2017/10/12

Q:なぜスーツは首元が苦しいのでしょうか。

A:首の動きを制限するカラー(襟)は、高い階級に属する人々のシンボルでした。国王や貴族など指示を出す立場にある人は、臣下に命令するときに首がふらふらしていては威厳がないと考えられたからです。手首を絞るカフスについては、当時高級品だった白いリネンを目立たせるために使われたと考えられています。リネンは富の象徴だったのです。袖口からのぞく高価な布地は、肉体労働をする立場にはないという証しでした。カフスはその名残です。

Q:シャツの胸ポケットはグローバル基準で「あり」ですか。

講演には抽選で選ばれた約40人が参加した

A:シャツはもともと下着なので、西洋の基準では「ドレスシャツに胸ポケット」はルールから外れています。「鎌倉シャツ」で知られるシャツメーカーのメーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)が米ニューヨークのマジソン街に出店したとき、本場に合わせるために胸ポケットを廃止しました。とはいえ、ドレスシャツの胸ポケットは日本人にとっては不可欠なので、最近では日本人需要に応える形でポケットのついたシャツも一部作られてはいるようです。

■最上級の晩餐会は「ホワイトタイ」で

Q:タキシードと燕尾(えんび)服はどちらが格上ですか。

A:燕尾服の方が格は上です。公式の晩餐会(ばんさんかい)の招待状に「ホワイトタイ」の指定がある場合は、男性は燕尾服を着ます。これが夜会服としては最上級です。シャツは胸の部分に布を重ねた「スティッフブサム」で、(カフリンクスのような)「スタッズボタン」を使うものを着ます。パンツは側章付きなど細かくルールが定められています。晩餐会で「ブラックタイ」の指定があるときのドレスコードは、米国でタキシード、英国で「ディナージャケット」と呼ばれている服です。これが夜の準礼服となります。ちなみに、昼間の正装は「モーニングコート」。昼間の準礼装は「ディレクターズスーツ」です。

中野香織さん
 服飾史家、明治大学国際日本学部特任教授。東京大学大学院修了。元英ケンブリッジ大学客員研究員。男女ファッション史から最新モード事情まで、研究・執筆・講演を行っている。著書に「紳士の名品50」(小学館)、「モードとエロスと資本」(集英社新書)ほか多数。公式HP http://www.kaori-nakano.com

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