具材ぎっしり、旨みたっぷり ベトナム家庭料理
ベトナム料理「シンチャオ」
ベトナム戦争サイゴン陥落後の深夜、一艘(そう)の難民船が南部の漁港を出発した。ベトナム生まれで当時4歳だった渡辺治さんは、ベトナム人535人と共に父が舵(かじ)取る小さな運搬船に乗っていた。空には南十字星が輝き、漂流さながらマレーシア沖難民キャンプにたどり着いたという。それから2年後、治さんの両親が営むベトナム料理「南十字星」が博多駅南に開店する。
母はベトナム人。料理はベトナム南部の家庭料理だ。当時まだ珍しかった本格ベトナム料理ということで人気店に。小学生だった治さんだが学校から帰るといつも調理や接客の手伝いをした。それから36年、42歳になった治さんは姉妹店「シンチャオ」をオープンさせた。
旨(うま)みたっぷり、時間をかけて作ったスープにプリッとした食感の平麺、パクチー、生野菜たくさんの鶏フォー(700円)はベトナム料理の王道だ。シンチャオ流生春巻き(700円)は牛肉、キャベツ、レタス、人参がはちきれんばかりに詰まっている。香ばしいお焦げ、鶏肉、トマト、小松菜に酸味あるスープが絡んだベトナム風五目焼き飯(800円)も逸品。
昭和の六本松京極街、カウンター7席だけの店の中に所狭しと扇風機が4台、そして治さんの笑顔がある。「子供の頃から生きる糧をたたき込まれてきた。おやじおふくろが築き上げたベトナム家庭料理を広めたい」。
(腕に色)
〈しんちゃお〉福岡市中央区六本松2の3の17の108 電話080・3229・2479
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