介護費用、月平均7万9000円 子供に負担かけないでライフイベントとお金 老後編(下)

2017/10/1

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筧家のダイニングテーブルでは、夕食の後片付けを済ませた幸子がシニア世代の顧客に頼まれたキャッシュフロー表作りを続けています。介護や終の棲家(すみか)をどうするか。幸子の仕事も最終段階に入ってきたところで恵がねぎらいの言葉をかけに来ました。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中)  筧恵(かけい・めぐみ、25) 

 ママ、毎日お疲れさま。最近、忙しそうだけど無理はしないでね。温かい紅茶を入れるから、ひと休みしない?

幸子 恵は優しいのね。テレビのスポーツニュースに夢中な誰かさんとは大違いね。

良男 ギクッ! そうだ、ママ。肩はこってないか。マッサージしてあげるよ!

 ママが体調を崩して入院でもしたら大変だものね。医療費もかかるし。そういえば最近、高齢者の医療費の負担が増えているってニュースで見たけど、パパ知ってる?

良男 確か高齢者の自己負担割合は1~2割だっけ?

幸子 自己負担割合は69歳までが3割、70~74歳が2割、75歳以上が1割よ。70歳以上でも年収約370万円以上の「現役並み所得者」は3割ね。

 これまでの負担割合が変わったわけではないよね?

幸子 負担が増えた代表例は高額療養費制度と公的介護保険ね。1カ月に病院や薬局の窓口で支払った医療費が上限額を超えると、超えた分を還付するのが高額療養費制度だけど、今年8月から70歳以上の上限額が一部、引き上げられたの。例えば現役並みの外来受診の上限と、一般の世帯(年収156万円以上~370万円未満)の外来受診と入院の上限が4万4400円から5万7600円と1万3200円上がったわ。来年8月には現役並みの区分が細分化されて、限度額もさらに引き上げられる予定よ。

良男 介護保険は?

幸子 介護保険は65歳以上で介護が必要な高齢者を社会全体で支える制度で、高齢者が介護サービスを利用する際の自己負担割合は原則1割、年金などの収入が年280万円以上だと2割だけど、来年8月から年収340万円以上の人は3割に引き上げられるわ。国は社会保障費の増加を受け、所得が高い人たちの負担を増やす「応能負担」を高齢者にも求めているの。

良男 なるほど。実際に介護が必要になると、どれくらいの費用がかかるんだい?

幸子 生命保険文化センターが過去3年間に介護を経験した人を対象に実施した調査によると、介護保険サービスの自己負担分を含む1カ月の介護費用は平均で7万9000円。10万円以上という人も全体の約3割いるわ。これとは別に介護用ベッドの購入など一時的な費用も平均で80万円かかっていて、7.1%と少数ながら「200万円以上」と答えた人もいるの。

 介護に時間がかかるとなると、負担も増すよね?

幸子 先ほどの調査では、介護期間の平均は4年11カ月。10年以上の人も15.9%いたの。あくまで統計を基にした数字だけど、仮に月7万9000円を4年11カ月間負担すると、総額で約466万円になるわ。

良男 我々夫婦が将来、介護が必要になっても、恵たちに迷惑をかけたくはないな。

幸子 自宅に住み続けるならば、その可能性は捨てきれないわ。自宅以外だと「特別養護老人ホーム」(特養)と「有料老人ホーム」、「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)の3つの介護施設が一般的ね。入居費用の有無や月額費用、介護の担い手などに差はあるけど、介護や日常生活の世話を受けるという意味ではそれほど大きな違いはないわ。

 そうなんだ。

幸子 ただ、特養は原則として要介護3以上でないと入居できないの。介護付き有料老人ホームでも介護不要なのに入居ができたり、サ高住なのに要介護でないとの理由で入居を断られたりする例もあるので、施設ごとに条件を確認すべきね。

 どうやって施設を選んだら良いのかしら。

幸子 サービスの内容は施設ごとに異なるので、資料だけでなく現地を見学したり体験入居してみたりするといいわ。サービスが同じ水準なら地価の安い地域のほうが費用の総額も抑えられるの。長谷工総合研究所主席研究員の吉村直子さんは「時間をかけて条件にあった施設を探す」ことを勧めているわ。例えば急病で入院して介護が必要となり、退院後に慌てて施設を探すことがないよう元気なうちに調べておくのが一案ね。

 いざというときには私も資金援助するわよ。

幸子 気持ちはありがたいけど、ファイナンシャルプランナー仲間の畠中雅子さんは「費用はできるだけ介護を受ける本人の収入や資産でまかなうほうがいい」と話しているわ。子供は住宅ローンや自身の子供の教育費などの負担だけでも大きいのに、親の介護費用まで負担すると、自身の老後に備えるのに支障が出てくるわ。自治体によってはサ高住の月額費用の負担を軽減したりする例もあるので、利用するのも手ね。

良男 おやじやおふくろのことも心配になってきたな。

幸子 親の介護施設探しを手伝うなら、年金などでどれくらいの収入があるかや、資産がどれくらいあるかを把握しておく必要があるわ。それに入居する本人の意向もきちんと確認しておかないと、後から不満が出ることにもなりかねないの。よく話し合うことが重要ね。

■施設紹介業者は慎重に活用
 長谷工総合研究所主席研究員 吉村直子さん
 介護施設を手早く探すのにインターネットを使う人は多いでしょう。例えば一般社団法人高齢者住宅推進機構(東京・中央)が運営する「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」を使えば、都道府県などに登録されたサ高住の情報を検索でき、住宅の広さや費用などが確認できます。幅広い介護施設を掲載する民間企業運営のサイトでは、資料請求や施設見学を申し込めるところもあります。
 ネット以外では相談窓口を設けて施設見学の立ち会いまでする紹介業者もいます。サービスは無料で利用できますが、契約が成立すると施設から報酬を支払われる例もあります。成約を優先する心理が働くと、利用者に必ずしも最適ではない施設を勧める可能性もあります。そうした事情も念頭に置き、慎重かつ上手に活用しましょう。
(聞き手は藤井良憲)

[日本経済新聞夕刊2017年9月27日付]