
それは「出来事」に対する当人の「受け取り方や捉え方」だ。その結果、ストレス反応に違いが生じるのだと吉野さんは話す。これは米国の臨床心理学者、アルバート・エリスの「ABC理論」(「論理療法」という心理療法の1つ、図3)として知られている。
例えば、仕事で成果が出なかったとしても、「これはチャンスだ」「失敗に終わったが、次につながる課題が見つかった」「これ以上の試練はないはずだから、ここから頑張ってみよう!」など、前向きに捉える人はストレスに強い。つまりポジティブ思考であるか否かだ。逆に「結果が出ないことは恥ずかしい」「なんて自分はダメなんだ」と後ろ向きに捉える人は気持ちが沈み、ストレスに弱いケースが多いという。
物の感じ方・捉え方は、性格や育った環境によるものも大きいが、トレーニング次第で変えることは可能だと吉野さんは話す。
「ただし、『出来事』には自分でコントロールできること、できないことがあります。コントロールできないことに時間を費やし、悩んだり不安に思ったりしてもムダ。コントロールできることだけを合理的に考えて行動する。実際に日々の仕事の達成感や、自己成長の感覚を大切にする人ほど、激務を乗り切り、結果も出しているように思います」(吉野さん)
合理的な思考に転換する習慣とは?
とはいえ、適切な睡眠時間を確保できないほどの労働は健康障害の原因になり、合理的な考え方ができなくなれば本末転倒だ。そうなると、メンタルヘルス不調のリスクが高まる。吉野さんは「5~6時間といった最低限度の睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めることが大事。その上で、『ストレスに強くなる習慣』を持てばいい」と話す。