オリパラ

2020年から見える未来

ちぐはぐ禁煙、軌道修正 「路上」より「屋内」厳しく 加熱式たばこは公的機関で調査中、法施行までに判断

2017/10/19 日経産業新聞

完全禁煙の居酒屋も増えている(東京都中央区)

2020年の東京五輪・パラリンピック開催を控え、飲食店での対応などで注目される受動喫煙防止対策。対策の強化を軸とした関連法案の提出は17年6月に閉会した通常国会では見送られたものの、罰則付きの条例制定を目指す東京都の対応など今後の議論の行方に目が離せない。防止対策の考え方や海外と比べた日本の現状などを厚生労働省健康局健康課の正林督章課長に聞いた。

■面積30平方メートル以下の店は例外

――受動喫煙防止対策をめぐる背景や議論のポイントを教えてください。

「15年に受動喫煙防止を盛り込んだ『オリパラ基本方針』が閣議決定されてから議論が活発になり始めた。03年に施行された健康増進法で受動喫煙の防止は努力義務とされていたが、それでは取り組みの限界がみえていた。東京五輪・パラリンピックの開催が近づくなかで、16年10月に厚労省としてたたき台を作り、17年3月に基本的な考え方を示した」

「考え方では、施設ごとに異なる禁煙のあり方を盛り込んだ。小中学校や高校、医療機関は敷地内禁煙とし、公共交通機関ではバスとタクシーは禁煙とした。一方で、原則禁煙であっても、ホテルや企業の事務所など一部の施設には喫煙ルームの設置を認め、バーやスナックといった小規模な飲食店は例外として、喫煙を認める考えも示している。小規模店舗では公式見解で面積30平方メートル以下を例外とすることを打ち出している」

――先の国会では受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案の提出は見送られました。秋の臨時国会も冒頭での衆院解散・総選挙となり、審議の行方は不透明です。

「焦点となったのは、飲食店の扱いだ。自民党内で一部から『過剰な規制』との声が上がり、意見がまとまらなかった。飲食店をひとくくりに禁煙にするのではなく、店に『喫煙可能』『未成年の立ち入りを禁止する』といった表示をすれば十分だとの意見もあった。禁煙にすることで客足が遠のくことを不安視する飲食関係者も少なからずいるようだ」

■違反者には行政指導、従わなければ過料

――違反した場合には厳しい罰則があるのでしょうか。

「対策強化と聞くと、違反した時点で罰則と捉える人もいるかもしれないが、実際にはそうしたものではない。仮に違反した事業者がいた場合、まずは行政による指導や命令などで改善を促し、従わなかった際に過料という形となる。そうした点も含めて周知していく必要がある」

「(6月に閉会した)国会での審議は見送られたが、施行時期は19年9月に開催予定のラグビーワールドカップに間に合わせたい。(衆院解散で)国会での審議の見通しは不透明だが、国民への周知など準備期間を考えると2年間くらい必要なので、できるだけ早く法案を提出できるようにしたい」

――歴代の五輪開催国では、受動喫煙対策が実施されています。

「国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は10年に『たばこのない五輪』推進で合意した。それ以降の五輪開催国はカナダや英国、ロシアなど軒並み『屋内禁煙』を実現している。ホテルなど宿泊施設や飲食店での喫煙室の設置も禁じられており、屋内の喫煙に関しては海外の方が厳しいともいえる」

「一方で、海外では屋内での喫煙を禁ずる代わりに屋外での規制はない。対策は喫煙を禁止するものではなく、あくまで受動喫煙を防ぐという意味なので、理にかなっている。景観上の問題も無いわけではないが、屋外は煙が充満する屋内に比べて受動喫煙のリスクは下がる」

■路上規制している自治体と調整必要

――路上喫煙に関しては、東京都内では千代田区や新宿区、豊島区などが禁止しています。

「日本では全国の1割強の自治体が路上喫煙を規制する条例を持つ。国としては受動喫煙を防ぎたいわけなので、条例のある自治体に対して、屋内禁煙との調和が取れるよう働き掛けを始めているところだ」

――今回の受動喫煙対策のなかで、「加熱式たばこ」はどのように位置づけていますか。

「加熱式たばこは紙巻きたばことは異なり、熱した葉タバコから出る蒸気を楽しむ製品だ。火を使わないために煙や灰が出ないのが特徴で、日本たばこ産業(JT)などメーカー側も有害物質を軽減できるとしている。だが、全国的に普及し始めて間もないため、現在は受動喫煙防止の議論の対象から外している」

加熱式たばこの人気は高く、日米英3社による商戦が活発になっている(東京都中央区の「アイコスストア銀座店」)

「受動喫煙を防止する観点から現在、使用者がはき出す蒸気の影響を公的な研究機関に依頼して調べてもらっているところだ。規制の対象となるか、対象外となるかは影響を踏まえて法案の施行までに判断したいと考えている」

――東京都では5日、子どもを受動喫煙から守るための条例が可決・成立するなど、国に先行する形で受動喫煙対策に取り組む姿勢を示しています。

「国が受動喫煙対策を進める中で、自治体も同様の動きを進めてくれることは歓迎すべきことだ。東京都が先んじて受動喫煙対策に取り組んだ場合に、国の施策にどういう影響があるかは結果をみてみないと分からない。あくまで国としては速やかに対策を進めることができるよう取り組んでいきたい」

正林督章
1989年鳥取大医卒。都内の病院勤務を経て、91年旧厚生省入省。世界保健機関(WHO)での勤務経験もあるほか、健康増進法の制定、新型インフルエンザなどの感染症対策やがん対策などに携わる。15年から現職。54歳。

(湯前宗太郎)

[日経産業新聞2017年10月6日付]

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