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女性の描き方めぐり、ネットCM炎上 その背景は?

メディアとジェンダーの専門家2氏に聞く

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NIKKEI STYLE

女性タレントを起用した宮城県の観光PR動画が性的表現を多分に含むと批判されるなど、広告での女性の描き方をめぐる問題が頻発している。その多くはインターネット上で公開されたCMだ。相次ぐ炎上の背景は。メディアとジェンダー(社会的性差)の専門家に聞いた。

 ◇   ◇   ◇

東京大大学院教授 林香里さん「性の議論まず学校で」

――女性に関するCM炎上の頻発をどう捉えますか。

「問題となっている表現は大きく2つに分けられる。一つは女性を一方的に性的対象として描くもの。これは女性の人権に関する問題であり、性暴力の問題ともつながる。公共空間での許容度は極めて低いと考えるべきだ」

「もう一つが男女の役割分業に関するもの。『育児は母親の仕事』といった固定観念に基づく安直な表現への批判だ。時代の変化の中で男女の役割意識も揺らいでいるが、発信者側がそれに無自覚で、人々のセンシティビティ(敏感さ)を理解できていないケースが多い」

――ネットCMが議論を呼ぶ例が多い理由は。

「テレビや新聞には出せないコンテンツでも、ネット上なら許されるという意識が企業側に少なからずあるのではないか。欧米ではネットに政治経済ニュースを期待する人が多いが、日本はネットに娯楽というイメージが強い」

――英広告基準協議会は7月、広告が性のステレオタイプを広めることがないようガイドラインを作りました。

「業界のガイドラインも重要だが、教育と意識の問題が大きい。欧米では学校教育過程でジェンダーや人権の問題を議論する機会があり、性による差別はなくさなくてはいけないという意識を規範として身につけさせられる。日本は女性差別について論じることをタブー視しがちだ」

――炎上すると公開をやめて終わり、となりがちです。

「再発のリスクを減らすには、情報の受け手側の意見を聞きながら製作過程を検証する姿勢が不可欠だ。不適切なジェンダー表現が企業にもたらすダメージは大きい。トップはそれを認識し、意識改革を進めるべきだ」

――情報の受け手側に求められることは。

「メディアが提示する価値観を無批判に取り込まないこと。最近は仕事も家事・育児もこなし、おしゃれも楽しむ女性を描く広告やドラマが多い。その役割期待をすべて果たさなくてはと思い込み、苦しくなる女性は多いのではないか。『幸せな女性像』にとらわれることなく、自分らしい生き方を考えてほしい」

武蔵大名誉教授 国広陽子さん「『ウケ』優先、検証甘く」

――CMやドラマが描く女性像は、人々の意識や価値観にどう影響しますか。

「『女性はこうあるべきだ』という固定観念は、社会で育つ中で後天的に身につけていく。親や教育などの環境に加え、幼少時から触れるテレビなどのメディアの影響も大きい。そこに描かれる女性像や男女の役割をくり返し見るうち、受け手はそれを『当たり前』と捉えるようになる」

「高度経済成長期、夫は仕事、妻は家事・育児という役割分担を前提に多くのCMやドラマが作られ、分業を当たり前とする価値観を再生産してきた。その表現に違和感を持つ人は当時からいたが、それをマスメディアが論じることは、ほとんどなかった」

――今は交流サイト(SNS)で個人が発信できます。

「個人の小さな違和感が発信、共有できるようになった意味は大きい。CMなどの表現にジェンダーの観点を加える意味でも大きな前進だ」

「注目をひきつけるためには、感性に訴える表現は必要だし、重要だ。しかし通俗的に『ウケる』ことを最優先して、人権やジェンダーの問題と向き合うことを避けては、社会は一歩も前に進まない」

「特にネットCMは、テレビより注目されにくい分、表現が過激になりやすい。作り手側は人権やジェンダーについての根本的理解を深めること。そして内容について様々な部門や性別、年代の人たちが意見を出し合い、内部検証する仕組みが重要だ」

――価値観が多様化する中、すべての人から共感を得ることは難しい時代です。

「子ども用おむつのネットCMで、女性が一人で育児に追われる姿を描きつつ『その時間が、いつか宝物になる』と結び、ワンオペ育児の奨励と批判された。育児を女性だけが担う不条理さへの憤りの声だが、一方でこのCMに心を動かされた女性も少なくない。両者の意識は異なるとしても、育児負担を抱え込む苦労や悩みは実は共通だ」

「現実の背景をどう読み取るか。通念に基づき『事実』を安易に解釈し、共感を得られる時代ではない。人々が直面する課題をどう変えたいのか、メッセージを込めて発信する姿勢が求められている」

 ◇   ◇   ◇

多様な声に耳傾けて ~取材を終えて~

女性の描き方をめぐるCM炎上が起きるたび、こうした事案が繰り返される原因について議論を深める必要性を感じていた。取材の過程で広告業界の人に意見を聞くと、「ジェンダーは議論のテーマにしにくい」という声が複数あがった。日本には女性差別の問題を正面から論じることを避ける風潮があり、それがジェンダー問題を停滞させてきたと専門家は指摘する。

情報の受け手側がジェンダー表現について意見を発信できるようになったことは、その状況を打開する好機だ。炎上リスクは表現を萎縮させると懸念する業界関係者もいるが、見る人にネガティブな感情を抱かせる広告は、たとえ炎上しなくても発信側にとってマイナスだ。多様な意見に耳を傾けることで、よりよい表現に向けた気づきを得ることができる。

社会的性差の解消により固定観念から自由になれるのは男性も同じだ。そのために必要な取り組みについて議論を重ねることが、多様な生き方を認め合う土壌づくりにつながる。

(女性面編集長 佐藤珠希)

[日本経済新聞朝刊2017年10月2日付]

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