介護休業に介護したらダメな理由 ぜひ40歳から備えを

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あなたの周囲に、介護のために仕事をやめたという人はいないでしょうか。40歳を過ぎると急速に身近な問題になってくるのが親など家族の介護。最近は晩婚・晩産化が進んだため、育児をしながら介護もする「ダブルケア」を迫られる人も増えています。訪問介護サービス会社を経営し、自らも実父の介護と3人の子育てを同時に経験したという田尻久美子さんは「40歳になったら、介護について具体的に考えはじめるべき」といいます。いま知っておきたいことを聞きました。

働く女性、介護離職するとキャリアの再開は困難

――働く世代にとって、親など家族の介護は大きな問題です。介護を理由として仕事をやめる介護離職は、その8割が女性という調査結果もあります。

田尻久美子さん カラーズ社長。大手IT企業に勤務中、実母を病気で亡くした経験を機に介護業界に転職。2011年、訪問介護サービスを提供するカラーズを設立。一般社団法人大田区支援ネットワーク理事。5歳と3歳(双子)の3児の母。

田尻さん 介護のために離職すると、経済的にも精神的にも追い込まれることが多いので、できるだけ介護離職を防ぐべきという認識は広がっています。

特に女性の場合はキャリアの再開が困難になりがちです。大手企業に勤めていた知人の女性の例ですが、お母さんが病気になられ、仕事をやめました。お母さんは2カ月後に亡くなられ、その後再就職を希望していますが、以前のような大企業の同様の役職での求人は皆無といいます。

介護者(介護をする人)は40代から増えはじめ、50代でピークを迎えます。特に最近は晩婚・晩産化が進んでいるので、40代でも子どもがまだ未就学児というケースが少なくありません。訪問介護サービスを提供している私たちのお客様も、お聞きしてみるとまだ小さいお子さんがいるケースが意外に多く、ダブルケアは確実に増えている印象があります。私自身も昨年、父の介護と3人の子の育児のダブルケアを経験しています。

――介護はある日突然やってくることも多いと聞きます。特に女性には負担がかかりがちなので、親や家族が元気なうちから対策を考えておく必要がありますね。

田尻さん 私たちはふだんから「40・65(知れ・老後)」と提唱しているんです。40歳になると介護保険の被保険者になりますし、65歳になったら介護保険証が手元に届きます。40歳と65歳という節目に、介護と老後を考えましょうという意味です。

介護休業は「自分で介護するための休業」ではない

――2017年1月に改正育児・介護休業法が施行され、企業でも個別に介護と仕事の両立支援制度を設けるところが増えつつあるようですね。

田尻さん 改正育児・介護休業法は、より使いやすいように制度が変わっています。介護休業は通算93日間を、上限3回まで分割して取得できるようになりました。介護休業中は育児休業と同様に、月額賃金の67%の介護休業給付金が支給されます。介護休暇も半日単位で取得できるようになりました。

ただ、知っておいていただきたいのは、介護休業とは「自ら手を下して介護をするための休業」ではないということです。会社を休んで親御さんの介護をずっとしていたら、93日間はあっという間に過ぎてしまいます。そうしたらそのまま、離職せざるを得ない可能性が高くなるでしょう。

介護休業は、仕事と介護を両立するための体制作りの期間なのです。施設介護か在宅介護か。どんな介護サービスが利用できるのか。どこに何をお願いするか、家族の意向も聞いてプランニングし、体制を整えます。きょうだいやその他の親族がいるなら、誰が中心になって意思決定するか、その他の人は何をどう分担するかなどきちんと決めておかないと、「お金や手は出さないが口は出す」など後々、親族同士がもめる原因になりかねません。

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