「疲労感」が強い場合は、普段より休息を多めにとり、睡眠不足があればしっかり睡眠をとって解消してください。睡眠は普通の体質の方ならば1日6時間以上が健康のために必要です。睡眠不足が続いていると体の倦怠感がひどくなり、集中力だけではなく活気も大幅に落ちていきます。詳しくは第4回「危険な『睡眠不足』 こんな兆候は要注意!」をご覧ください。

また食事がきちんととれているかも見直してみましょう。カロリーだけ足りていても、疲労回復物質であるたんぱく質やビタミン・ミネラルが不足している食事を続けていると、疲労が解消されません。食事については、第9回「ストレス・疲労に負けない食事 『赤黄緑を1:1:1』」に詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

「疲労感」と連動して、「イライラ感」が要注意ゾーンに近くなっている方も少なくありません。体に疲労がたまっていると、精神的な寛容性が低くなり、イライラしやすくなってきます。イライラと体の疲労を紛らわせるために、たばこやコーヒー、アルコール、チョコレートなど甘い物の量が増える人や、神経が高ぶるため寝つきが悪くなる人もいます。さらにイライラが高じるとささいな出来事でつい部下をきつく怒ってしまったり、普段なら気にならないことで家族に切れてしまったり……と人間関係の悪化の原因にもなっていきます。つまり体の疲労が高じると、冷静な判断力が低下してしまうのです。

睡眠、食事を改善してもイライラが治らなければ……

睡眠や食事を改善して体の疲労を抜いてみても、イライラが自分でコントロールできない人は、精神科や心療内科の受診を検討してみましょう。

「活気の低下」「疲労感」「イライラ感」などとともに、「不安感」「抑うつ感」が要注意ゾーンに入ってきている方は、メンタル不調の可能性が高まります。

「不安感」は、メンタル不調になりかかっているときに悪化しやすい症状です。大きなプロジェクトや重要な商談の前に不安になるのは自然な感情ですが、不安感が過度に続いていて、日常生活に悪影響を及ぼしているようなら医療受診を検討してください。例えば少し上司にミスを注意されただけで「嫌われているに違いない」と過剰に反応して仕事が手につかなくなってしまったり、ネットで下流老人やがんの記事を読んだだけで「自分は大丈夫だろうか」と心配になって眠れなくなったり……。メンタル不調になってくると、このような尋常ではない不安感が悪化してきます。

「抑うつ感」は、憂うつさ、もの悲しさ、むなしさなどの感情のことですから、これが要注意ゾーンに入っていると、うつ病などのメンタル不調のチェックが必要になってきます。「何をしても楽しくない」「気分が晴れない」「憂うつだ」といった抑うつ感情や、尋常ではない不安感が2週間以上ほぼ毎日続いていて、仕事や生活に影響が出てきている場合は、迷わずに心療内科や精神科などの医療受診を行ってください。

自分の弱点を知り、他者との関係作りに生かす

最後に「ストレス反応への影響因子」のチャートを見てみましょう。このチャートには、「上司」「同僚」「家族や友人」からのサポート度と「仕事や生活の満足度」が示されています。当然ながら、上司や同僚のサポートが高ければ職場のストレスは緩和されやすくなりますし、家族や友人のサポートがあればプライベート時間で緊張や不安が癒やされるためストレス症状が和らぎます。その逆に職場や家庭のサポートが低ければ低いほど、ストレス度は高まりやすく、心身の不調が表れやすくなります。

他者との関係は一朝一夕に変えることはできませんが、自分の人間関係の状況に気付きを得ることで、少しずつ補強していくことができます。例えば筆者の場合は、組織に所属せず、精神科医と嘱託産業医をフリーランスに近い形で行っているため、上司や同僚という固定の人間関係がなくてどうしてもサポート度は低くなっています。そのことを自覚しているため、同業者の知り合いを意識的に増やして相互にアドバイスし合える関係性の構築を心がけることでカバーしています。

知人で一人暮らしのキャリア女性は、兄弟がおらず年老いた両親も遠方に住んでいるために家族からのサポート力が乏しいと自覚しています。そのため自分から友人を誘って食事会を企画したり、仕事が忙しい時でもメールや電話で友人とコンタクトをとることを心がけたりしているそうです。

人間関係にとどまらず、職場やプライベート生活全体の満足度も、ストレス緩和に大きく関係してきます。ストレスチェックの受検をきっかけに、満足度が低い方は、「何に対して不満なのか」「何が改善すれば満足度が上がるのか」といった観点で、仕事やプライベート生活をじっくり見直してみることをお勧めします。職場とプライベートに分けて、「満足していないこと」「それを改善するためにできること」などと紙に箇条書きにして書き上げていくと自分の心の整理と洞察がやりやすくなるのでお勧めです。

以上、2回に分けてストレスチェックのチャート別の見方と有効活用法をご提案しました。高ストレス状態と認定されなかった方でも、必ず何らかのストレスを抱えて仕事をしています。ご自身のストレス状態に気付き改善に結びつけるツールとして、ストレスチェックを上手に活用してください。

【こちら「メンタル産業医」相談室】

第14回 何となく憂うつ そんなときのストレスチェック活用術

第13回 知って納得 「ストレスチェック」と「健診」の違い

第12回 パワハラは連鎖する! 自称「体育会系」はご用心

第11回 遅い夕食でも太りたくないなら お勧めは「分割食べ」

第10回 太らない人が実践する「3つの食習慣」

第9回 ストレス・疲労に負けない食事 「赤黄緑を1:1:1」

第8回 連休で疲れを残さないコツ 変化はストレスと考える

奥田弘美
 精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家。1992年山口大学医学部卒。精神科臨床および都内20カ所の産業医として日々多くの働く人のメンタルケア・ヘルスケアに関わる。執筆活動にも力を入れており「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)など著書多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げマインドフルネス瞑想の普及も行う。

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