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曲作りは「スピード感」と個の力(音楽P 蔦谷氏) ヒットメーカーが語る2017年(4)

日経エンタテインメント!

2017/10/20

YUKIやSuperfly、ゆずなど様々なアーティストの楽曲を手掛けるほか、最近は『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)でコメンテーターとしても活躍する音楽プロデューサー・蔦谷好位置氏。国内外の音楽シーンを比較しつつ、最新のトレンドを語ってくれた。

YUKI、木村カエラ、JUJU、絢香、back number、米津玄師など多くのアーティストに楽曲提供やプロデュースを行う。今春のアニメ映画『SING/シング』吹替版では歌唱部分の監修も務めた(写真:加藤康)

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国内外ともにソロアーティストが強さを増していて、特に海外ではフランク・オーシャンやチャンス・ザ・ラッパーのように、自身がメディアと呼べる存在が増えています。彼らがその日ライブで発言したこと、着ていた服、カバーした曲が、SNSを通じてすぐに広まる。まさにデジタル時代のカリスマと呼ぶにふさわしい存在だと思います。

日本でも米津玄師くんやピコ太郎、それこそtofubeatsくんもそういったデジタル世代ならではのアーティストですよね。彼らに総じて言えるのは、セルフプロデュース力がたけていること。「個」の影響力というのが非常に求められる時代になってきたんじゃないかと思うんです。

しかもインターネットの登場で、話題になるスピード感が早まりましたよね。昔はテレビだったものが、今はSNSを通じて即伝わる。それが文章だったり写真だったりするのが面白いと思うんです。

そのスピード感は、楽曲の発表ペースにも影響を与えている。完成した楽曲はインターネットを通じてすぐに発表できて、Spotifyをはじめとするストリーミングサービスですぐに聴けてしまうんですからね。そうすると、制作のスピードも早まるわけで、1人で曲作りをするよりも、複数人が分担制で作業する「コライト」のほうが楽曲制作のスピードも上がるし、楽曲自体のクオリティーも上がっていく。

アリアナ・グランデやジャスティン・ビーバーのようなポップスターたちも作品を出すスピードが速くなってきているし、しかも流行を追うだけじゃなくてチャレンジングなサウンドにどんどん取り組んでいる。

■日本の音楽シーンは健全

とはいえ、日本はまだそのスピード感に追いついていない気がする。例えば、あるアーティストのプロデュースをレコード会社から依頼され、最新のサウンドを持っていくと「行き過ぎです」と言われてしまう。確かにその時点では行き過ぎているかもしれないけど、発売される頃にはもう遅いぐらいなんです。考え方が古いというよりも、日本のリスナーがまだそれについてこれてないのかな。

ただ、それ自体は悪いことではなくて、むしろ日本独自の地域性なので、それを生かして、さらに新しいものを取り入れていくやり方はあるんじゃないかと思っていて。それで成功しているのが、米津くんなんじゃないかな。

と同時に、日本人らしい醤油臭さを完全に消して、海外のフォーマットに則ってアメリカで勝負しようとしているONE OK ROCK(ワンオク)みたいなアーティストもいる。最近の曲を聴くと今までのラウドなロックというよりアメリカのポップバンドみたいなことをやっていて、向こうで成功するためにどういう選択をしないといけないか、いろいろ考えて妥協せずにやっていると思うんですね。

そういう意味では、日本の音楽シーンに対しては全然悲観的ではないです。back numberみたいに日本のロックの良い部分をしっかり受け継いだバンドがいる中で、ワンオクみたいなバンドも売れているのはすごく健全だと思う。それに、w‐inds.のようにポップフィールドで先鋭的なことにトライしているアーティストもいる。彼らのやろうとしていることがもっと広い層に届いたら、さらに面白いシーンになるんじゃないかなという気がします。

制作方面でも、AI(人工知能)の発達がアレンジなどの作業にも大きな影響を与えるはず。となると、今後は技術よりもセンスの良い人が勝つ時代になるんじゃないかな。僕自身才能がある子たちの音楽を聴くのはすごく好きだから、そこから新しい武器を手に入れたり、使ってなかった引き出しを開けたりできたらなと思います。 (談)

(ライター 西廣智一)

[日経エンタテインメント! 2017年10月号の記事を再構成]

テレビ、CM、映画、音楽のヒットメーカーが2017年のヒット作のトレンドを語ります
10月17日(火)テレビ東京プロデューサー 佐久間宣行
10月18日(水)電通クリエイティブディレクター 篠原誠
10月19日(木)映画プロデューサー 春名慶
10月20日(金)音楽プロデューサー 蔦谷好位置

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