。

「かつて、自動車販売は営業担当者という『個人』に依存していた。しかし、人柄や熱意を押し出した従来の営業スタイルは今の消費者には受け入れられない。その代わりに求められるのが、企業としてどのような形で顧客と向き合うかという姿勢。今は『仕組み』で顧客とつながり、顧客を支える時代になっている」(泉本部長)

その仕組みをデザインするにあたって欠かせなかったのが、顧客やその事業に関わる様々な人たちを綿密にリサーチして、潜在的に潜む顧客ニーズや企業の課題解決に対する新たな気づきを得ること。また、人々がなんとなく感じていた「感情」を可視化して事業を検証し、別の気づきを得るということだった。実はホンダカーズ大阪自身は、今回の取り組みについては、デザイン思考を意識して行ったわけではないという。しかし取り組んでいるプロセスを詳しくみると、それはまさにデザイン思考と言えるアプローチ。顧客視点に立ち、顧客の潜在的なニーズを捉えた好例と言えるだろう。

丸尾弘志

 日経BP総研マーケティング戦略研究所上席研究員。1998年国際基督教大学卒業。『日経デザイン』編集長を経て現職。日本パッケージデザイン大賞、日本サインデザイン賞審査員、特許庁各委員などを歴任。また、2016年にデザインオフィスnendoと共同でデザインコンサルティング事業「bondo」を立ち上げた。
マーケティング戦略研究所

日経BP総研マーケティング戦略研究所(http://bpmsi.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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