「ソフィーの世界」や「世界がもし100人の村だったら」の翻訳者、池田香代子さんも同級生。西高時代の彼女は男子みんなの憧れ、マドンナのような存在でした。僕も彼女の存在は知っていましたが、言葉を交わした記憶はありません。それが卒業して30数年後に、ある雑誌の対談で再会。その後、出版社の企画で彼女と2年間、往復書簡し、「黙っていられない」というタイトルで出版しました。

池田さんは、西高時代の僕の印象を聞かれて「汚かった」とか「無頼」とかと答えていました。汚いと言われたのはショックでしたが、とりあえず覚えていてくれてよかった(笑)。それはさておき、彼女もまた自由な生き方をしていて、ミリオンセラーとなった「世界がもし100人の村だったら」の印税収入を全額、環境問題や平和の問題に取り組む団体に寄付しているんです。何かにこだわったり束縛されたりしないで生きているからこそ、思い切ってそういう行動がとれるのだと思います。

母校の後輩に話をする機会も増えた。

「がんばらない」を出版してから、同窓会や西高の関係者から声を掛けられ、卒業生や在校生の前で話をする機会が増えました。高校の先輩でタレントの芳村真理さんの司会で、800人くらい収容できる大ホールで講演したこともあります。今年もすでに西高で1回講演し、さらに西高創立80周年の記念講演会でも、全生徒と父兄を前に話をすることになりました。

在校生や若い卒業生に僕がよく言うのは、やはり、西高で得た自由の大切さを意識してほしいということです。

人間は本来、一人ひとりが自由です。また自由であるべきだと思います。ところが、最近の日本の社会を見ていると、何かに縛られたり、こだわりを捨てられなかったりして、自分の思う通りに生きられない日本人がとても多い。例えば、せっかく一流と言われる大学を出て優秀な政治家や官僚になっても、過度の忖度をして世論の批判を浴びてしまう。心の中では違和感があっても、自由じゃないから自分の正しいと思ったことをする勇気がないし、できない。自由というのは自分が楽しく生きるために大切なんです。

受験勉強もそう。人間はがまんや努力をするために生まれてきたわけではありませんが、自分がより自由になるためには、どこかでがまんや努力をする必要があります。受験勉強というのは、それ自体が目的ではなく、より自由で面白い人生を送るために、乗り越えなければならないハードルです。僕が西高で学んだそのことを、若い後輩たちにも伝えていきたいと思っています。

(ライター 猪瀬聖)

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