三角か俵か、のりの巻き方は? 家ごとに違うおにぎり
秋の運動会の食べ物(4)
運動会の日の給食、意外に多くの地域で実施されていることが前回までの情報で分かった。一方で、家庭から持参するのではなく、仕出し弁当が配られるケースもあるようだ。
今どきの学校では家庭の事情でお弁当が用意できない子がいてはイケナイとかで、手作りお弁当は避けるところもあるんですね。ちなみに、父兄は入れません(こばりんさん)
確かにどこの家庭でも弁当が作れるとは限らない。そこのところはわからないこともない。でも遠足のときは弁当持ってこいだしなあ。一貫しない感じがちょっとする。
同級生の中でも町内会の役員仲間で酒飲みとわかっている家族を隣に呼んで、まだ運動会が始まる前からウーロン茶か麦茶を飲むようにして助走開始。そうしているうちに周りに他の家族が詰まってきて、一時は歩く隙間もなくなったのでした。
が、不思議なことにひとつまたひとつとシートが畳まれ、残るは我々2家族のみとなっていました。本当のお昼に子どもたちが戻ってきて、その理由がわかりました。そうです、やたら虻(アブ)がいっぱいいるのです。
よく観察すると膨大な数の虻が紹興酒上空を旋廻しているのです。その後は飲まないときはコップにふたをかぶせる、ポットの口はふき取るという原則を徹底して、結局虻の大群の中で宴会は終了したのでした(ニューヨーク12年のおいちゃん)
アブなかった!
デスク アミー隊員、野瀬さんの座布団全部もってって!
商売をしているので応援に行けないお母さん。そのお母さんが作ってくれた弁当には励ましの手紙が入っていた。いいなあ、この話。今治出身だから、せんざんき。いいなあ、これも。
こんな運動会の昼食もある。
うーん、ある意味でうらやましい。運動会で冷やし中華というのはなかなかできる技ではない。
我が家は俵型で裏返さないいなり、細巻き、三角おむすびでした。三角いなりや俵型おにぎりはある意味カルチャーショックでした。
他人のうちの食文化がほの見えた、そんな運動会の食事も東京オリンピック以降は仕出しの助六寿司におかずを1品か2品持ち寄る形になっていました。高度成長時代、母親たちも外で働くことが多くなったためかと思います。
運動会が地域の祭りから学校行事の一つに埋没していく東京郊外の一過程だったのかもしれません(太ったオオカミさん)
「運動会が地域の祭りから学校行事のひとつに埋没していく一過程」という洞察は鋭い。運動会が地域の祝祭だったころは……。
小学校区の中のさらに小さな地区、大字にあたるものですが、その大字の「運動会」です。多くが農家だったからこそ、そんなイベントが成り立ったのかもしれません。
運動会は地区対抗で争われます。だから10チームくらいはあったでしょうか。この「地区」とはいわゆる小字のことで、回覧板もこの地区ごとに廻ってくるし、葬式を出す時の手伝いも同地区なら1家に1人出ることになっている。お嫁さんを迎える時に饅頭をくばる先などもまずはこの小字から。
運動会の日はオッサンもおばさんも子どもたちも、普段は半分寝たきりみたいになってるお年寄りとかも、とにかく動けるものはほぼ総出で集まってきます。寝てるだけの赤ちゃんも飼い犬までも一緒に連れてきて、一種の民族大移動です。
地区ごとに決められた区画にレジャーシートを敷き詰めるので、周りじゅう近所のオッサンおばちゃんばっかりです。シートの境目が家の境目なんてことはなく、みんな一緒くたで寝っ転がったりしてます。
朝っぱらから飲み食いしながら競技に参加したり応援したり。当然のごとく座るやいなや酒瓶が開くので、オッサンは千鳥足でバトンリレーしてたりするんです。おばちゃんは話に花が咲きすぎて競技を忘れ、本部から呼びに来られて慌てて出て行ったり。子供達は段ボールを入手して勝手に斜面滑りに興じたり、別の地区の友達のエリアに遊びに行っては軽い非日常(←ヨソの地区だからってだけでソワソワ)を楽しんだり。楽しかったなあ(ちろこ@札幌さん)
ちろこさんの郷里、和歌山での思い出である。地域が元気なら地域の行事も元気。
私の子ども時代の日本はまだ貧しかったが、貧しいなりに楽しい思い出がある。
北海道ではこの時期、運動会以外の行事が盛ん。
お母さんはお弁当つくりに大奮闘していたものですが、最近ではスーパーやコンビニで「運動会用オードブル」が売り出されるほど。
秋の行事といえば「炊事遠足」でしょうか。調理用具と材料を持って出かけ野外で料理を作って食べるというもの。ジンギスカン希望者続出で「ジンギス禁止令」が出され、カレーライスや豚汁を作ったことを思い出します。ススだらけになった鍋の後始末がやっかいでした(札幌生まれ札幌育ち道産子三代目雪あかりさん)
北海道名物「炊事遠足」。東北の芋煮会、愛媛・大洲のいもたき。秋の屋外料理は楽しそう。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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