佳奈 さて、そろそろ本題に戻りましょうか。現在の状況のまま貴之さんが定年を迎え、そのまま退職。退職金(想定2250万円)の半分ほどを使って住宅ローンを完済するとしたわ。さらに、2年後に知美さんも60歳でパートを辞め、完全にリタイア生活に入った場合のシミュレーションがこれよ。

図2 貴之さんが60歳で定年退職を迎え、そのままリタイア。知美さんも60歳でパートを辞めた場合の生涯収支。住宅ローンの残金は退職金で一括返済するとした
図3 夫婦ともに60歳でリタイアした場合の金融資産の推移。貴之さんの年金が出る65歳までの間に資産を大きく取り崩すことになり、74歳で貯蓄が底をつく

貴之 えーっと、現役時代は黒字だけど、リタイアしてからはガンガン貯蓄が減っていって、僕が74歳の時にマイナスに転じるのか。厳しいっ!

佳奈 このシミュレーションでは、リタイアしてからの基本生活費を現役時代の80%としたの。およそ月に21万円ほどね。ここにマンションの管理費やイベント支出を加えて、月平均の支出は貴之さんが60歳時点で27万円としたわ。ちなみに物価の上昇も考慮して、基本生活費は毎年0.5%ずつアップすると想定しているの。

知美 ちなみに、定年後の支出ってどのくらいが相場なの?

佳奈 前出の家計調査で「高齢者がいる世帯」のデータをみると、世帯主が60~64歳で無職の場合は月の支出が26万8628円、65~69歳は26万7446円。なので、リタイア後の支出は月額27万円程度といっていいんじゃないかしら。65歳まで働いている世帯の場合は、月35万4334円とやや多くなるわね。

貴之 なるほど、じゃあうちも平均並みっていう想定なんだ。

佳奈 他方、収入については、貴之さんが65歳以降の年金収入が手取りで月額16万6000~17万円ほど、知美さんは6万~6万4000円ほど。合計で約22万7000~23万4000円になるわね(年齢により健康保険の掛け金が変わるため、手取り額が変動)。結果、貴之さんが65歳以降は月に4万~7万円程度の赤字が出る結果になったわ。

知美 ねえ、よく見ると定年直後の赤字額、すごいことになってるわよ。61~64歳の4年で1350万円ものマイナスが出てる。これだけで退職金の残りを使い切っちゃうのね。

貴之 やっぱり老後貧乏まっしぐらか~。すまない知美、俺がふがいないばっかりに!

佳奈 えーと、ちょっと落ち着いてもらってもいいですか? 乗り切る方法はちゃんとありますから。

65歳まで働けば82歳まで貯蓄が残る

佳奈 貴之さんの会社は、定年後の雇用延長制度があると伺っています。65歳まで働けば、年金受給までの「無収入期間」の貯蓄の取り崩しをかなり防げるので、生活が破綻するリスクを大きく下げられるはずよ。

貴之 そっか、だから高倉さんも再雇用で働き続けるんだな。たしか、「年収は大きく下がって300万円ほどになっちゃうけど、働けるだけありがたいよ」って言ってたような。

佳奈 収入が得られるのはもちろんのこと、厚生年金の加入期間が延びるので、年金受給額が増えるのも見逃せないわね。貴之さんの場合、年間5万6000円ほど受け取れる年金が増える計算になるわ。このほか、会社の健康保険に継続加入することになるから、会社が保険料を半分負担してくれるというメリットもあるわよ。

知美 それは家計にも優しいな~。

佳奈 貴之さんが65歳まで働くとした場合のシミュレーションがこちら。給与は年収300万円で、基本生活費は60~64歳までは現役時代の水準を維持するものと想定。さらに知美さんは60歳でパートを辞めてリタイアするっていう前提で計算したわ。これだと貴之さんが82歳まで、貯蓄が残る計算になるわね。

図4 65歳まで雇用延長で働いた場合の生涯収支。妻は60歳時点でパートを退職すると想定
図5 65歳まで雇用延長で働いた場合(妻は60歳で退職)の金融資産の推移。貴之さんが82歳までは金融資産が残る

貴之 うーん、定年を迎えたらのんびりしたいと思ってたけど、そこまで甘くはないか。でも、僕が寿命を迎えるまでは何とか持ちそうだな。

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