マネー研究所

Money&Investment

親の財産管理は任意代理で 預金引き出しや証券移管 親の判断能力次第で成年後見も

2017/10/15

PIXTA

 親が高齢になると、有料老人ホームの入居一時金や医療費の支払いなどで、まとまった金額を引き出したり振り込んだりする場面が増える。親が自ら金融機関に出向くのが難しい場合、家族が代わりに金融取引をするためには「任意代理」の仕組みを使うと便利だ。いざというときの備えとして知っておきたい手順や注意点をまとめた。

■委任状を定型化

 親の口座から預金の引き出しなどが必要な場合、その都度「委任状」を金融機関に届ける手もある。しかし手間がかかるし、緊急時も不安だ。

 このようなとき「任意代理」の手続きをしておけば、代理人である子どもの判断で親の預金口座から多額の出金をしたり、親名義の株式を売却したりできるようになる。手続きの流れを図Aに示した。

 まず、親の取引口座がある銀行、証券会社の店舗に出向き、代理人届け出書類をもらう。書式は金融機関によって様々だが、基本的には口座名義人である本人(親)と代理人(子ども)の住所、氏名などを記入・押印し、代理の内容を記載する。原則自書だが親が書けないなら、「代筆も可能」(三井住友銀行)だ。

 代理の内容とは、本人の取引のうち代理人が「何を、どこまでできるか」の範囲を明確にするもの。一般的には金融機関が定型化し、届け出書類に記載している。

 ただ、内容は金融機関によって多少異なる。例えば、みずほ銀行は「代理人に委任したい預金口座の一切の取引ができる」としているが、三井住友銀は1回当たりの出金限度額を届け出る。

 株式、投資信託、債券などの証券取引では「取引銘柄、売買時期まで代理人の判断でできる」(野村証券)としているところが多い。ただ現物取引に限定し、「信用取引は代理できない」(SMBC日興証券)という。

 金融機関の担当者による面談もある。「本人と代理人の意思確認と代理の内容を確認するため」(三井住友信託銀行)だ。本人、代理人がそろって店舗に行く方法のほか、親の自宅や介護施設などに金融機関側が出向くこともある。確認が終わると代理取引が可能になる。書類に不備などがなければ、手続き自体は1時間程度で済むという。

■口座解約はできず

 ただし、銀行では「口座解約は代理人に委任できない」(みずほ銀行)というところが多い。証券会社も同様だ。解約は本人が直接、金融機関に伝える必要がある。

 上場株式、上場投資信託(ETF)など価格が変動する金融商品については、複数の口座に分散して保有するより、本人の口座間で移管(預け替え)をして、ひとつの口座に集約したほうが管理が容易になるだろう。所定の手数料がかかることがあるが、移管先が手数料相当額分を負担し、実質無料で移管できるサービスもある(図B)。

 任意代理ができるのはあくまで親に判断能力がある場合だ。親の判断能力が低下すると、代理人の権限の裏付けとなる本人の意思が確認できなくなるからだ。その場合は成年後見制度を利用することになる(図C)。

 判断能力がほぼない場合は家庭裁判所が成年後見人を選び、後見人が財産管理を行う。子どもが選ばれる可能性もあるが弁護士、司法書士ら専門家が選ばれることが多い。引き続き子どもに代理人を務めてほしいなら、判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおく必要がある。

(M&I編集長 後藤直久)

[日本経済新聞朝刊2017年10月7日付]

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL