猫と暮らして発見 「思った通りに生きる」心構え梅田悟司著 「捨て猫に拾われた男 猫背の背中に教えられた生き方のヒント」

そこで出合った黒猫「大吉」(写真上)と暮らすうち、著者の生き方や働き方、人生に対する考え方は大きく変わったといいます。たとえば、部屋の家具や床から著者の体にまで無数に残る猫の爪痕から、著者は仕事への向き合い方を考えます。

僕たち人間は傷痕を付けることになんと臆病なのだろうか。
物理的なモノに傷を付けることはもちろんのこと、精神的に、自分が携わった証として傷を付けることにも臆病であると言えよう。
仕事で言えば、何事もなく無事に終わらせる。誰からも否定されないように仕上げる。無意識のうちに、このように振る舞っているように感じられるのだ。
そんなヘタレとも呼べる僕の姿を見て、大吉は教えてくれる。
「そんなんじゃ、誰がやっても同じ結果になる。自分なりに力を出し切って、『自分らしさ』という爪痕を残してみな。それが、生きるということさ」
(第2章 仕事・自己実現 97ページ)

爪痕を付けようという意識で臨めば、想像もしなかった頑張りが生まれ、よい結果につながる。そのためにも最後の最後まで、あがく覚悟が必要だと気づくのです。

猫に教わった「人生の目的」

大吉は毎日のように著者の操る猫じゃらしと戯れたり、ネズミのおもちゃをバラバラにしたりして遊びます。同じような遊びを全力で5年間も続け、それでも飽きないことに著者の心は動きます。

我々人間は「慣れ」と「飽き」にめっぽう弱く、ワクワクしていたあらゆることを、ウンザリする当たり前に変えながら生きていると言える。期待に胸を躍らせて就いた仕事なのに、いつの間にか慣れと飽きによって、イヤイヤやらなければならない義務に感じてしまうこともある。
この慣れと飽きに打ち克(か)つカギは、楽しいかどうかではなく、楽しめるかどうか、楽しもうと思えるかどうかにかかっている。
(第2章 仕事・自己実現 133ページ)

「何のために生きているのか」という難しい質問へのはっきりした答え、著者はそれも大吉から学びました。「人生を楽しむため。さらに言えば、何でも楽しめる心を持つことである」。誰にこびることもなく、それでも愛される猫の生き方に触れ、著者のものの見方や意識は変わっていきます。そんな変化をもたらしてくれた大吉に対し、著者は「捨て猫に拾われた」という感覚を持つようになったのです。

本書は「生活・暮らし」「仕事・自己実現」「友情・恋愛」の3章の構成で、大吉に学んだ人生論が、思わずほほ笑んでしまうエピソードやかわいいイラストとともに描かれています。著者は、ペットとしてのブームが去った後の猫たちの身の上を心配し、「猫のためになる、いい猫ブームをつくりたい」として執筆を決心したといいます。その「猫愛」を味わうエッセーとしても、とても楽しい本です。ペットを飼っている人もいない人も、「なるほど」とうなずいたり、ハッと気付かされたりするでしょう。ひと息つきたいときに、おすすめの一冊です。

(雨宮百子)

◆編集者からひとこと 網野一憲

本書は、著者(僕)が里親会から引き取った黒猫の大吉との暮らしを24のテーマで描く実話の物語です。仕事で疲れた僕を癒やしてくれたかと思うと、突然、胸を蹴ってどこかに行ってしまう。うたた寝する僕の股間に無理矢理もぐり込んできたかと思うと、寝返りをする僕を迷惑そうに見つめて……。

そうした日々の中で、僕が大吉から教えられた様々なことを、ユーモアたっぷりに描きます。相手の顔色ばかりをうかがい、あくせくする毎日に自分を見失いそうなとき、ぜひ読んでいただきたいと思います。かわいい大吉のイラストはもちろん、パラパラめくるだけで楽しめる仕掛けもあります。猫好きでなくても、読めば心が温かく、前向きな気持ちになれる一冊です。

「若手リーダーに贈る教科書」は原則隔週土曜日に掲載します。

捨て猫に拾われた男 猫背の背中に教えられた生き方のヒント

著者 : 梅田 悟司
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,296円 (税込み)

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