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オリパラ
2020年から見える未来

2017/10/5

2020年から見える未来

なかには粗削りなアイデアもあるし、何を開発したらいいのか思い悩む受講生もいる。だが園田センター長は「世の中にない何かを発明してほしい。セックハックはそのための基礎研究の場」と意に介さない。

セックハックに参加して、初めて共通の関心を持つ友人ができたという若者も多い(8月23日、福岡市)

セックハックは、若者が悪の道、つまりサイバー攻撃の側に足を踏み入れないようにする意味合いもある。小学生の受講者に同行していた母親は「自宅でもしょっちゅうパソコンと向き合っているが、何をしているのか聞いても親には理解できない。ここでは先輩に指導してもらえるので安心」と話していた。

園田センター長も「セックハックを卒業した後に、サポーターや先生として戻ってきてもいい。常に何か面白いことをやっている姿を見せて、強い帰属意識を持てるようにしたい」と話す。将来はNICTにインターンとして来てもらったり、起業をサポートしたりすることも検討している。

日本の出遅れに強い危機感

サイバーセキュリティー人材育成の場としては、経済産業省が04年に始めた「セキュリティ・キャンプ」が先行する。対象はやはり若者で、公募の上限年齢は22歳とセックハックより3つも低い。数十人が毎年夏に5日間泊まり込み、IT企業などの技術者から最新動向について学ぶ。これまでに累計約660人が受講した。

8月14~18日に開かれた今年のキャンプで関心を集めたテーマの一つが自動車だ。将来ネットにつながった場合、サイバー攻撃によってブレーキなどの制御機器に影響が及ぶ恐れがある。では、現在の自動車の内部にはどんな情報がどんな形式で流れているのか。あるいはAI(人工知能)の発達が著しいが、学習データが汚染されれば正常に働かなくなる。汚染を検知するにはどうしたらいいのか。そんな話に若者たちが耳を傾けた。

「セキュリティ・キャンプ」は最先端の技術動向について知ることに力点を置いている(8月18日、東京都府中市)

「若い人は、世の中にどんな業界があって、どんな仕事があるのかもまだよく知らない。サイバーセキュリティーはあらゆる業界で必ず必要になるものだから、幅広く興味を持ってもらって、必要性を理解できるようになってほしい」。カリキュラム作成を担う上野宣氏(情報セキュリティー教育を手がけるトライコーダ社長)は語る。

セックハック、セキュリティ・キャンプともに国主導でセキュリティーの人材を育てるという点では同じだ。あえて違いを探せば、前者が短期間に深く「知る」ことに力点を置いているのに対し、後者は1年かけてじっくり「作る」ことを重視しているといえる。

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