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「牛乳は動脈硬化を促進」は誤解? 検証で見えたこと

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2017/10/19

実際、欧米を中心とした前向き研究(健康な人の生活習慣などを調査し、この集団を未来に向かって追跡調査して後に発生する疾病を確認する手法)を複数集めて行った解析(メタアナリシス)では、牛乳は虚血性心疾患に対してニュートラルかやや予防的に働くことが示されたという[注4]。残念ながら日本人での報告はまだ見られていない。

■血圧を下げる栄養素カリウムを豊富に含む

以上は虚血性心疾患の話だが、同様に牛乳と脳卒中の関連を調べたメタアナリシスでは、牛乳を習慣的に飲むほうが脳卒中に予防的に働く傾向が見られたという[注5]。「このメタアナリシスの対象となった研究のうち、日本や中国など東アジアで行われた6つの研究では、明らかに脳卒中に対する予防効果が見られました」(岡山さん)

では、牛乳は飽和脂肪酸が多いにもかかわらず、それを習慣的に飲むことがなぜ脳卒中の予防に貢献するのだろうか? 岡山さんは「コレステロールが原因の動脈硬化は太い血管にしか起こらないため、心臓の太い血管が影響する虚血性心疾患と違って、細い血管に主に起こる脳卒中では脂質異常はあまり影響しないのです」と説明したうえで、「あくまでも推測にすぎないが、牛乳の脳卒中予防効果を考えるうえで注目すべきは、カリウムの健康効果だ」と言う。

カリウムは、血圧を下げる働きがある栄養素で、不足すると高血圧や脳卒中にかかりやすくなることが分かっている。世界保健機関(WHO)では1日当たり少なくとも3510mg(3.51g)の摂取を推奨しているが、日本人の平均摂取量は2g程度と不足しがちな栄養素の一つだ。カリウムには、余分なナトリウムを排せつする働きもある。食塩と血圧に関する国際共同疫学研究「INTERSALT」によると、食事中の「ナトリウム(塩分)・カリウム比」[注6]は日本、韓国、中国がワースト3を占めており、塩分摂取量を減らしてカリウムを増やすのが東アジアに共通の重要な課題となっている。

牛乳にはカリウムも多く含まれており、高血圧や脳卒中の予防効果が期待できるとも考えられる(c)Valentyn Volkov-123rf

カリウムは野菜や果物に豊富に含まれているが、牛乳にもコップ1杯(200cc)当たり約300mg含まれている。牛乳摂取量を増やしてカリウムを補うことで、余分なナトリウム(塩分)の排せつを促し、高血圧や脳卒中の予防効果が期待できるのではないかというのだ。

ただし、牛乳はさまざまな栄養素を含む複雑な物質だ。「私もカリウムだけの影響とは考えていません。ただ、東アジアではナトリウム摂取量が多いのに対してカリウムの摂取量が低いことは事実。また、ナトリウム摂取割合の多い人は脳卒中が起こりやすいことも分かっています。脳卒中予防に対して、牛乳によるカリウムの補充効果は大きいのではないかと推測できます」(岡山さん)

超高齢社会の中で大きな課題となっている要介護。その状態に陥る原因として、脳卒中は認知症に次いで2番目に多く、要介護度の高いケースでは最も多い原因となっている(平成28年国民生活基礎調査)。脳卒中を予防することは、介護予防につながる可能性も高い。

「介護予防に関してはより詳しいエビデンスが待たれますが、少なくとも食習慣改善の手段の一つとして、牛乳は注目に値するでしょう」(岡山さん)

特に塩分摂取は味覚が鈍感になり濃い味を好む高齢者に多い。60代以降で「あまり牛乳を飲んでいない」という人は、コレステロール値が上がることを恐れて牛乳を控えるよりも、栄養バランスのとれた食事を実現する選択肢の一つとして、牛乳をもっと活用してもよいかもしれない。

[注1]Keys A. Circulation. 1970;41:1-195.

[注2]Okamura T, et al. J Intern Med. 2003;253(2):169-80.

[注3]Nagaya T, et al. Serum lipid profile in relation to milk consumption in a Japanese population.J Am Coll Nutr. 1996;15:625-9.

[注4]Elwood PC , et al. European Journal of Clinical Nutrition. 2004;58:718-24.およびQin LQ, et al. Asia Pac J Clin Nutr. 2015;24(1):90-100.

[注5]de Goede J, et al.J Am Heart Assoc. 2016;5(5).

[注6]カリウムに比して、ナトリウムの摂取量が高いほどナトリウム/カリウム比は高く、高いほど循環器病死亡リスクが高いとされる。

岡山明さん
生活習慣病予防研究センター代表。一般社団法人適塩・血圧対策推進協会代表理事。1982年大阪大学医学部医学科卒業。同大学医学部助手、滋賀医科大学医学部助教授、岩手医科大学教授、国立循環器病センター予防検診部部長等を経て2014年より現職。専門は循環器疾患の要因、予防に関する研究や生活習慣病の予防のための健康教育の方法論、その普及に関する研究。

(ライター 塚越小枝子)

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