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問題だらけの毎月分配 百歩譲って利点は(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

2017/10/10

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「毎月分配型ファンドは問題だらけだが、百歩譲って利点があるとすれば、それは毎月のキャッシュフローが計算できるということだ」

 銀行や証券会社が、投資家に毎月分配金を支払う「毎月分配型」の投資信託の販売を自粛するようになりました。金融庁が「顧客のためになる金融商品なのか」と問題視しているからです。「日本でも長期資産形成について、やっとまともな議論ができる時代になった」と、私はほっとしています。

■元本支払いで基準価格が下がる

 毎月分配型投信の問題点についてはこれまでもたびたび指摘してきましたが、改めて考えます。販売手数料や信託報酬が高いファンドが多いことも問題ですが、それだけではありません。私は多くの個人投資家に「運用利回りを誤認させていること」が最大の問題だと考えます。利益が出ていないときでも元本を払い戻して高分配を維持していることが、きちんと理解されていません。

 分配金利回りのランキング上位には、税引き前で年率の利回り20%を超えるファンドがずらりと並びます。ところが、そうした高分配ファンドの多くは、基準価格は3000~5000円まで落ち込んでいます。設定時の基準価格は1万円ですから半値かそれ以下になっているわけです。つまり、これらのファンドは元本払い戻しによって高分配を維持してきたのです。

 元本支払いによって基準価格が下がっていくという仕組みが投資家にきちんと理解されていません。分配金は本来、運用益を原資とすべきです。運用成績が良ければ分配金を多めに、悪ければゼロにすればいいだけです。しかしながら、毎月分配型投信の多くは運用成績が悪いのに過分な分配金を出し続けているのです。この結果、運用資産を取り崩すことになって基準価格が下落する事態に陥ります。これはいわゆる「タコ足配当」です。

■分配金を受け取るたび税金がかかる

 しかも、毎月分配金を受け取るとそのたびに源泉税(利益から出る分配金の20%)を差し引かれます。少し詳しく説明します。分配金が仮に毎月100円で、そのうち60円が運用益から、40円が元本払戻金から支払われるとします。この場合、源泉税は運用益からの分配金60円にかかります。60円の2割、つまり12円が源泉税として差し引かれます。100円の分配金を受け取って12円差し引かれ、手元に残るのは88円だけです。

 分配金のないファンドならば、中長期で運用に回して増やす複利運用ができます。これに対し、毎月分配型ファンドはわざわざ税金を支払うために、分配金を受け取っているようなものです。

 もっと残念に思うことがあります。毎月分配型ファンドを購入する投資家の多くが「分配金再投資型」を選択していることです。これはきわめて非合理な行動です。上述のように分配金に税金がかかり、その分再投資額が小さくなります。これも税金を支払うために投資しているようなものです。実はこうした事実に気づかないまま何気なく再投資を選んでいる人が多いのです。

 このように問題だらけの毎月分配型ファンドですが、百歩譲って利点があるとすれば、それは毎月のキャッシュフローが計算できるということです。まとまった金融資産を保有しているものの、毎月の生活費が年金では賄えず、資産を取り崩していく必要がある場合、毎月分配型ファンドを持っていれば、キャッシュフローを補うことができます。

 多くの人は月々いくらと決められた範囲で、生活費をコントロールするのに慣れています。そういう人が毎月分配型ファンドを購入するのは、理にかなった行動です。たくさんある金融資産から自由に換金して生活費に充てるスタイルだと、支出のコントロールが難しくなります。

■毎月不足する生活費を補うメリットも

 私はCFA(米国の証券アナリスト)資格を保有していますが、私が受けた検定試験の問題の1つを今でも覚えています。ある富裕個人の年齢、家族構成、金融資産保有額、年間の生活費などのデータが与えられ、最適な運用ポートフォリオを組んで提案するという問題でした。

 私が事前に受講した講習会では「そういう問題が出たとき、金利、配当金などの年間受取額が年間に必要な生活費と一致するように組むのが望ましい」と教えられました。したがって、私もそのように解答を作成しましたが、当時は納得していませんでした。「生活費が必要になれば、いつでも自由に金融資産を換金すればいいではないか」と考えていたからです。ただ、現実には支出の管理が困難ですので、試験の解答のように金利や配当金の年間受取額が年間支出と一致するようにポートフォリオを組めればベストだと思います。

 現在、日本の金利水準はきわめて低くなりました。残念ながら、利息や配当金だけで生活費を賄うのは難しくなってきています。ただ、退職金や遺産相続で、まとまった額の金融資産を持っている人もいます。年金だけでは不足する毎月の生活費を金融資産を取り崩すことで賄う必要がある人は、毎月分配型ファンドを選ぶ手もあるかもしれません。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。
窪田真之
 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(当時)入行。99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年所長。大和住銀では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。

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