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白河桃子 すごい働き方革命

役員でも減収あり? 評価改革は経営層から始めよう カゴメ CHO(最高人事責任者) 有沢正人執行役員インタビュー(前編)

2017/10/11

有沢さんは人事部門が制度の運用にまで責任を持たなければならないという(写真:吉村永)

白河 しかし、従来より手間や時間もかかりますよね。

有沢 そこの手間暇は惜しんではいけません。カゴメでは、課長に昇進させる際は、必ず経営者が面接します。自社の将来を担う人材を、経営者自身の目できちんと見て、質疑応答をして確かめる。経営者の視点で昇進をさせるようになったことが、人事改革の中でも大きく変わったところです。

 そうすると、今までは上司にあった判断責任を、社内全体で持つようになりますので、みんな経営に対する参画意識が出てきます。

■評価制度の改革は「上」からすべき

白河 カゴメでは、評価改革を徹底するために役員も評価対象としていて、時には報酬が下がることもあるそうですね。役員でも安穏としていられない。

有沢 私が入社してから、役員の評価制度をつくりました。

白河 他の会社には、そういった制度はあまりないですよね。

有沢 そうですね。あるいは、役員の評価制度があったとしても、それは名ばかりシステムで、結局社長が独断で決めてしまうケースが多いのです。

 しかし、カゴメは逆でした。当社では、まず役員の評価改革から着手したのです。なぜ上からやるのかというと、全社の改革をやることが最終目的だからです。

 よく、下の人の給料から変えていくとか、人事制度も下のポジションから進めていくと話す人が結構いらっしゃいますが、私は、それは絶対に違うと思います。

 そんなことをやっても意味がありません。「上が変わらないのに、なぜ自分たちだけが変わらなきゃいけないんだ」という不平不満のほうが強くなって、むしろ改革がやりにくくなるのです。

 私たちは、役員の報酬制度について、具体的には、固定報酬と変動報酬の比率を変え、変動部分を大きくしました。ステークホルダーに対する経営責任を明確にするためです。これは、経営者としては当たり前のことです。

 当然ですが、上の立場ほどハイリスク・ハイリターンです。分かりやすくいえば、下の立場ほどローリスク・ローリターンです。もし、改革を下の立場から着手すると、下の人にリスクを押し付けることになってしまいます。それは間違いだと思うのです。

白河 とはいえ、既得権益がある経営陣から理解を得るのは難しいでしょうね。

有沢 ええ、我々も大変でした。上から改革をするためには、勇気と覚悟が必要です。人事として、勇気と覚悟を持って、経営陣に進言する。一緒になって改革をしましょう、と。人事だけではなくて、これは経営課題なんですよということを、根気強く伝えていくのです。

 上の理解を得るためには、なぜ評価制度を変えなければならないのかというロジック、そして現場ではこういう問題が起こっているというファクトを伝えることが必要です。

 もう一つ、カゴメのケースで言えば、海外の人事改革から着手したことが奏功しました。私が入社してから6カ月間、日本と海外を見てきました。そのとき、人事というインフラが皆無だった海外から改革を進めて成功体験にすれば、日本の改革も進めやすいのではないかと思ったのです。

白河 海外で実績を作って、その実績でもって日本を説得するというわけですね。

有沢 そうです。外堀から埋めていく作戦です。ただし、他社では日本から改革して海外に着手するケースもあります。やり方は、さまざまですね。

 いずれにしても、人事は経営そのものだという意識を持たなければ、「人事=オペレーション」で終わってしまいます。すると、従業員の目には「オペレーションをする人事」としか映らないから、人事の言うことを聞いてもらえなくなってしまいます。人事が制度をつくっても、「どうせ、また変えるんだろう」「従業員のための制度ではないよね」と受け取られてしまうんです。

 人事は、権限を持つかどうかは別として、きちんと機能させなければなりません。制度をつくるだけでなく、運用まで責任を持たなければならないのです。そのためには、経営陣とともに改革に取り組み、経営陣から変えていくことが重要だと私は考えています。

(後編では、労働生産性の適切な評価方法、人事が忘れてはならない視点などのお話を伺います)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「婚活時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 森脇早絵)

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