インターネット取引にも目配りする必要がある。支店を持たない金融機関についても「忘れずに名称や口座番号を記録しておくのが大切」とデジタル遺品研究会ルクシーの古田雄介氏は話す。ネット銀行やネット証券も万が一のときは家族が連絡すれば資産を凍結・清算することが可能だ。

定期更新が大事

 リストで大事なのは記入日を書いて定期的に更新すること。そして家族や信頼できる人にその存在や保管場所を知らせておく。冒頭のAさんは「今年の正月に初めて子どもたちに渡して説明した。毎年正月に更新したい」と話す。Bさんも「プリントアウトして銀行の貸金庫に保管している。そのことを2人の子どもに伝えてある」という。

 改めて保有する口座やカード類の数が多いと感じる人もいるだろう。「何のために口座やカードがあるのか確認したい。公共料金の支払いや配当金の入金といった目的がなければ、解約してもよい」と話すのは三菱UFJ信託銀行で数多くの遺言執行業務を手掛ける小谷亨一氏。不要なカードを減らせば、年会費を節約できる場合もある。

 金融資産の整理について要点を小谷氏に聞いた。まず預貯金については、転勤の多かった人は各地で作った口座が休眠状態になっていないかを調べ、不要なら閉じる。ただしキャッシュカードには「電子マネーが搭載されて残金があるかもしれないので、はさみを入れる前に確認したい」。

 株式については、配当金を郵便局の窓口で受け取っている人は、「期限切れを避けるため、口座への自動入金方式に変えておくといい」。単元未満株は相続時の移管手続きが面倒なので、証券会社に買い取ってもらうのが無難だという。

 金融取引の中でやや特殊なのが、元手の何倍もの金額で投資できる商品。例えば外国為替証拠金取引(FX)だ。手じまわないまま死んだら、家族が気付かぬうち損失が膨らんでいたということになりかねない。

 まれなケースだが、相場の激変時、損失が差し入れた証拠金で足りない規模に膨れあがることもある。古田氏が主要10社に聞いたところ、過去5年(16年11月時点)で返済の請求が遺族に及んだ事例が3社であり、金額は最大で120万円程度だった。「日ごろネットで取引や管理していることを家族と共有しておきたい」と指摘する。

 金融資産をひととおり整理したら、どの財産をだれにどう渡すか考え始める。近年の終活人気に乗って増えているのが「遺言代用信託」と呼ばれる、遺言の代わりに信託契約を結んで金銭を管理してもらう商品だ。遺言を残すほど大げさなことをしたくないという人のニーズも吸い上げる。

 代表的な商品である「ずっと安心信託」(三菱UFJ信託銀行)では、元気なうちは預けたお金から決まった額を年金形式で自分がもらい、死んだ後に残ったお金は一時金や年金で家族が受け取るという柔軟な使い方ができる。遺言代用信託の新規受託件数は右肩上がりで増えており、16年度までの累計が15万件近くに達している。

(土井誠司)

[日本経済新聞朝刊2017年9月30日付]

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