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見て楽しいスポーツ施設に 「余分な規制なくしたい」 鈴木大地・スポーツ庁長官、自治体や大学に期待

2017/10/16 日経MJ

スポーツ庁長官の鈴木大地氏は「国民のスポーツ意識の高まりを五輪のレガシーにしたい」と意気込む

ソウル五輪の背泳ぎ金メダリストの鈴木大地氏がスポーツ庁長官に就任してから2年。2020年の東京五輪を旗頭にスポーツ経済の拡大、健康増進に伴う医療費の抑制などを訴え、現場を飛び回る。国民の運動不足解消へスニーカー通勤を提唱。「予算1兆円をもらえたら、2兆円の医療費を抑制できる」など大胆な発言も飛び出した。(聞き手は日経MJ編集長 中村直文)

――スニーカー通勤を提唱しましたね。長官も早速履いているようで。

「今日(10月2日)に宣言して、キックオフイベントやデモイベントをこなして来年3月に本格スタートです」

――スーツとスニーカーだと、組み合わせによってはダサい。スポーツ庁ならスーツもやめるというのはどうでしょう。

「ではそう書いてください(笑)。ネクタイは肩も凝るし、むしろジャージーで来たいぐらいで。外出しない人はジャージーでいいんじゃない」

■部活に外部の指導者の支援必要

――長官は長時間のバサロスタートなど現役の水泳選手の頃から個性派でならしました。これからはスポーツを含めて個性がさらに重要です。

「その通りです。ダイバーシティー、オーダーメードのライフスタイルなので。長官就任時も安倍(晋三)首相からクリエーティブにやってほしいと言われました。すべてとは言いませんが、何でもありで。スポーツ庁は風通しもいいので、ここを起点に霞が関の雰囲気を変えたいですね」

「1兆円のスポーツ予算をもらえたら医療費を2兆円下げますよ」と話す鈴木氏

――以前、著名なスポーツライターが「体育は軍事調練の延長」と廃止を主張していました。やはりスポーツと体育は違いますか。

「文部科学省には体育局がありました。今はスポーツ庁内に学校体育室があって、立場的には逆転したと(笑)。確かに体育が軍事調練から派生した面はありますが、体育がスポーツに果たした役割も大きくて。規律や礼節、教育としての体育の役割は、海外からは評価もされています」

――海外でですか。

「運動会や保健体育の授業も輸出しています。日本でももう少し体を動かす楽しさを前面に出したい。もっとも学校の体育は制度疲労を起こしている面もあります」

――制度疲労とは。

「特に部活動ですが、学校教育の一環との位置づけから教員の負担が大きいのです。45%の教員が担当競技の経験がなく保健体育の先生でもない。部活動を継続させるには、外部の指導者に手伝ってもらわないといけないと思います」

――少子化でも世界レベルのアスリートは育っているように見えます。

「増えていると思います。水泳も私が日本水泳連盟の会長のときはそうでした。指導法も変わってきました。20年の東京五輪で大きな目標を持った人たちの気持ちが全然違っているのでしょう」

――やはり卓球や野球、サッカーも世界レベルに。部活動の存在は大きいですね。

「部活もそうですが、水泳はどちらかというとクラブ文化です。テニス、体操、卓球も。クラブはお金を頂いて指導するわけですから成果を出すための緊張感を伴います。一方、サッカーでは本田圭佑選手や長友佑都選手は部活で活躍していました。色々なパターンが共存していけばいい」

■大学の施設は観戦中に飲酒できず

――一方で、部活文化が強すぎて体育館や競技場など、やる人が中心の施設です。見る人(ユーザー)の世界をもっと配慮しないとスポーツ文化の広がりに限界もあるとの意見があります。

「スポーツの発展には『する、見る、支える』の観点が欠かせません。手軽にやるには体育館など身近な公共施設が向いています。一方で、見る文化としてはゼビオのような仙台市のアリーナがありますね。見る施設については音響や巨大映像とか、ショップとかね」

スポーツ庁が提唱するスニーカー通勤は、すでに一部企業の間で始まっている(伊藤忠商事)

「バスケットボールでも、青山学院がBリーグ『サンロッカーズ渋谷』のホーム施設になっていますが、大学だから飲酒できないんですよね。盛り上がっているけど校内大会的な雰囲気で、もう少し柔軟になるといいのですが」

――大学スポーツがもっと盛り上がると経済効果も大きいでしょう。

「今は高校野球は甲子園や神宮、ラグビーは秩父宮といわゆる『聖地』での戦いです。それはそれでいいのですが、ホームアンドアウェーで頻繁に行き来があれば、さらに盛り上がります。規模の大きい大学がそんな方向で施設を造る文化が生まれるといいですね」

「施設の運営や建設で余計な規制を取っ払うこともスポーツ庁の仕事です。興味がある自治体に、資金集めや運営方法について様々な情報を提供していきたい」

――東京五輪に向けて抱負を。

「スポーツビジネスを20年に今の2倍弱の10兆円、25年に15兆円に引き上げることです。五輪は国民のスポーツ意識を高めます。これを一つのレガシーにし、健康増進につなげ約40兆円の医療費を下げる。1兆円のスポーツ予算をくれれば医療費を2兆円下げますよ」

――財務省に伝えたのですか。

「いや、僕が言っているだけです」

鈴木大地
1993年順天堂大院修了、順天堂大教授や日本水泳連盟会長などを経て、15年10月から現職。88年ソウル五輪競泳男子100メートル背泳ぎで、金メダルを獲得。スタート時に潜水して水の抵抗を弱める「バサロ泳法」を得意とした。千葉県出身。50歳。

[日経MJ2017年10月9日付]

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