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ESG投資 同じテーマの投信でも運用成績に差 ESG投資の基本(下)

2017/10/15

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環境や社会問題、企業統治への取り組みを基準に企業を選別して投資する「ESG投資」を学ぶ満。ESG評価が高い企業は長い目で見た成長が期待できそうです。早速、未成年向けの少額投資非課税制度(ジュニアNISA)でESG投資を始めたいようです。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中) 筧満(かけい・みつる、15) 

 僕にもESG投資はできるかな?

幸子 企業が開示している資料からESGへの取り組み状況をある程度まで知ることはできるけど、ESG投資で実績を持つ運用会社のコムジェスト・アセットマネジメント代表の高橋庸介さんは「個人が入手できる情報でESGの取り組み状況を把握するのは難しい」と話すわ。プロが運用する投資信託を購入するのが現実的ね。

 どんな投信があるの?

幸子 ESG投資の考え方を取り入れた投信は実はたくさんあるの。2000年くらいから商品化され企業の社会的責任(CSR)を基準に投資する投信も当てはまるといえるわ。環境問題、教育や福祉、女性の活躍促進などに取り組む企業に照準を絞った投信もあるのよ。

良男 「良い会社」は長い目で成長するから、どの投信ももうかるのかな?

幸子 一口に「ESG投資」といっても投信によって基準も方針も様々なの。気になる投信があれば、目論見書や運用報告書などを読めば、どんな投資対象を何を基準に選別しているかがわかるわ。自分が応援したい企業が入っているかなど、考え方が近い投信を選ぶのがいいけど、独立系ファンドコンサルタントの吉井崇裕さんは「どんなテーマで運用していても、やはり投信は運用成績がすべて。過去の成績を見て判断すべきだ」と強調しているのよ。

 過去の成績はどうなの?

幸子 例えば、社会的責任投資(SRI)で代表的な3本の投信の過去17年の運用成績を比べると、3本とも基本的には株式市場に似た動きをしているの。ただ「朝日ライフSRI社会貢献ファンド」「損保ジャパン・グリーン・オープン」の2本と「日興エコファンド」を比べると、10年ほど前から徐々に差が広がっているわ。

良男 なぜだろう?

幸子 朝日ライフの組み入れ上位3銘柄は良品計画、セリア、ニトリホールディングス(9月22日時点)。これに対して日興エコファンドはトヨタ自動車、NTT、三井住友フィナンシャルグループ(8月31日時点)と日本を代表する大企業が並んでいるの。大型株は売買代金や取引量が大きいので、東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価に似た緩やかな値動きになりがちなのよ。

 本当だ。同じテーマでも運用成績が違うんだね。

幸子 女性の社会進出をテーマにした投信では短期間でも運用成績に特徴が出ているわ。それぞれ15年に設定された大和証券投資信託委託の「女性活躍応援ファンド」と明治安田アセットマネジメントの「明治安田女性活躍推進ファンド」は名前はそっくりだけど、中身は全くの別物なの。投信評価会社のモーニングスターは、大和は中小型の成長株に投資する「国内小型グロース」、一方の明治安田は大型株中心の「国内大型ブレンド」と分類しているわ。

 組み入れ銘柄は?

幸子 8月31日時点の上位3銘柄は大和が知名度が比較的低い企業なのに対し、明治安田は大企業がずらり。大型株中心の明治安田のほうがやはり値動きは緩やかで、大和と成績に開きが出ているわ。ただ一概に中小型株の投信がいいとも限らないのよ。流動性の低い企業の株価は値動きが大きく、急落の恐れもあるわ。それぞれ特徴と過去の実績を見るのが重要よ。

良男 ほかの投信は?

幸子 吉井さんが特に注目するのが、環境問題など社会的な課題の解決を目指す企業に投資する「ブラックロック・インパクト株式ファンド」。販売手数料が無料で信託報酬も低いのが特徴で、運用会社の意欲が感じられるそうよ。アジアや豪州の株式を組み入れている「シュローダー・アジアパシフィック・エクセレント・カンパニーズ」にも着目しているわ。成長率が高い半面、企業の情報開示が進んでいない新興国市場ではリスク回避のためにも先進国以上にESG評価が重要になるわ。

 新たに設定される投信も増えているの?

幸子 今年に入ってもESGの考え方を取り入れた投信が続々と登場しているわ。今月16日にはニッセイアセットマネジメントから「ニッセイ/コムジェスト新興国成長株ファンド」が新しく設定される予定なの。コムジェストのファンドはこれまで全世界で年率11%程度の好成績を続けている実績を持つので期待されているわ。1月に設定されたキャピタルアセットマネジメントの「CAM ESG日本株ファンド」も緻密なESG評価と成績の堅調さで好評よ。

 日本でも個人投資家がESG投資に取り組める環境が整いつつあるんだね。

幸子 まず欧州で定着したESG評価だけど、日本でも投資家の間でESG評価という考え方が根付けば、企業は社会的責任をより意識した経営をするようになって「良い会社」が増えるわ。吉井さんも「個人投資家が投信の投資企業や運用方針を見極めて淘汰していくことが、ESG投資を一時的なブームに終わらせないための重大な鍵となる」と指摘しているわ。

■商品選び、厳しく見極めを
ファンドコンサルタント 吉井崇裕さん
ESG評価という概念は一つ間違えると投信の運用成績の足かせにもなりかねません。未熟だけれど成長期待の高い企業への投資機会を逸する恐れがあるからです。だからこそ、運用者がどんな企業にどんな方針で投資しているかをしっかり見極める必要があります。
投信を選ぶ際には少なくとも3年分の実績を確認しましょう。新規設定された投信でも母体の「マザーファンド」は以前から運用している場合や、同じ運用会社が同じ手法で運用する類似のファンドが存在することもあるので、その実績を確認するのも手です。ESG投資という社会的な意義を重んじる投信とはいえ、あくまで投資商品で、ESG評価が運用成績に反映されるのが理想。個人投資家がシビアに見極めることがESGの市場を盛り上げることになります。
(聞き手は岡田真知子)

[日本経済新聞夕刊2017年10月11日付]

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