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安藤忠雄さん、未来への提言「青いりんごであれ」 半世紀の歩みたどる展覧会

2017/10/3

建築家・安藤忠雄氏のこれまでの活動を紹介する展覧会「安藤忠雄展―挑戦―」が東京都内で開かれている。独学で建築を学び、1969年以来、半世紀にわたって挑戦的な建築を発表してきた安藤氏。展覧会を通じて伝えたい思いを聞いた。

今回の展覧会では初期の代表作から仏パリや大阪市で進行中のプロジェクトの建築模型やスケッチに至るまで約270点が並ぶ。展覧会場の屋外テラスには代表作の一つ「光の教会」(大阪府茨木市)を原寸大で丸ごと再現するユニークなしかけも用意した。

――展覧会を通じて伝えたいことは何ですか。

「こんなばかなことをするやつがいるのかと感じてもらえるような展覧会にしたい。元気の良い若者が何かを感じてくれたらいい」

「光の教会」は正面の十字架部分から光が降り注ぐ(大阪府茨木市、1987~89)

「いま日本の国は元気がない。日本を時代ごとに年齢で例えると、1960年代が20代、70年代が30代、80年代が40代、90年代が50代だと私は思っている。(20代と位置づけた)60年代は社会も私も含めてめちゃくちゃおもしろかった。(90年代である)50代は蓄積ばかり考える。企業に例えると売り上げと利益だけとか内部留保といったように。そうなるとだんだんおもしろくなくなってきて、それがいまだ。学生たちもそうなってしまっていると感じている」

「会社は売り上げと利益を追い求めて内部留保をする。だけど本当は我々の社会はそこに住んでいる人たちが豊かで楽しく生きる社会を作るために企業があるのではないかと思っている。それをカバーするのは創造力だ。芸術と科学ががんばって存在感を高めなければならないと思って展覧会をした」

青いりんごであれ

「りんごはいつまでも青くなければならない。『あの人はいつまでも青いな』というようにみんな青いことを嫌がるが、私はいつまでも青い方がいい。成熟しないでいたい」

「私はみんなに嫌われている。建築界にも社会にも嫌われているが、それでもおもしろいなと言ってくれる人が時々いる。そう言ってくれる人が10人に1人でもいればいい。だから『光の教会』を展示(再現)する。最初、美術館側には反対されたのだが」

会場の屋外テラスの展示は、大阪府茨木市にある「光の教会」が同じサイズのコンクリートで丸ごと再現されている。コンクリート打ちっ放しの壁に黒の床というシンプルな造りの中に正面の十字架の窓から光が差し込む。本物の光の教会には十字部分にガラスが施されているが、今回の展示は安藤さんの構想にしたがって、ガラスを取り払った。教会の中にたたずむと、外からの光や風を直接感じることができる。

■建築とは体験

19年の開館に向けて計画が進む大阪・中之島の子ども向け図書館の完成イメージ図

安藤氏は「建築は見るだけでなく体験するものだ」と語る。「光の教会を体験することで建築っておもしろいなと若者に感じてもらえたらいい」と望んでいる。

――展覧会では常に挑戦を続けてきたことがうかがえます。安藤さんの挑戦の原動力とは?

「人生は思うようにいかない。私の場合、建築の専門の学校に行けなかったり、働く場所がなかったり。それで次の手をいろいろと探す。人生というのは次、次、と考えなければいけない。そうすると必ずどの人にもチャンスがある。それが挑戦だ。常に前に行こうと次の手、次の手を考えながら今までやってきた」

「次、次と考えるのは体力だけでなく知的体力もいる。私は(建築の)学校に行けなかったので生涯勉強しなければならないと思っている。ハンディキャップは悪い面もあるが、良い面もある。前を向いて生きていれば何とかなるという見本になれたらいいと思う」

未来担う世代のために

今回の展示ではパリ市中心部のブルス・ド・コメルスを現代美術館に改修する計画や大阪市北区中之島での子ども向けの図書館の計画など、進行中のものも展示されている。

――今後はどんな挑戦を計画されていますか。

「大阪に子ども向けの図書館を造りたい。本代も運営費も市民の寄付でやる。いまの構想では運営資金は30万円ずつ5年間払ってくれる企業を200社ほど集める。その時に言っているのは『参加しなかった会社は公表します』と言っている。『この会社お金を大切にしている会社ですよ』と。今のところ絶好調。反対の人はほとんどいない」

「東日本大震災で被害にあった東北にも造ってほしい。民家を保存してそのなかを子ども向けの図書館にしたい」

「子どもが本を読んで次の時代を考えるようなことに挑戦していきたい」

(聞き手は 映像報道部 鎌田倫子)

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